最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「受話器の象徴」デザイン国賠事件
東京地裁平成25.1.25平成23(ワ)40129損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 高野輝久
裁判官 三井大有
裁判官 志賀 勝
*裁判所サイト公表 2013.02.12
*キーワード:登録制度、形式審査、著作物性
--------------------
■事案
著作権移転登録申請を行った際の文化庁長官の行為に違法があるとして争った事案
原告:個人
被告:国
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法77条1号、国賠法1条1項
1 文化庁長官の行為が国家賠償法上違法であるか否か
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■事案の概要
『原告が,原告が著作権法(以下,単に「法」という。)77条1号の著作権の移転登録申請を行ったことにつき,文化庁長官の行為に違法があり,これにより損害を被ったと主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償として4105億5626万円の一部である1626万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成24年4月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案』(1頁以下)
<経緯>
H15.10 本件図柄の登録(登録番号19532−1)
H22.03 譲渡人Bから譲受人原告へ持分2分の1全部譲渡、移転登録申請
H22.04 19532−2、3、4登録
H22.06 譲渡人Cから譲受人原告へ持分2分の1全部譲渡
H22.09 原告が企業に対して著作権侵害訴訟を福岡地裁に提起
H23.10 棄却判決(平成23年10月5日判決等)
H23.10 譲渡人Cから譲受人原告へ持分2分の1全部譲渡移転登録申請
H23.11 19532−5登録
著作物(本件図柄)の題号:「受話器の象徴」
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■判決内容
<争点>
1 文化庁長官の行為が国家賠償法上違法であるか否か
原告は、文化庁長官官房著作権課の担当職員が、原告が本件各登録の申請を行った際に、原告に対して『「著作物であるからこそ登録できる」とか「登録されたものは著作物である」などというわけではなく,本件各登録をしたからといって著作権の権利者という地位は保証されない旨の説明をしなかったが,これは,文化庁長官が,本件担当職員をして,原告に対し,本件図柄が著作権法上の著作物ではないにもかかわらず,あたかも本件図柄につき著作権が存在するかのように消極的に装い,原告にその旨誤信させたものである』
『文化庁長官や文化庁職員は,「著作物でないもの」や「著作物かどうか不明なもの」を著作権登録しているという事実を認識しているから,文化庁長官は,本件担当職員をして,原告に対し,上記のような説明をさせるべきであったのに,これをしなかったのであって,文化庁長官には職務上通常尽くすべき注意義務を怠った違法がある』(3頁)旨主張しました。
この点について、裁判所は、
『文化庁長官がかかる義務を負うことにつき定めた法令はないし,仮に文化庁長官が「著作物でないもの」や「著作物かどうか不明なもの」を著作権登録しているという事実を認識しているとしても,これにより文化庁長官が上記のような義務を負うこととなるわけではなく,その他文化庁長官がかかる義務を負うことを認め得る根拠もない』(4頁)
として、原告の主張を認めていません。
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■コメント
電話機の受話器のデザインの著作物性を前提に、著作権者として複数の企業に対して総額4100億円に及ぶ巨額の損害賠償請求事件を提訴していた原告ですが、文化庁長官の行為に対して国賠請求をした事案が本件となります。
福岡地裁の判決内容を検討していないため、デザインの著作物性や侵害性について何ともいえませんが(ネットで検索すると判決内容を伝える記事はヒットしますが)、登録制度が実質審査ではなく書面による形式審査であって、著作物性の付与や著作権の発生を保証する制度ではないことからすると、福岡地裁での登録を根拠とする原告の主張や今回の国賠請求は容れられ難い争点だったと思われます。
福岡事案では大手企業が被告とされたことから、知財協でも事案の分析や関係部署との意見交換をされています(2011年度専門委員会年間報告参照)。
なお、現在、著作権登録状況検索システムで題号「受話器の象徴」で検索をすると、5件ヒットします。
「受話器の象徴」デザイン国賠事件
東京地裁平成25.1.25平成23(ワ)40129損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 高野輝久
裁判官 三井大有
裁判官 志賀 勝
*裁判所サイト公表 2013.02.12
*キーワード:登録制度、形式審査、著作物性
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■事案
著作権移転登録申請を行った際の文化庁長官の行為に違法があるとして争った事案
原告:個人
被告:国
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法77条1号、国賠法1条1項
1 文化庁長官の行為が国家賠償法上違法であるか否か
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■事案の概要
『原告が,原告が著作権法(以下,単に「法」という。)77条1号の著作権の移転登録申請を行ったことにつき,文化庁長官の行為に違法があり,これにより損害を被ったと主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償として4105億5626万円の一部である1626万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成24年4月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案』(1頁以下)
<経緯>
H15.10 本件図柄の登録(登録番号19532−1)
H22.03 譲渡人Bから譲受人原告へ持分2分の1全部譲渡、移転登録申請
H22.04 19532−2、3、4登録
H22.06 譲渡人Cから譲受人原告へ持分2分の1全部譲渡
H22.09 原告が企業に対して著作権侵害訴訟を福岡地裁に提起
H23.10 棄却判決(平成23年10月5日判決等)
H23.10 譲渡人Cから譲受人原告へ持分2分の1全部譲渡移転登録申請
H23.11 19532−5登録
著作物(本件図柄)の題号:「受話器の象徴」
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■判決内容
<争点>
1 文化庁長官の行為が国家賠償法上違法であるか否か
原告は、文化庁長官官房著作権課の担当職員が、原告が本件各登録の申請を行った際に、原告に対して『「著作物であるからこそ登録できる」とか「登録されたものは著作物である」などというわけではなく,本件各登録をしたからといって著作権の権利者という地位は保証されない旨の説明をしなかったが,これは,文化庁長官が,本件担当職員をして,原告に対し,本件図柄が著作権法上の著作物ではないにもかかわらず,あたかも本件図柄につき著作権が存在するかのように消極的に装い,原告にその旨誤信させたものである』
『文化庁長官や文化庁職員は,「著作物でないもの」や「著作物かどうか不明なもの」を著作権登録しているという事実を認識しているから,文化庁長官は,本件担当職員をして,原告に対し,上記のような説明をさせるべきであったのに,これをしなかったのであって,文化庁長官には職務上通常尽くすべき注意義務を怠った違法がある』(3頁)旨主張しました。
この点について、裁判所は、
『文化庁長官がかかる義務を負うことにつき定めた法令はないし,仮に文化庁長官が「著作物でないもの」や「著作物かどうか不明なもの」を著作権登録しているという事実を認識しているとしても,これにより文化庁長官が上記のような義務を負うこととなるわけではなく,その他文化庁長官がかかる義務を負うことを認め得る根拠もない』(4頁)
として、原告の主張を認めていません。
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■コメント
電話機の受話器のデザインの著作物性を前提に、著作権者として複数の企業に対して総額4100億円に及ぶ巨額の損害賠償請求事件を提訴していた原告ですが、文化庁長官の行為に対して国賠請求をした事案が本件となります。
福岡地裁の判決内容を検討していないため、デザインの著作物性や侵害性について何ともいえませんが(ネットで検索すると判決内容を伝える記事はヒットしますが)、登録制度が実質審査ではなく書面による形式審査であって、著作物性の付与や著作権の発生を保証する制度ではないことからすると、福岡地裁での登録を根拠とする原告の主張や今回の国賠請求は容れられ難い争点だったと思われます。
福岡事案では大手企業が被告とされたことから、知財協でも事案の分析や関係部署との意見交換をされています(2011年度専門委員会年間報告参照)。
なお、現在、著作権登録状況検索システムで題号「受話器の象徴」で検索をすると、5件ヒットします。