最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
星座早見板事件
大阪地裁平成25.4.18平成24(ウ)9969著作権侵害差止等請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官 松川充康
裁判官 西田昌吾
*裁判所サイト公表 2013.4.23
*キーワード:著作物性、複製、一般不法行為論
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■事案
星座早見板の天空部分の著作物性などが争点となった事案
原告:理科教材製造販売会社
被告:教育用教材販売会社
--------------------
■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、民法709条
1 原告星座板の著作物性及び原告星座板と被告星座板の同一性等
2 著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)侵害の成否
3 一般不法行為の成否
--------------------
■事案の概要
『原告は,被告に対し,前記被告の行為について,(1)原告星座板に対する原告の複製権,譲渡権,氏名表示権及び同一性保持権を侵害するものであるとして,著作権及び著作者人格権に基づき,被告星座板の作成及び頒布の差止め並びに被告星座板及びその半製品の廃棄を求めるとともに,(2)上記著作権若しくは著作者人格権侵害に係る不法行為又は一般不法行為に基づき,330万円の損害賠償及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている』事案(3頁)
<経緯>
S55 原告が星座板を作成
H13 原告が原告星座板を作成、販売
H24 被告が被告製品を作成、頒布
原告製品名:「星・月の動きA型」
被告製品名:「星や月の早見板」(〈月や星の動き〉星の早見板)
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■判決内容
<争点>
1 原告星座板の著作物性及び原告星座板と被告星座板の同一性等
天空における星座の位置等を把握するために用いられる星座板の著作物性について、裁判所は、
「星座板を作成するに当たっては,その使用目的に適うように,星及び星座の天球における極座標上の位置を,そのまま円形平面の極座標に転記するのではなく,実際に天空を観測した場合の星座の形状等を反映するように修正することが行われている。そのような修正をするに当たっては,実際の観測における星の位置関係を反映させる必要があることに加え,星座板自体の大きさの制約から,その修正をした後における星の位置関係等を含む表現の幅は限られたものとならざるを得ず,表現自体として差異化する(個性を表現する)ことのできる部分は少ない。 」(13頁)
として、表現の幅が狭いことに言及しています。
そして、原告星座板と被告星座板を比較し、被告星座板が原告星座板に依拠して作成されたとした上で、両者の一致点における創作性の有無を複製性の判断において検討しています。
裁判所は、星座の選択、星の特定方法、星座線の結び方、星座名の記載、星の位置、星座板における星の位置の修正、星の形、天の川、銀河の北極といった諸点について、いずれも表現の選択の幅が狭く、ありふれた又は平凡な表現であって、創作性がない、と判断しています。
結論として、被告の行為の複製性は否定されています。
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2 著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)侵害の成否
争点1の通り、被告星座板は、表現上の創作性がない部分において原告星座板と同一性を有するにすぎないため、被告の行為には著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)侵害が成立しないと判断されています(21頁)。
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3 一般不法行為の成否
原告は、被告星座板と原告星座板が実質的に同一の形態であり、デッドコピーとして一般不法行為(民法709条)が成立すると主張しました(21頁以下)。
しかし、裁判所は、
「星座板は,マスク円盤と組み合わせて販売されるものであり,原告星座板と被告星座板に組み合わされる各マスク円盤を比較すると,その違いは明瞭であって(甲4の1〜3,甲10の1・2),商品全体としてみると,被告星座板を用いた被告製品が原告星座板を用いた原告製品のデッドコピーであるとはいえない。しかも,原告星座板と被告星座板の一致点として原告が強調する部分は,前記1で検討したとおり,ありふれた表現に属するものであったり,わずかな違いであったりすることからしても,小学校の教材用星座板の需要者にとって,星座板の選択,購入に影響を与えていることは考えにくいから,被告の行為をもって,自由競争の範囲を逸脱した違法な行為ということはできない」
として、一般不法行為の成立を否定しています。
結論として、原告の請求はいずれも認められませんでした。
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■コメント
星座早見板の天空部分の著作物性が争点となった事案です。
原告星座板
被告星座板
時刻などを合わせるために回転させて使うため、製品の構成としては、この天空部分とそれを覆う半透明のマスク円盤との組合せとなります(製品について、後掲サイト参照)。
デッドコピー商品の場合、不正競争防止法2条1項3号(商品形態模倣)での保護の余地もありますが、原告商品はロングセラーのため適用除外となります(19条1項5号イ)。
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■参考サイト
原告製品
