最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
勝沼ワイナリー案内看板事件(第2事件)控訴審
知財高裁平成26.1.22平成25(ネ)10066不正競争防止法、著作権侵害・損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官 池下 朗
裁判官 新谷貴昭
*裁判所サイト公表 2014.1.31
*キーワード:著作物性、美術の著作物、応用美術、純粋美術、一般不法行為論
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■事案
ワイナリーへの案内看板の図柄の著作物性が争点となった事案の別件訴訟の控訴審
控訴人(一審原告) :広告看板制作会社
被控訴人(一審被告):ワイン製造販売会社
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、10条1項4号、民法709条
1 本件図柄の著作物性
2 一般不法行為論
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■事案の概要
『控訴人は,原審において,本件図柄及び本件各控訴人看板につき控訴人が著作権を有する著作物であると主張した上で,(1)被控訴人が本件各被控訴人看板を製作した行為は,本件図柄及び本件各控訴人看板の複製権(著作権法21条),貸与権(同法26条の3),翻案権(同法27条),二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(同法28条)を侵害する,(2)本件図柄及び本件各控訴人看板は控訴人の商品等表示に当たり,被控訴人が本件各被控訴人看板を利用する行為は不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当する,(3)被控訴人の上記各行為は控訴人に対する不法行為(刑法233条,235条,246条,253条に当たる行為)であるとして,被控訴人に対し,民法709条及び不正競争防止法4条に基づく損害賠償として,605万3000円及びこれに対する不法行為日である平成20年5月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。』
『原審は,平成25年7月2日,控訴人の請求を棄却する旨の判決を言い渡したところ,控訴人は,同月16日,197万2000円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で控訴し,同年9月6日,控訴審において不正競争防止法に基づく損害賠償請求部分を取り下げた(同月24日の経過で同意擬制。)。 』
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■判決内容
<争点>
1 本件図柄の著作物性
控訴人(一審原告)は、本件図柄について、ありふれた平凡な絵柄ではなく、美術性と創作性を兼ね備えていると主張しましたが、控訴審は、
「本件図柄は,あくまでも広告看板用のものであり,実用に供され,あるいは,産業上利用される応用美術の範ちゅうに属するというべきものであるところ,応用美術であることから当然に著作物性が否定されるものではないが,応用美術に著作物性を認めるためには,客観的外形的に観察して見る者の審美的要素に働きかける創作性があり,これが純粋美術と同視し得る程度のものでなければならないと解するのが相当である」(6頁)として、応用美術論について言及。
その上で、本件図柄のグラスの形状に個性的な表現は見出せない、また、ワイナリーの広告としてありふれた表現にすぎない、さらに、一般的な道路看板に用いられているようなありふれた青系統の色と補色に近い黄色ないし白色のコントラストがなされているにとどまる、などとして、本件図柄に純粋美術と同視できる程度の審美的要素への働きかけを肯定することは困難であると判断。本件図柄の著作物性を否定しています。
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2 一般不法行為論
本件図案について、著作物性が否定された場合の被控訴人の不法行為責任(民法709条)に関して、控訴審は、
「著作権法6条は,保護を受けるべき著作物の範囲を定め,独占的な権利の及ぶ範囲や限界を明らかにしているのであり,同条所定の著作物に該当しないものである場合,当該著作物を独占的に利用する権利は法的保護の対象とならないものと解される。したがって,同条各号所定の著作物に該当しない著作物の利用行為は,同法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではないと解するのが相当である(最高裁平成23年12月8日第1小法廷判決・民集65巻9号3275頁参照)。」(8頁)
として、一般不法行為論に関する先例となる北朝鮮映画事件最高裁判決に言及。
そして、本件では特段の事情を認めるに足りる証拠はないとして、被控訴人に不法行為責任は認められないと判断しています。
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■コメント
別訴の控訴審(知財高裁平成25年12月17日平成25(ネ)10057著作物頒布広告掲載契約に基づく著作物頒布広告掲載料未払請求控訴事件)と同じコートでの判断となっており、図柄の著作物性、一般不法行為論の各論点ともに同じ判断の流れとなっています。
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■過去のブログ記事
原審記事
別件控訴審記事
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■追記(2014.2.10)
弁理士廣田先生の分析記事:名古屋の 商標亭−あいぎ特許事務所弁理士 ひろたのブログ−
「看板の請負製作(「シャトー勝沼」知財高裁判決より)」
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■追記(2014.2.27)
看板広告掲載契約の債務不履行を巡る別訴
東京地裁平成26.2.27平成24(ワ)9450著作物頒布広告掲載契約に基づく著作物頒布広告掲載撤去損害賠償請求事件
■追記(2014.10.03)
知財高裁平成26.9.29平成26(ネ)10034著作物頒布広告掲載契約に基づく著作物頒布広告掲載撤去損害賠償請求控訴事件
