最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
不動産物件表示プログラム事件
東京地裁平成24.11.30平成24(ワ)15034損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官 西村康夫
裁判官 森川さつき
*裁判所サイト公表 2012.12.14
*キーワード:著作物性、複製、一般不法行為論
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■事案
不動産物件表示プログラムの制作請負契約の成否を巡ってプログラムの複製権侵害性などが争点となった事案
原告:ウェブサイト制作業者
被告:不動産会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、15号、10条1項9号、21条、47条の8、民法709条
1 本案前の主張
2 別件乙3の印刷による複製権侵害による不法行為
3 本件各アクセスによる複製権侵害による不法行為
4 一般不法行為(予備的主張)
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■事案の概要
『プログラムの著作物の著作権を有すると主張する原告が,被告に対し,主位的には複製権侵害及びプログラム著作物の著作権侵害とみなされる行為に基づき,予備的には一般不法行為に基づき,原告が被った損害1120万円の一部請求として280万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成21年7月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案』(2頁)
<経緯>
H20 原告が不動産物件表示プログラムを制作
H21 本件プログラムをサーバにアップロード
H21 原告が被告に内容証明書を送付
H21 被告が本件ウェブサイトを閲覧
H21 原告が別件訴訟を提起
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■判決内容
<争点>
1 本案前の主張
原告が被告に対してウェブサイト制作作業等の請負代金の支払いを求めた別件訴訟の1審及び2審の判決が確定して既判力が生じているとして、一事不再理の原則から本件訴えは却下されるべきであると被告は主張しました。
しかし、裁判所は、本件訴訟は当事者を同一にし、事実関係に重なるところがあるとはいえ、著作権侵害(予備的に一般不法行為)に基づき損害賠償金の支払いを求める事案であり、訴訟物も争点も異なるとして一事不再理の原則により不適法であるとはいえないと判断しています(9頁)。
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2 別件乙3の印刷による複製権侵害による不法行為
被告は、別件訴訟での書証としてモニタに表示された画面のスクリーンショットを紙である別紙乙3にプリントアウトして複製しました。原告は、別件乙3の印刷物は原告が著作権を有するプログラムの著作物である本件プログラムを紙に印刷して複製したものであり、複製権侵害に当たると主張しました。
この点について、裁判所は、仮に本件プログラムに原告の創作性(2条1項1号)が認められるとしても、紙である別件乙3に記載されているのは画像であって、その画像からは本件プログラムの創作性のある部分(指令の表現自体、その指令の表現の組合せ、その表現順序からなる部分)を読み取ることはできず、本件プログラムの創作性のある部分が画像に再現されているということはできず、複製(2条1項15号)に当たらないと判断。
別件乙3の印刷による複製権侵害との原告の主張を容れていません(9頁以下)。
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3 本件各アクセスによる複製権侵害による不法行為
原告は、被告が平成21年に3回に亘り、原告の承諾なくブラウザを使って本件プログラムにアクセスし、本件プログラムの複製物を被告のコンピュータの(1)メモリ、(2)CPU、(3)I/O及び(4)ハードディスクに保存したことは複製権侵害であり、また、本件プログラムを使用(入力、演算、出力)したことはみなし侵害であるから、不法行為が成立すると主張しました。
この点について、裁判所は、電子計算機器の情報処理過程で生じる複製の違法性判断に関しては、平成22年1月1日施行の著作権法47条の8(電子計算機における著作物の利用に伴う複製)の趣旨に鑑み、改正前の複製行為については、複製された著作物の内容、複製の態様、複製に至る経緯等を総合的に考慮して判断すべきであると説示。
その上で、複製された著作物の内容がウェブサイトのトップ画面のみであること、複製の態様が一時的なものであること、複製に至る経緯が別件訴訟における訴訟活動との関連がうかがわれること、特段のアクセス制御回避措置が講じられていなかったこと等から、被告による本件各アクセスの際の複製行為をもって違法な行為であると認めることはできないと判断しています(11頁以下)。
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4 一般不法行為(予備的主張)
一般不法行為論(民法709条)について、裁判所は、争点3での認定のように、本件各アクセスの際に一時的に使用された本件プログラムの内容、本件プログラム使用の態様及び利用に至る経緯に照らせば、被告が本件各アクセスの際に本件プログラムの複製物を取得して使用した行為をもって原告の法律上保護された利益を侵害する違法な行為と認めることはできないとして、一般不法行為論に関する予備的主張も認めていません(16頁)。
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■コメント
ウェブサイト制作請負契約の成否については別件訴訟で争われているため、取引の経緯の詳細が不明ですが、違法とまでいえるようなプログラムの利用行為が認められないため、著作権侵害を争点とした損害賠償請求は難しい事案であったと思われます。
