最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
コンビニ漫画本原稿料事件
東京地裁平成25.1.31平成23(ワ)35951損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官 盒供〆
裁判官 石神有吾
*裁判所サイト公表 2013.2.6
*キーワード:漫画、原稿料、印税、使用料相当額、コンビニコミック
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■事案
コンビニ漫画本作画に関して原稿料以外に増刷の際に漫画家へ印税支払の必要があったかどうかが争点となった事案
原告:漫画家
被告:出版社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法21条、114条3項
1 被告による著作権(複製権)の侵害の成否
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■事案の概要
『本件は,別紙目録1ないし12記載の漫画各話(全体目次を含む。以下「本件漫画各話」という。)の作画(以下「本件各作画」と総称し,それぞれを「本件作画1」,「本件作画2」などという。)を制作した原告が,本件漫画各話を掲載したコミックの初版,さらには増刷を発行した被告に対し,被告が上記コミックを増刷して発行した行為が本件各作画について原告が保有する著作権(複製権)の侵害行為に当たる旨主張して,被告に対し,著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償を求めた事案』(1頁)
<経緯>
H17.08 「プロレス最強列伝」制作
H19.02 本件コミック1「Bの都市伝説」初版発行
H20.08 本件コミック1初版3刷発行
H20.09 本件コミック2初版発行
H21.04 本件コミック3初版発行
H21.08 本件コミック4初版発行
H21.12 本件コミック5初版発行
H22.05 本件コミック6初版発行
本件コミック2〜6を都度増刷
H23.02 原告が被告に対して再販分の支払を要求
H23.08 「都市伝説Gコミック」発行、再録掲載料支払合意
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■判決内容
<争点>
1 被告による著作権(複製権)の侵害の成否
原告漫画家は、本件各作画を本件各コミックの初版に掲載して利用することは被告出版社に許諾したが、その増刷に利用することまでは許諾していないとして、被告が本件各コミックを増刷して発行した行為は、本件各作画について原告が保有する複製権(著作権法21条)の侵害行為に当たると主張。使用料相当額の損害額として合計508万6000円(原稿料1枚当たり1万円から1万3000円)を請求しました(114条3項)。
この点について、裁判所は、
(1)「本件各コミックと同種のコンビニコミックは,雑誌扱いの不定期の刊行物として,主にコンビニエンスストアで発売後約2週間程度販売された後,売れ残ったものが返品されるのが通常であり,初版の発売時にはあらかじめ増刷することは予定されていないが,これは事実上の取扱いであり,初版が返品された後であっても,需要があれば,増刷して発行することもあり得るものであり,コンビニコミックであるからといって,流通期間が性質上当然に限定されているとまではいえない」
(2)「被告は,上記各依頼に際し,原告に対し,上記原稿料以外の条件の提示をしていないのみならず,原告と被告との間で,原稿料以外の条件や本件各コミックの発行予定部数,流通期間等について話題となることはなかった」(13頁以下)
とした点から、
本件各合意に基づく原告の利用許諾の効力は、本件各コミックの初版分に限定されるものではなく、その増刷分についても及ぶものと認めるのが相当であると判断。また、原告の不利益については、
「本件各コミックの2刷及び3刷は,初版を増刷したものであって,本件各作画の利用形態は初版と何ら変わることはないのであるから,本件各コミックの流通期間が原告が想定していた約2週間を超えたからといって原告において特段の不利益をもたらすものとは認め難く,本件各合意を締結するに当たっての合理的意思に反するものとも認め難い」(14頁以下)
として、結論として原告の主張を認めませんでした。
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■コメント
漫画家が出版社に対して漫画作画原稿料のほかに増刷された際の印税を別途要求しましたが、認められませんでした。
コンビニ向けの廉価版漫画本については、通常2週間程度店頭に並んで廃棄されるいわば「短命」の雑誌類似の書籍で、増刷を予定しない雑誌として考えるのであれば、作画原稿料の限りでの支払というのも良く理解できます。
しかし、コンビニ本が増刷にかかった場合であれば、単行本と同様、漫画家にも何らかの利益が還元されるべきで、そうした配慮を出版社はすべきです。
裁判では和解の途も探られたかとは思いますが、判決では再録掲載料支払に関する合意が認められず、出版社に都合の良い方向で認定されており漫画家への配慮を欠く結果となっています。
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■追記(2013/02/13)
企業法務戦士の雑感(2013-02-07記事)
