最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「夕暮れのナパリ海岸」写真事件
東京地裁平成24.12.21平成23(ワ)32584損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官 小川雅敏
裁判官 西村康夫
*裁判所サイト公表 2013.1.10
*キーワード:写真、著作物、複製、公衆送信、過失
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■事案
ハワイの風景写真を無許諾でブログに掲載した事案
原告:職業写真家、代理店
被告:個人
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、23条
1 準拠法
2 本件写真の著作物性、著作者及び著作権者
3 被告の過失の有無
4 原告らの損害及び損害額
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■事案の概要
『原告らが,別紙原告著作物(1)及び(2)(以下,順に「本件写真(1)」「本件写真(2)」といい,併せて「本件写真」という。)について,原告Aが著作権を,原告会社が独占的利用許諾権をそれぞれ有していることを前提として,被告は,その運営するブログに無許諾で本件写真を掲載し,著作権(複製権,公衆送信権)を侵害したなどと主張し,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として,原告Aにつき30万1731円及び原告会社につき44万6332円(いずれも附帯請求として訴状送達の日の翌日である平成23年10月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求めた事案』(2頁)
<経緯>
H22.09 原告Aが原告会社に独占的利用許諾権を付与
H23.01 被告がブログに本件写真(2)掲載
H23.02 被告がブログに本件写真(1)掲載
H23.06 原告Aの代理人が被告に警告書を送付
H23.10 本訴提起
本件写真(1)「夕暮れのナパリ海岸(Napali Coast At Sunset)」
本件写真(2)「たそがれ時のサーファー(Picture Of Surfer At Twilight)」
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■判決内容
<争点>
1 準拠法
原告である写真家Aと本件写真のライセンス管理会社である会社は、いずれもアメリカ合衆国国民、あるいはハワイ州設立法人であることから、前提として著作権法6条3号、ベルヌ条約5条(1)により本件写真が我が国においても保護されること、また、原告Aが原告会社に独占的利用許諾権を付与した点について、利用許諾契約の成立及び効力に関するものであるとして、当事者による準拠法の選択(法適用通則法7条)による等、原告らはアメリカ合衆国ないしハワイ州の法を選択したとして、アメリカ合衆国著作権法101条や法204条(a)によることが確認されています。
また、著作権侵害を理由とする損害賠償請求は不法行為と法性決定した上で、通則法17条により結果発生地である我が国の法律を準拠法と判断、確認しています(9頁以下)。
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2 本件写真の著作物性、著作者及び著作権者
次に、本件写真の著作物性については、「本件写真は,いずれも,夕暮れ時の太陽光によって照らし出される海岸の光景を,構図,カメラのアングル,シャッタースピード等を工夫して撮影したものと認められ,撮影者の個性が現れており,撮影者の思想又は感情を創作的に表現したものであると認められるから,著作物であるというべきである」として、著作物性(著作権法2条1項1号)が肯定されています。
そして撮影者である原告Aが著作者であり、著作権者であると認められています(17条1項 11頁以下)。
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3 被告の過失の有無
被告は、ウェブ検索により無許諾で本件写真をダウンロードした上で自己の管理するブログに掲載しており、利用権原の有無についての確認を怠っており、本件写真をダウンロードして複製したこと及びアップロードしてブログに掲載し公衆送信したことについて過失があると認められています(12頁以下)。
被告はこの点について、フリー素材、無料であると誤信したと反論しましたが、裁判所は認めていません。
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4 原告らの損害及び損害額
原告A及び原告会社の損害額等は、以下のように認定されています(14頁以下)。
(1)原告A
・写真(1)
2376米ドル(24ヶ月ライセンス料)×5ヶ月(使用期間)/24ヶ月×0.8(Aへの配分率)=396米ドル
・写真(2)
2376×9ヶ月(使用期間)/24×0.8=712.8米ドル
合計1108.8米ドル 8万8704円(1米ドル80円換算 なお、1万円は支払済み)
(2)原告会社
・写真(1)
2376米ドル(24ヶ月ライセンス料)×5ヶ月(使用期間)/24ヶ月×0.2(会社への配分率)=99米ドル
・写真(2)
2376×9ヶ月(使用期間)/24×0.2=178.2米ドル
手数料相当額 合計277.2米ドル 2万2176円
弁護士費用相当額5万円
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■コメント
ネットで拾ってきた写真画像を勝手にブログに転載したという、著作権侵害事案としては単純な内容ですが、プロの写真家の写真でさえ権利者側が代理人を立てて権利保護を訴訟で実現しようとすると、費用倒れになってしまうことがよく分かる事案です。損害論については、外国のかたが日本で権利保護を実現しようとする場合、翻訳費用も掛かるでしょうし、割の合わない結果になってしまいます。
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■参考サイト
企業法務戦士の雑感(2013.1.11記事)
