最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ウェブサイト入力フォームアシスト機能説明資料事件

東京地裁平成25.9.12平成24(ワ)36678著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官  高野輝久
裁判官       三井大有
裁判官       藤田 壮

*裁判所サイト公表 2013.9.17
*キーワード:著作物性、説明書

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■事案

WEB入力支援システムに関する説明資料の著作物性などが争点となった事案

原告:Eマーケティング事業会社
被告:インターネット広告関連ソフトウェア企画開発販売会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、112条

1 差止め及び廃棄等の請求について
2 損害賠償の請求について

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■事案の概要

『原告が,被告に対し,(1)被告による資料の作成,頒布等が原告の著作物の著作権及び著作者人格権を侵害すると主張して,著作権法112条に基づき,上記資料の複製,頒布等の差止め及びその廃棄等を求め,(2)上記著作権等の侵害とともに,被告による資料の作成,頒布等が原告に対する不法行為を構成すると主張して,民法709条に基づき,損害金1680万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案』(2頁)

<経緯>

H20.04 原告が資料1を作成
H21.03 原告が資料2を作成
H21.08 被告がサービス開始
H24.05 被告が被告資料を作成、頒布、上映
H25.01 被告が被告資料の使用中止

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■判決内容

<争点>

1 差止め及び廃棄等の請求について

被告資料の複製等の差止めと印刷物等の廃棄について、裁判所は、被告は平成25年1月15日に本件訴状の送達を受けて被告資料の使用を中止し、以後は顧客に対してこれを頒布、上映していないこと、また、被告が被告資料を記録した電磁的記録媒体や被告資料を印刷した印刷物を保有していることを認めるに足りる証拠はないとして、被告が現在、被告資料を作成して顧客に対して頒布、上映しているということはできず、また、将来、被告資料を作成して頒布、上映することがあるということもできないとして差止め及び廃棄等の必要を否定しています(6頁以下)。

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2 損害賠償の請求について

(1)著作権侵害の成否

(a)原告各資料の著作物性

原告各資料の著作権侵害の成否に関して、まず原告各資料の著作物性(著作権法2条1項1号)が検討されています。
この点について、裁判所は、
『原告各資料は,いずれも,ウェブサイトの入力フォームのアシスト機能に係るサービスである「ナビキャスト」の内容を効率的に顧客に伝えて購買意欲を喚起することを目的として,「ナビキャスト」の具体的な画面やその機能を説明するために相関図等の図や文章の内容を要領よく選択し,これを顧客に分かりやすいように配置したものであって,この点において表現上の創意工夫がされていると認められる。そうであるから,原告各資料は,全体として筆者の個性が発揮されたもので,創作的な表現を含むから,著作物に当たると認められる』と判断しています(7頁)。

(b)被告各記載が原告各記載を複製、翻案したものか

次に、原告資料と被告資料の対比から、被告各記載は、原告各記載と同一であるなどとして、依拠性も併せて被告の作成、頒布等の行為の著作権(複製権、翻案権、上映権、譲渡権)侵害性を肯定しています(7頁以下)。

(2)被告の故意又は過失の有無

被告の過失が認定されています(8頁以下)。

(3)損害論

原告の損害について、諸事情を勘案して10万円と認定されています(9頁以下)。

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■コメント

WEB申込みフォームの使い勝手が悪いと見込み顧客のサイトからの離脱率が高まるわけですが、本件は、こうした不都合を回避してコンバージョンを上げるためのWEB入力支援システムに関する説明資料の著作物性などが争点となった事案です。
別紙(11頁以下)には具体的な記載内容の対比が示されていますが、同じようなサービスであれば、営業用資料として機能などの説明内容も似通うために説明文の著作物性が認められる幅も狭くなると考えられますが、原告各資料約15頁、被告資料18頁という分量のなかでの7頁分のデッドコピーに近い使われ方となると、結論としては著作権侵害性が肯定されてもやむを得ないところかもしれません。
なお、取扱説明書の著作物性判断に関する先例としては、風呂バンス浴湯保温器取扱説明書事件(大阪高裁平成17.12.15平成17(ネ)742不正競争行為差止等請求控訴事件)、また、サービスのウェブ上の説明内容の著作物性については、データSOS事件(知財高裁平成23.5.26平成23(ネ)10006損害賠償等請求控訴事件)での判断があります。

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■過去のブログ記事

風呂バンス浴湯保温器取扱説明書著作権侵害事件

データSOS事件(控訴審)