クラフテリオ 星や月の早見板(1)星を調べる(動画)
星座早見板事件
大阪地裁平成25.4.18平成24(ウ)9969著作権侵害差止等請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官 松川充康
裁判官 西田昌吾
*裁判所サイト公表 2013.4.23
*キーワード:著作物性、複製、一般不法行為論
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■事案
星座早見板の天空部分の著作物性などが争点となった事案
原告:理科教材製造販売会社
被告:教育用教材販売会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、民法709条
1 原告星座板の著作物性及び原告星座板と被告星座板の同一性等
2 著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)侵害の成否
3 一般不法行為の成否
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■事案の概要
『原告は,被告に対し,前記被告の行為について,(1)原告星座板に対する原告の複製権,譲渡権,氏名表示権及び同一性保持権を侵害するものであるとして,著作権及び著作者人格権に基づき,被告星座板の作成及び頒布の差止め並びに被告星座板及びその半製品の廃棄を求めるとともに,(2)上記著作権若しくは著作者人格権侵害に係る不法行為又は一般不法行為に基づき,330万円の損害賠償及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている』事案(3頁)
<経緯>
S55 原告が星座板を作成
H13 原告が原告星座板を作成、販売
H24 被告が被告製品を作成、頒布
原告製品名:「星・月の動きA型」
被告製品名:「星や月の早見板」(〈月や星の動き〉星の早見板)
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■判決内容
<争点>
1 原告星座板の著作物性及び原告星座板と被告星座板の同一性等
天空における星座の位置等を把握するために用いられる星座板の著作物性について、裁判所は、
「星座板を作成するに当たっては,その使用目的に適うように,星及び星座の天球における極座標上の位置を,そのまま円形平面の極座標に転記するのではなく,実際に天空を観測した場合の星座の形状等を反映するように修正することが行われている。そのような修正をするに当たっては,実際の観測における星の位置関係を反映させる必要があることに加え,星座板自体の大きさの制約から,その修正をした後における星の位置関係等を含む表現の幅は限られたものとならざるを得ず,表現自体として差異化する(個性を表現する)ことのできる部分は少ない。 」(13頁)
として、表現の幅が狭いことに言及しています。
そして、原告星座板と被告星座板を比較し、被告星座板が原告星座板に依拠して作成されたとした上で、両者の一致点における創作性の有無を複製性の判断において検討しています。
裁判所は、星座の選択、星の特定方法、星座線の結び方、星座名の記載、星の位置、星座板における星の位置の修正、星の形、天の川、銀河の北極といった諸点について、いずれも表現の選択の幅が狭く、ありふれた又は平凡な表現であって、創作性がない、と判断しています。
結論として、被告の行為の複製性は否定されています。
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2 著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)侵害の成否
争点1の通り、被告星座板は、表現上の創作性がない部分において原告星座板と同一性を有するにすぎないため、被告の行為には著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)侵害が成立しないと判断されています(21頁)。
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3 一般不法行為の成否
原告は、被告星座板と原告星座板が実質的に同一の形態であり、デッドコピーとして一般不法行為(民法709条)が成立すると主張しました(21頁以下)。
しかし、裁判所は、
「星座板は,マスク円盤と組み合わせて販売されるものであり,原告星座板と被告星座板に組み合わされる各マスク円盤を比較すると,その違いは明瞭であって(甲4の1〜3,甲10の1・2),商品全体としてみると,被告星座板を用いた被告製品が原告星座板を用いた原告製品のデッドコピーであるとはいえない。しかも,原告星座板と被告星座板の一致点として原告が強調する部分は,前記1で検討したとおり,ありふれた表現に属するものであったり,わずかな違いであったりすることからしても,小学校の教材用星座板の需要者にとって,星座板の選択,購入に影響を与えていることは考えにくいから,被告の行為をもって,自由競争の範囲を逸脱した違法な行為ということはできない」
として、一般不法行為の成立を否定しています。
結論として、原告の請求はいずれも認められませんでした。
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■コメント
星座早見板の天空部分の著作物性が争点となった事案です。
原告星座板
被告星座板
時刻などを合わせるために回転させて使うため、製品の構成としては、この天空部分とそれを覆う半透明のマスク円盤との組合せとなります(製品について、後掲サイト参照)。
デッドコピー商品の場合、不正競争防止法2条1項3号(商品形態模倣)での保護の余地もありますが、原告商品はロングセラーのため適用除外となります(19条1項5号イ)。
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■参考サイト
原告製品
クラフテリオ 星や月の早見板(1)星を調べる(動画)