判決文
勝沼ワイナリー案内看板事件(第2事件)控訴審
知財高裁平成26.1.22平成25(ネ)10066不正競争防止法、著作権侵害・損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官 池下 朗
裁判官 新谷貴昭
*裁判所サイト公表 2014.1.31
*キーワード:著作物性、美術の著作物、応用美術、純粋美術、一般不法行為論
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■事案
ワイナリーへの案内看板の図柄の著作物性が争点となった事案の別件訴訟の控訴審
控訴人(一審原告) :広告看板制作会社
被控訴人(一審被告):ワイン製造販売会社
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、10条1項4号、民法709条
1 本件図柄の著作物性
2 一般不法行為論
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■事案の概要
『控訴人は,原審において,本件図柄及び本件各控訴人看板につき控訴人が著作権を有する著作物であると主張した上で,(1)被控訴人が本件各被控訴人看板を製作した行為は,本件図柄及び本件各控訴人看板の複製権(著作権法21条),貸与権(同法26条の3),翻案権(同法27条),二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(同法28条)を侵害する,(2)本件図柄及び本件各控訴人看板は控訴人の商品等表示に当たり,被控訴人が本件各被控訴人看板を利用する行為は不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当する,(3)被控訴人の上記各行為は控訴人に対する不法行為(刑法233条,235条,246条,253条に当たる行為)であるとして,被控訴人に対し,民法709条及び不正競争防止法4条に基づく損害賠償として,605万3000円及びこれに対する不法行為日である平成20年5月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。』
『原審は,平成25年7月2日,控訴人の請求を棄却する旨の判決を言い渡したところ,控訴人は,同月16日,197万2000円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で控訴し,同年9月6日,控訴審において不正競争防止法に基づく損害賠償請求部分を取り下げた(同月24日の経過で同意擬制。)。 』
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■判決内容
<争点>
1 本件図柄の著作物性
控訴人(一審原告)は、本件図柄について、ありふれた平凡な絵柄ではなく、美術性と創作性を兼ね備えていると主張しましたが、控訴審は、
「本件図柄は,あくまでも広告看板用のものであり,実用に供され,あるいは,産業上利用される応用美術の範ちゅうに属するというべきものであるところ,応用美術であることから当然に著作物性が否定されるものではないが,応用美術に著作物性を認めるためには,客観的外形的に観察して見る者の審美的要素に働きかける創作性があり,これが純粋美術と同視し得る程度のものでなければならないと解するのが相当である」(6頁)として、応用美術論について言及。
その上で、本件図柄のグラスの形状に個性的な表現は見出せない、また、ワイナリーの広告としてありふれた表現にすぎない、さらに、一般的な道路看板に用いられているようなありふれた青系統の色と補色に近い黄色ないし白色のコントラストがなされているにとどまる、などとして、本件図柄に純粋美術と同視できる程度の審美的要素への働きかけを肯定することは困難であると判断。本件図柄の著作物性を否定しています。
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2 一般不法行為論
本件図案について、著作物性が否定された場合の被控訴人の不法行為責任(民法709条)に関して、控訴審は、
「著作権法6条は,保護を受けるべき著作物の範囲を定め,独占的な権利の及ぶ範囲や限界を明らかにしているのであり,同条所定の著作物に該当しないものである場合,当該著作物を独占的に利用する権利は法的保護の対象とならないものと解される。したがって,同条各号所定の著作物に該当しない著作物の利用行為は,同法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではないと解するのが相当である(最高裁平成23年12月8日第1小法廷判決・民集65巻9号3275頁参照)。」(8頁)
として、一般不法行為論に関する先例となる北朝鮮映画事件最高裁判決に言及。
そして、本件では特段の事情を認めるに足りる証拠はないとして、被控訴人に不法行為責任は認められないと判断しています。
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■コメント
別訴の控訴審(知財高裁平成25年12月17日平成25(ネ)10057著作物頒布広告掲載契約に基づく著作物頒布広告掲載料未払請求控訴事件)と同じコートでの判断となっており、図柄の著作物性、一般不法行為論の各論点ともに同じ判断の流れとなっています。
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■過去のブログ記事
原審記事
別件控訴審記事
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■追記(2014.2.10)
弁理士廣田先生の分析記事:名古屋の 商標亭−あいぎ特許事務所弁理士 ひろたのブログ−
「看板の請負製作(「シャトー勝沼」知財高裁判決より)」
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■追記(2014.2.27)
看板広告掲載契約の債務不履行を巡る別訴
東京地裁平成26.2.27平成24(ワ)9450著作物頒布広告掲載契約に基づく著作物頒布広告掲載撤去損害賠償請求事件
■追記(2014.10.03)
知財高裁平成26.9.29平成26(ネ)10034著作物頒布広告掲載契約に基づく著作物頒布広告掲載撤去損害賠償請求控訴事件
判決文