不動産物件表示プログラム事件
東京地裁平成24.11.30平成24(ワ)15034損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官 西村康夫
裁判官 森川さつき
*裁判所サイト公表 2012.12.14
*キーワード:著作物性、複製、一般不法行為論
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■事案
不動産物件表示プログラムの制作請負契約の成否を巡ってプログラムの複製権侵害性などが争点となった事案
原告:ウェブサイト制作業者
被告:不動産会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、15号、10条1項9号、21条、47条の8、民法709条
1 本案前の主張
2 別件乙3の印刷による複製権侵害による不法行為
3 本件各アクセスによる複製権侵害による不法行為
4 一般不法行為(予備的主張)
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■事案の概要
『プログラムの著作物の著作権を有すると主張する原告が,被告に対し,主位的には複製権侵害及びプログラム著作物の著作権侵害とみなされる行為に基づき,予備的には一般不法行為に基づき,原告が被った損害1120万円の一部請求として280万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成21年7月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案』(2頁)
<経緯>
H20 原告が不動産物件表示プログラムを制作
H21 本件プログラムをサーバにアップロード
H21 原告が被告に内容証明書を送付
H21 被告が本件ウェブサイトを閲覧
H21 原告が別件訴訟を提起
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■判決内容
<争点>
1 本案前の主張
原告が被告に対してウェブサイト制作作業等の請負代金の支払いを求めた別件訴訟の1審及び2審の判決が確定して既判力が生じているとして、一事不再理の原則から本件訴えは却下されるべきであると被告は主張しました。
しかし、裁判所は、本件訴訟は当事者を同一にし、事実関係に重なるところがあるとはいえ、著作権侵害(予備的に一般不法行為)に基づき損害賠償金の支払いを求める事案であり、訴訟物も争点も異なるとして一事不再理の原則により不適法であるとはいえないと判断しています(9頁)。
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2 別件乙3の印刷による複製権侵害による不法行為
被告は、別件訴訟での書証としてモニタに表示された画面のスクリーンショットを紙である別紙乙3にプリントアウトして複製しました。原告は、別件乙3の印刷物は原告が著作権を有するプログラムの著作物である本件プログラムを紙に印刷して複製したものであり、複製権侵害に当たると主張しました。
この点について、裁判所は、仮に本件プログラムに原告の創作性(2条1項1号)が認められるとしても、紙である別件乙3に記載されているのは画像であって、その画像からは本件プログラムの創作性のある部分(指令の表現自体、その指令の表現の組合せ、その表現順序からなる部分)を読み取ることはできず、本件プログラムの創作性のある部分が画像に再現されているということはできず、複製(2条1項15号)に当たらないと判断。
別件乙3の印刷による複製権侵害との原告の主張を容れていません(9頁以下)。
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3 本件各アクセスによる複製権侵害による不法行為
原告は、被告が平成21年に3回に亘り、原告の承諾なくブラウザを使って本件プログラムにアクセスし、本件プログラムの複製物を被告のコンピュータの(1)メモリ、(2)CPU、(3)I/O及び(4)ハードディスクに保存したことは複製権侵害であり、また、本件プログラムを使用(入力、演算、出力)したことはみなし侵害であるから、不法行為が成立すると主張しました。
この点について、裁判所は、電子計算機器の情報処理過程で生じる複製の違法性判断に関しては、平成22年1月1日施行の著作権法47条の8(電子計算機における著作物の利用に伴う複製)の趣旨に鑑み、改正前の複製行為については、複製された著作物の内容、複製の態様、複製に至る経緯等を総合的に考慮して判断すべきであると説示。
その上で、複製された著作物の内容がウェブサイトのトップ画面のみであること、複製の態様が一時的なものであること、複製に至る経緯が別件訴訟における訴訟活動との関連がうかがわれること、特段のアクセス制御回避措置が講じられていなかったこと等から、被告による本件各アクセスの際の複製行為をもって違法な行為であると認めることはできないと判断しています(11頁以下)。
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4 一般不法行為(予備的主張)
一般不法行為論(民法709条)について、裁判所は、争点3での認定のように、本件各アクセスの際に一時的に使用された本件プログラムの内容、本件プログラム使用の態様及び利用に至る経緯に照らせば、被告が本件各アクセスの際に本件プログラムの複製物を取得して使用した行為をもって原告の法律上保護された利益を侵害する違法な行為と認めることはできないとして、一般不法行為論に関する予備的主張も認めていません(16頁)。
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■コメント
ウェブサイト制作請負契約の成否については別件訴訟で争われているため、取引の経緯の詳細が不明ですが、違法とまでいえるようなプログラムの利用行為が認められないため、著作権侵害を争点とした損害賠償請求は難しい事案であったと思われます。