最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
風力発電環境影響評価書事件
東京地裁平成25.8.30平成24(ワ)26137著作権及び出版権侵害差止請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀 滋
裁判官 小川雅敏
裁判官 西村康夫
*裁判所サイト公表 2013.10.01
*キーワード:著作物性、翻案、著作者人格権、意見書
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■事案
大型風力発電施設建設に関する環境影響評価書へ掲載した意見書の要約が著作権侵害にあたるかどうかが争点となった事案
原告:環境保護NPO法人
被告:風力発電専門会社、福島県
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、19条、20条、27条、80条
1 同一性保持権侵害等の成否
2 翻案権侵害の成否
3 出版権侵害の成否
4 名誉毀損行為等の成否
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■事案の概要
<経緯>
H23.10 被告事業者が「会津若松ウィンドファーム(仮称)事業」環境影響評価書準備書作成、公告、縦覧
H23.11 被告事業者に意見書提出
H24.06 被告事業者が評価書作成、知事に送付
原告がNPO法人格取得
H24.08 被告事業者が評価書公告、縦覧
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■判決内容
<争点>
1 同一性保持権侵害等の成否
原告は、被告エコ・パワーが本件意見書(意見書1から8)の表現を改変して本件評価書に掲載した点を捉えて氏名表示権及び同一性保持権侵害性を主張しましたが、裁判所は、本件意見書の著作物性(2条1項1号)は認められるものの、その著作者は本件意見書の作成者である個々の自然人であって原告ではないとして、原告の主張を認めていません(7頁以下)。
また、仮に原告が作成者であるとしても、評価書に意見の「概要」を記載することが福島県環境影響評価条例で義務づけられており、また、意見を述べた者の氏名を表示することも条例で義務づけられていないとして、この観点からも氏名表示権及び同一性保持権侵害性を否定しています。
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2 翻案権侵害の成否
本件評価書に本件意見書の表現を一部抜粋したり、要約した記載がされましたが、本件条例で意見の概要を記載することが義務づけられており、事業者に意見書を提出した者は、その意見における表現が評価書において意見の概要を表す限度で改変されることを当然に容認した上で意見書を提出したものとみなされると裁判所は説示しています。
そして、本件意見書の各作成者も、評価書において意見の概要が記載されることを容認した上で本件意見書を被告エコ・パワーに提出したのであるから、意見の概要を表す限度で本件意見書の表現を改変したとしても翻案権侵害にはあたらないと裁判所は判断しています(8頁以下)。
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3 出版権侵害の成否
被告エコ・パワーは、本件評価書を「頒布の目的をもって」、また、本件意見書を「原作のまま」で複製している訳ではないとして、本件評価書の作成やその縦覧のための複製についての出版権侵害性(80条)を裁判所は否定しています(9頁)。
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4 名誉毀損行為等の成否
著作権者等の名誉毀損(パブリックコメントに於ける意見者のオリジナリティ侵害・毀損行為)に関する損害賠償について、原告は著作権者や著作者ではなく、また、名誉毀損の事実もないとして、裁判所は原告の主張を退けています(9頁)。
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■コメント
福島県会津若松市背あぶり山周辺での風力発電施設建設を内容とするいわゆる環境アセスメントの評価書を巡って著作権が争点とされました(評価書手続終了。工事着手は未届出)。
正確性が欠ける資料等の要約や引用があるのであれば、その点を踏まえて評価書の適否自体を問題とすべきで、著作権を争点とする構成には無理があった事案ではないかと思われますが、意見書の類いにも著作物性が認められるとされた点は参考になるところです。
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■参考サイト
会津若松ウィンドファーム(仮称)事業
風力発電:エコ・パワー株式会社 EcoPower Co.,Ltd.
特定非営利活動法人 風の谷委員会
風力発電環境影響評価書事件
東京地裁平成25.8.30平成24(ワ)26137著作権及び出版権侵害差止請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀 滋
裁判官 小川雅敏
裁判官 西村康夫
*裁判所サイト公表 2013.10.01
*キーワード:著作物性、翻案、著作者人格権、意見書
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■事案
大型風力発電施設建設に関する環境影響評価書へ掲載した意見書の要約が著作権侵害にあたるかどうかが争点となった事案
原告:環境保護NPO法人
被告:風力発電専門会社、福島県
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、19条、20条、27条、80条
1 同一性保持権侵害等の成否
2 翻案権侵害の成否
3 出版権侵害の成否
4 名誉毀損行為等の成否
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■事案の概要
<経緯>
H23.10 被告事業者が「会津若松ウィンドファーム(仮称)事業」環境影響評価書準備書作成、公告、縦覧
H23.11 被告事業者に意見書提出
H24.06 被告事業者が評価書作成、知事に送付
原告がNPO法人格取得
H24.08 被告事業者が評価書公告、縦覧
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■判決内容
<争点>
1 同一性保持権侵害等の成否
原告は、被告エコ・パワーが本件意見書(意見書1から8)の表現を改変して本件評価書に掲載した点を捉えて氏名表示権及び同一性保持権侵害性を主張しましたが、裁判所は、本件意見書の著作物性(2条1項1号)は認められるものの、その著作者は本件意見書の作成者である個々の自然人であって原告ではないとして、原告の主張を認めていません(7頁以下)。
また、仮に原告が作成者であるとしても、評価書に意見の「概要」を記載することが福島県環境影響評価条例で義務づけられており、また、意見を述べた者の氏名を表示することも条例で義務づけられていないとして、この観点からも氏名表示権及び同一性保持権侵害性を否定しています。
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2 翻案権侵害の成否
本件評価書に本件意見書の表現を一部抜粋したり、要約した記載がされましたが、本件条例で意見の概要を記載することが義務づけられており、事業者に意見書を提出した者は、その意見における表現が評価書において意見の概要を表す限度で改変されることを当然に容認した上で意見書を提出したものとみなされると裁判所は説示しています。
そして、本件意見書の各作成者も、評価書において意見の概要が記載されることを容認した上で本件意見書を被告エコ・パワーに提出したのであるから、意見の概要を表す限度で本件意見書の表現を改変したとしても翻案権侵害にはあたらないと裁判所は判断しています(8頁以下)。
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3 出版権侵害の成否
被告エコ・パワーは、本件評価書を「頒布の目的をもって」、また、本件意見書を「原作のまま」で複製している訳ではないとして、本件評価書の作成やその縦覧のための複製についての出版権侵害性(80条)を裁判所は否定しています(9頁)。
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4 名誉毀損行為等の成否
著作権者等の名誉毀損(パブリックコメントに於ける意見者のオリジナリティ侵害・毀損行為)に関する損害賠償について、原告は著作権者や著作者ではなく、また、名誉毀損の事実もないとして、裁判所は原告の主張を退けています(9頁)。
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■コメント
福島県会津若松市背あぶり山周辺での風力発電施設建設を内容とするいわゆる環境アセスメントの評価書を巡って著作権が争点とされました(評価書手続終了。工事着手は未届出)。
正確性が欠ける資料等の要約や引用があるのであれば、その点を踏まえて評価書の適否自体を問題とすべきで、著作権を争点とする構成には無理があった事案ではないかと思われますが、意見書の類いにも著作物性が認められるとされた点は参考になるところです。
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■参考サイト
会津若松ウィンドファーム(仮称)事業
風力発電:エコ・パワー株式会社 EcoPower Co.,Ltd.
特定非営利活動法人 風の谷委員会