「竹書房」と聞いて蘇った記憶〜廉価版コミックをめぐる著作権侵害事件を契機に。
コンビニ漫画本原稿料事件
東京地裁平成25.1.31平成23(ワ)35951損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官 盒供〆
裁判官 石神有吾
*裁判所サイト公表 2013.2.6
*キーワード:漫画、原稿料、印税、使用料相当額、コンビニコミック
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■事案
コンビニ漫画本作画に関して原稿料以外に増刷の際に漫画家へ印税支払の必要があったかどうかが争点となった事案
原告:漫画家
被告:出版社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法21条、114条3項
1 被告による著作権(複製権)の侵害の成否
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■事案の概要
『本件は,別紙目録1ないし12記載の漫画各話(全体目次を含む。以下「本件漫画各話」という。)の作画(以下「本件各作画」と総称し,それぞれを「本件作画1」,「本件作画2」などという。)を制作した原告が,本件漫画各話を掲載したコミックの初版,さらには増刷を発行した被告に対し,被告が上記コミックを増刷して発行した行為が本件各作画について原告が保有する著作権(複製権)の侵害行為に当たる旨主張して,被告に対し,著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償を求めた事案』(1頁)
<経緯>
H17.08 「プロレス最強列伝」制作
H19.02 本件コミック1「Bの都市伝説」初版発行
H20.08 本件コミック1初版3刷発行
H20.09 本件コミック2初版発行
H21.04 本件コミック3初版発行
H21.08 本件コミック4初版発行
H21.12 本件コミック5初版発行
H22.05 本件コミック6初版発行
本件コミック2〜6を都度増刷
H23.02 原告が被告に対して再販分の支払を要求
H23.08 「都市伝説Gコミック」発行、再録掲載料支払合意
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■判決内容
<争点>
1 被告による著作権(複製権)の侵害の成否
原告漫画家は、本件各作画を本件各コミックの初版に掲載して利用することは被告出版社に許諾したが、その増刷に利用することまでは許諾していないとして、被告が本件各コミックを増刷して発行した行為は、本件各作画について原告が保有する複製権(著作権法21条)の侵害行為に当たると主張。使用料相当額の損害額として合計508万6000円(原稿料1枚当たり1万円から1万3000円)を請求しました(114条3項)。
この点について、裁判所は、
(1)「本件各コミックと同種のコンビニコミックは,雑誌扱いの不定期の刊行物として,主にコンビニエンスストアで発売後約2週間程度販売された後,売れ残ったものが返品されるのが通常であり,初版の発売時にはあらかじめ増刷することは予定されていないが,これは事実上の取扱いであり,初版が返品された後であっても,需要があれば,増刷して発行することもあり得るものであり,コンビニコミックであるからといって,流通期間が性質上当然に限定されているとまではいえない」
(2)「被告は,上記各依頼に際し,原告に対し,上記原稿料以外の条件の提示をしていないのみならず,原告と被告との間で,原稿料以外の条件や本件各コミックの発行予定部数,流通期間等について話題となることはなかった」(13頁以下)
とした点から、
本件各合意に基づく原告の利用許諾の効力は、本件各コミックの初版分に限定されるものではなく、その増刷分についても及ぶものと認めるのが相当であると判断。また、原告の不利益については、
「本件各コミックの2刷及び3刷は,初版を増刷したものであって,本件各作画の利用形態は初版と何ら変わることはないのであるから,本件各コミックの流通期間が原告が想定していた約2週間を超えたからといって原告において特段の不利益をもたらすものとは認め難く,本件各合意を締結するに当たっての合理的意思に反するものとも認め難い」(14頁以下)
として、結論として原告の主張を認めませんでした。
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■コメント
漫画家が出版社に対して漫画作画原稿料のほかに増刷された際の印税を別途要求しましたが、認められませんでした。
コンビニ向けの廉価版漫画本については、通常2週間程度店頭に並んで廃棄されるいわば「短命」の雑誌類似の書籍で、増刷を予定しない雑誌として考えるのであれば、作画原稿料の限りでの支払というのも良く理解できます。
しかし、コンビニ本が増刷にかかった場合であれば、単行本と同様、漫画家にも何らかの利益が還元されるべきで、そうした配慮を出版社はすべきです。
裁判では和解の途も探られたかとは思いますが、判決では再録掲載料支払に関する合意が認められず、出版社に都合の良い方向で認定されており漫画家への配慮を欠く結果となっています。
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■追記(2013/02/13)
企業法務戦士の雑感(2013-02-07記事)
「竹書房」と聞いて蘇った記憶〜廉価版コミックをめぐる著作権侵害事件を契機に。