最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
漫画「子連れ狼」パチンコ遊技機ライセンス事件
東京地裁平成24.7.19平成23(ワ)35541許諾料返還請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 高野輝久
裁判官 三井大有
裁判官 志賀 勝
*裁判所サイト公表 2012.7.25
*キーワード:マンガ、ライセンス契約、複製、翻案、キャラクター、解除、債務不履行、相殺
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■事案
パチンコ遊技機向け漫画原作の著作権処理がされていなかったことによりライセンス契約が解除された事案
原告:パチンコメーカー
被告:版権管理会社
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■結論
請求認容
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■争点
条文 著作権法21条、27条、民法540条
1 被告の有する漫画「桃太郎侍」の独占的商品化権侵害に係る損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁
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■事案の概要
『パチンコ遊技機等の開発,製造,販売に利用するための漫画・劇画(以下「プロパティ」という。)のライセンス契約4件を被告と締結した原告が,被告に対し,被告はライセンス対象のプロパティの利用を原告に許諾する全ての権原を有する旨保証しながら,これを有していなかったため,(1)うち3件のライセンス契約については,これを催告の上解除したと主張して,解除に基づく原状回復として,支払済みの許諾料合計1億5200万円及びこれに対する返還期限の翌日である平成22年6月12日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求め,(2)その余のライセンス契約1件については,原告が別途プロパティの利用許諾料の支出を余儀なくされて同額の損害を被ったと主張して,債務不履行に基づく損害賠償として,1400万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年11月10日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。被告は,被告の有する漫画「桃太郎侍」の独占的商品化権侵害に係る損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁を主張して,原告の請求を争っている』事案(2頁)
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■判決内容
<争点>
1 被告の有する漫画「桃太郎侍」の独占的商品化権侵害に係る損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁
原告は、パチンコ、パチスロ遊技機の開発、製造、販売に利用するために「修羅雪姫」、「子連れ狼」、「花平バズーカ」、「弐十手物語」の各漫画原作について被告とライセンス契約を締結し被告から利用許諾を得たものの、被告が著作権者から利用許諾を受けることができなかったことから、契約を解除、許諾料の返還請求をするなどしました。
これに対して、被告は、被告が保有する漫画「桃太郎侍」の独占的商品化権について、原告が被告の許諾を得ることなくパチンコ遊技機「CR桃太郎侍」に当該漫画を使用しているとして独占的商品化権侵害に基づく損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁を主張しました(7頁以下)。
この点について、裁判所は、
『(被告が主張する)権利ないし利益の内容を含めて,その趣旨が判然としないが,これをもって,本件パチンコ遊技機の液晶画面の表示等が,本件小説の二次的著作物である本件漫画の著作権,特に複製権・翻案権を侵害しているという趣旨であると善解することができるとしても,被告は,本件パチンコ遊技機の液晶画面の表示等が本件漫画に依拠したものであることについて何ら具体的な主張立証をしないばかりか,本件漫画の表現と上記表示における表現とが完全に違っていることを自認しているから,本件パチンコ遊技機を製造販売することが本件漫画の複製権・翻案権を侵害するとは認められない。』
『また,被告は,本件漫画に登場する「桃太郎侍」などのいわゆるキャラクターが著作物であるかのような主張もするが,本件漫画を離れ,キャラクター自体を著作物と認めることはできないというべきであるから(最高裁平成9年7月17日第一小法廷判決・民集51巻6号2714頁参照),被告の上記主張は失当というほかない。』
として被告の主張を容れず、原告の被告に対する不法行為は成立せず自働債権の発生を認めることができないとして、被告の相殺の抗弁を認めていません。
結論として、請求全部認容となっています。
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■コメント
仲介する著作権管理会社が著作権者から許諾を得られなかったことが原因でメーカーとの間のパチンコ台への漫画作品の二次利用契約が解除された事案ですが、版権元となる漫画家さんご自身の契約関係がもともと錯綜している場合、魅力的な作品ではあるものの、その取扱いについてはリスクの高い契約になります。
P台メーカーさんも執行役員レベルが著作権者に直接会うなどして細心の注意を払っておいでかとは思いますが、避けて通れないリスクなのかもしれません。
