最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ディスクパブリッシャーソフト事件

東京地裁平成24.12.18平成24(ワ)5771著作権侵害差止請求権不存在確認等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官      高橋 彩
裁判官      上田真史

*裁判所サイト公表 2012.12.27
*キーワード:著作物性、複製、翻案、営業秘密

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■事案

競合ソフトの開発販売に関して著作権侵害性、営業秘密に係る不正競争行為性が争点となった事案

原告:ソフト開発販売会社
被告:ソフト開発販売会社

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、10条1項9号、不正競争防止法2条1項7号、2条6項

1 本件ソフトウェアのプログラムの著作権侵害の成否
2 不正競争防止法2条1項7号の不正競争行為の成否

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■事案の概要

『別紙目録1記載の各ソフトウェア(以下「原告ソフトウェア」と総称する。)を製造,販売する原告が,被告が,原告ソフトウェアのプログラムは,被告の著作物である別紙目録2記載のソフトウェア(以下「本件ソフトウェア」という。)のプログラムを複製又は翻案したものであり,原告が原告ソフトウェアを製造,販売する行為は,被告が保有する本件ソフトウェアのプログラムの著作権(複製権(著作権法21条)又は翻案権(同法27条)及び譲渡権(同法26条の2第1項))の侵害行為に該当するとともに,被告の営業秘密である本件ソフトウェアのプログラム等の不正使用の不正競争行為(不正競争防止法2条1項7号)に該当することを理由に,原告に対し,著作権法112条1項及び不正競争防止法3条1項に基づく原告ソフトウェアの製造,販売の差止請求権を有するなどと主張しているとして,被告の上記各差止請求権の不存在の確認を求めた事案』(2頁)

<経緯>

H20.08 原被告間で業務委託基本契約締結
H22.08 ディスクパブリッシャーソフト開発を原告が被告から受託、納品
H23.09 原告ソフトの製造販売
H23.12 被告が原告に契約違反を通知
H24.02 原告が本件訴訟を提起

原告ソフト 「群刻 簡易版」「群刻 標準版」「群刻 究極版」
被告ソフト 「iDupli Bravo with Disk Publisher」

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■判決内容

<争点>

1 本件ソフトウェアのプログラムの著作権侵害の成否

被告の著作物であるソフトウェア(本件ソフトウェア)の著作権を原告の各ソフトウェアが侵害しているかどうかについて、裁判所は、著作物性(著作権法2条1項1号)及び複製(2条1項15項、21条)、翻案(27条)の意義に言及した上で、複製又は翻案に当たるかどうかを判断するにあたり、本件ソフトウェアのプログラムの具体的記述における表現上の創作性を有する部分と原告ソフトウェアのプログラムの具体的記述とを対比して、原告ソフトウェアのプログラムの具体的記述から本件ソフトウェアのプログラムの表現上の本質的な特徴を直接感得することができるかどうかを検討しています(27頁以下)。
被告は、ソースコードの表現の類似性を主張しましたが、
1.表現上の工夫は本件ソフトウェアの機能を述べるものにすぎず、アイデアにすぎない
2.創作性がある部分で表現が一致しているとはいえない
3.共通する箇所は文法上一般的に使用される表現でありふれている
といった点から、そもそも創作性がない部分の記述である、あるいは表現上の本質的な特徴を直接感得できないとして、被告の主張を認めていません。
結論として、原告が原告ソフトウェアを製造、販売する行為が、被告が保有する本件ソフトウェアのプログラムの著作権(複製権又は翻案権及び譲渡権)の侵害行為に該当するとの被告の主張は理由がなく、被告が原告に対して著作権法112条1項に基づいて原告ソフトウェアの製造、販売の差止請求権を有するものとは認められないと判断されています。

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2 不正競争防止法2条1項7号の不正競争行為の成否

被告は、本件ソフトウェア及び他社との取引事項に関する営業秘密を利用して原告が不正競争行為を行ったと主張しましたが、争点1の通り著作権侵害性が認められず、あるいは秘密管理性を欠くとして、いずれも認められていません(30頁以下)。
結論として、原告の各ソフトウェアの製造、販売について、不正競争防止法2条1項7号の不正競争行為に当たることを理由とする同法3条1項に基づく差止請求権を被告が有しないことが確認されています。

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■コメント

100枚といった大量のDVDなどの光ディスクの複製製作機器をサポートするディスクパブリッシャーソフトを巡って争われた事案です。原告サイトなどを拝見すると、原告のソフトは企業データと連携して盤面印刷まで一元管理することができるソリューションで、企業データの長期保存、バックアップに資する内容のものです。
新製品の展開のためにも先手を取って著作権侵害等の不法行為の不存在確認の訴えを提起されていて、スピード感のある対応で訴訟提起が効果的だったという印象を受ける事案です。