最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

勝沼ワイナリー案内看板事件(第2事件)

東京地裁平成25.7.2平成24(ワ)9449不正競争防止法、著作権侵害・損害賠償請求事件PDF

別紙

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官      清野正彦
裁判官      高橋 彩

*裁判所サイト公表 2013.7.5
*キーワード:著作物性、美術の著作物、応用美術、純粋美術、誤認混同惹起行為性

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■事案

ワイナリーへの案内看板の図柄の著作物性が争点となった事案の別件訴訟

原告:広告看板制作会社
被告:ワイン製造販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、10条1項4号、不正競争防止法2条1項1号、刑法233条等

1 本件図柄及び本件各原告看板の著作物性
2 被告による不正競争行為の有無
3 被告による刑法に該当する不法行為の有無

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■事案の概要

『原告が,(1)別紙原告図柄目録記載の図柄(以下「本件図柄」という。)並びに別紙原告看板目録1及び2記載の各看板(以下総称して「本件各原告看板」といい,それぞれ「本件原告看板1」「本件原告看板2」という。)は原告が著作権を有する著作物であり,被告が別紙被告看板目録1及び2記載の各看板(以下総称して「本件各被告看板」といい,それぞれ「本件被告看板1」「本件被告看板2」という。)を製作した行為は,本件図柄及び本件各原告看板の複製権(著作権法21条),貸与権(同法26条の3),翻案権(同法27条),二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(同法28条)を侵害する旨,(2)本件図柄及び本件各原告看板は原告の商品等表示に当たり被告が本件各被告看板を利用する行為は不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に当たる旨,(3)被告の上記各行為は原告に対する不法行為(刑法233条,235条,246条,253条に当たる行為)である旨を主張して,被告に対し,不法行為(民法709条)及び不正競争防止法4条に基づく損害賠償を求めた事案』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件図柄及び本件各原告看板の著作物性

本件図柄及び本件各原告看板の美術の著作物性(著作権法10条1項4号)及び著作物性(2条1項1号)について、裁判所は、いずれも応用美術の領域に属するものであって、純粋美術と同視し得るものではなく、また、広告看板の図柄としてありふれたものにすぎないなどとして、美術の著作物性(10条1項4号)、著作物性(2条1項1号)のいずれの観点からも著作権法上の著作物としての保護が否定されています(7頁以下)。

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2 被告による不正競争行為の有無

原告は、本件図柄及び本件各原告看板が原告の周知の商品等表示に当たるとして、被告に不正競争防止法2条1項1号の周知表示混同惹起行為があると主張しましたが、本件図柄及び本件各原告看板には被告の名称である「シャトー勝沼」の文字が記載されており、原告がこれを自らの商品又は営業を示す表示として用いたことを認めるに足りる証拠はないとして、裁判所は不正競争行為性を否定しています(9頁以下)。

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3 被告による刑法に該当する不法行為の有無

被告による本件各被告看板の製作、設置、使用行為が刑法233条(信用毀損等)等の不法行為にあたると原告は主張しましたが、裁判所は認めていません(10頁)。

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■コメント

ワイナリーへの案内看板の図柄の著作物性が争点となった事案の別件訴訟で、本件では先行する訴訟とは看板の所在地が異なる2件が対象となっており、また、争点として不正競争行為性などが追加されています。
先行する訴訟の判決と同様、看板図柄の著作物性が否定されています。著作権法上の争点としては、美術の著作物性についても言及されている点が、先行判決と異なる部分となります。
なお、本判決には、問題となった図柄の画像が別紙として添付、公開されています。

別紙 原告図柄目録より
20130709

別紙 被告看板目録1より
2013


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■過去のブログ記事

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