漫画「子連れ狼」パチンコ遊技機ライセンス事件
東京地裁平成24.7.19平成23(ワ)35541許諾料返還請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 高野輝久
裁判官 三井大有
裁判官 志賀 勝
*裁判所サイト公表 2012.7.25
*キーワード:マンガ、ライセンス契約、複製、翻案、キャラクター、解除、債務不履行、相殺
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■事案
パチンコ遊技機向け漫画原作の著作権処理がされていなかったことによりライセンス契約が解除された事案
原告:パチンコメーカー
被告:版権管理会社
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■結論
請求認容
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■争点
条文 著作権法21条、27条、民法540条
1 被告の有する漫画「桃太郎侍」の独占的商品化権侵害に係る損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁
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■事案の概要
『パチンコ遊技機等の開発,製造,販売に利用するための漫画・劇画(以下「プロパティ」という。)のライセンス契約4件を被告と締結した原告が,被告に対し,被告はライセンス対象のプロパティの利用を原告に許諾する全ての権原を有する旨保証しながら,これを有していなかったため,(1)うち3件のライセンス契約については,これを催告の上解除したと主張して,解除に基づく原状回復として,支払済みの許諾料合計1億5200万円及びこれに対する返還期限の翌日である平成22年6月12日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求め,(2)その余のライセンス契約1件については,原告が別途プロパティの利用許諾料の支出を余儀なくされて同額の損害を被ったと主張して,債務不履行に基づく損害賠償として,1400万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年11月10日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。被告は,被告の有する漫画「桃太郎侍」の独占的商品化権侵害に係る損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁を主張して,原告の請求を争っている』事案(2頁)
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■判決内容
<争点>
1 被告の有する漫画「桃太郎侍」の独占的商品化権侵害に係る損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁
原告は、パチンコ、パチスロ遊技機の開発、製造、販売に利用するために「修羅雪姫」、「子連れ狼」、「花平バズーカ」、「弐十手物語」の各漫画原作について被告とライセンス契約を締結し被告から利用許諾を得たものの、被告が著作権者から利用許諾を受けることができなかったことから、契約を解除、許諾料の返還請求をするなどしました。
これに対して、被告は、被告が保有する漫画「桃太郎侍」の独占的商品化権について、原告が被告の許諾を得ることなくパチンコ遊技機「CR桃太郎侍」に当該漫画を使用しているとして独占的商品化権侵害に基づく損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁を主張しました(7頁以下)。
この点について、裁判所は、
『(被告が主張する)権利ないし利益の内容を含めて,その趣旨が判然としないが,これをもって,本件パチンコ遊技機の液晶画面の表示等が,本件小説の二次的著作物である本件漫画の著作権,特に複製権・翻案権を侵害しているという趣旨であると善解することができるとしても,被告は,本件パチンコ遊技機の液晶画面の表示等が本件漫画に依拠したものであることについて何ら具体的な主張立証をしないばかりか,本件漫画の表現と上記表示における表現とが完全に違っていることを自認しているから,本件パチンコ遊技機を製造販売することが本件漫画の複製権・翻案権を侵害するとは認められない。』
『また,被告は,本件漫画に登場する「桃太郎侍」などのいわゆるキャラクターが著作物であるかのような主張もするが,本件漫画を離れ,キャラクター自体を著作物と認めることはできないというべきであるから(最高裁平成9年7月17日第一小法廷判決・民集51巻6号2714頁参照),被告の上記主張は失当というほかない。』
として被告の主張を容れず、原告の被告に対する不法行為は成立せず自働債権の発生を認めることができないとして、被告の相殺の抗弁を認めていません。
結論として、請求全部認容となっています。
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■コメント
仲介する著作権管理会社が著作権者から許諾を得られなかったことが原因でメーカーとの間のパチンコ台への漫画作品の二次利用契約が解除された事案ですが、版権元となる漫画家さんご自身の契約関係がもともと錯綜している場合、魅力的な作品ではあるものの、その取扱いについてはリスクの高い契約になります。
P台メーカーさんも執行役員レベルが著作権者に直接会うなどして細心の注意を払っておいでかとは思いますが、避けて通れないリスクなのかもしれません。