これぞ格好の研修素材〜“フリー素材”の怖さ
「夕暮れのナパリ海岸」写真事件
東京地裁平成24.12.21平成23(ワ)32584損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官 小川雅敏
裁判官 西村康夫
*裁判所サイト公表 2013.1.10
*キーワード:写真、著作物、複製、公衆送信、過失
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■事案
ハワイの風景写真を無許諾でブログに掲載した事案
原告:職業写真家、代理店
被告:個人
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、23条
1 準拠法
2 本件写真の著作物性、著作者及び著作権者
3 被告の過失の有無
4 原告らの損害及び損害額
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■事案の概要
『原告らが,別紙原告著作物(1)及び(2)(以下,順に「本件写真(1)」「本件写真(2)」といい,併せて「本件写真」という。)について,原告Aが著作権を,原告会社が独占的利用許諾権をそれぞれ有していることを前提として,被告は,その運営するブログに無許諾で本件写真を掲載し,著作権(複製権,公衆送信権)を侵害したなどと主張し,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として,原告Aにつき30万1731円及び原告会社につき44万6332円(いずれも附帯請求として訴状送達の日の翌日である平成23年10月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求めた事案』(2頁)
<経緯>
H22.09 原告Aが原告会社に独占的利用許諾権を付与
H23.01 被告がブログに本件写真(2)掲載
H23.02 被告がブログに本件写真(1)掲載
H23.06 原告Aの代理人が被告に警告書を送付
H23.10 本訴提起
本件写真(1)「夕暮れのナパリ海岸(Napali Coast At Sunset)」
本件写真(2)「たそがれ時のサーファー(Picture Of Surfer At Twilight)」
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■判決内容
<争点>
1 準拠法
原告である写真家Aと本件写真のライセンス管理会社である会社は、いずれもアメリカ合衆国国民、あるいはハワイ州設立法人であることから、前提として著作権法6条3号、ベルヌ条約5条(1)により本件写真が我が国においても保護されること、また、原告Aが原告会社に独占的利用許諾権を付与した点について、利用許諾契約の成立及び効力に関するものであるとして、当事者による準拠法の選択(法適用通則法7条)による等、原告らはアメリカ合衆国ないしハワイ州の法を選択したとして、アメリカ合衆国著作権法101条や法204条(a)によることが確認されています。
また、著作権侵害を理由とする損害賠償請求は不法行為と法性決定した上で、通則法17条により結果発生地である我が国の法律を準拠法と判断、確認しています(9頁以下)。
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2 本件写真の著作物性、著作者及び著作権者
次に、本件写真の著作物性については、「本件写真は,いずれも,夕暮れ時の太陽光によって照らし出される海岸の光景を,構図,カメラのアングル,シャッタースピード等を工夫して撮影したものと認められ,撮影者の個性が現れており,撮影者の思想又は感情を創作的に表現したものであると認められるから,著作物であるというべきである」として、著作物性(著作権法2条1項1号)が肯定されています。
そして撮影者である原告Aが著作者であり、著作権者であると認められています(17条1項 11頁以下)。
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3 被告の過失の有無
被告は、ウェブ検索により無許諾で本件写真をダウンロードした上で自己の管理するブログに掲載しており、利用権原の有無についての確認を怠っており、本件写真をダウンロードして複製したこと及びアップロードしてブログに掲載し公衆送信したことについて過失があると認められています(12頁以下)。
被告はこの点について、フリー素材、無料であると誤信したと反論しましたが、裁判所は認めていません。
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4 原告らの損害及び損害額
原告A及び原告会社の損害額等は、以下のように認定されています(14頁以下)。
(1)原告A
・写真(1)
2376米ドル(24ヶ月ライセンス料)×5ヶ月(使用期間)/24ヶ月×0.8(Aへの配分率)=396米ドル
・写真(2)
2376×9ヶ月(使用期間)/24×0.8=712.8米ドル
合計1108.8米ドル 8万8704円(1米ドル80円換算 なお、1万円は支払済み)
(2)原告会社
・写真(1)
2376米ドル(24ヶ月ライセンス料)×5ヶ月(使用期間)/24ヶ月×0.2(会社への配分率)=99米ドル
・写真(2)
2376×9ヶ月(使用期間)/24×0.2=178.2米ドル
手数料相当額 合計277.2米ドル 2万2176円
弁護士費用相当額5万円
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■コメント
ネットで拾ってきた写真画像を勝手にブログに転載したという、著作権侵害事案としては単純な内容ですが、プロの写真家の写真でさえ権利者側が代理人を立てて権利保護を訴訟で実現しようとすると、費用倒れになってしまうことがよく分かる事案です。損害論については、外国のかたが日本で権利保護を実現しようとする場合、翻訳費用も掛かるでしょうし、割の合わない結果になってしまいます。
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■参考サイト
企業法務戦士の雑感(2013.1.11記事)
これぞ格好の研修素材〜“フリー素材”の怖さ