最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「暁の脱走」格安DVD事件(対東宝)差戻審
知財高裁平成24.5.9平成24(ネ)10013著作権侵害差止等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官 高部眞規子
裁判官 齋藤 巌
*裁判所サイト公表 2012.5.17
*キーワード:黙示の譲渡、過失、損害論
--------------------
■事案
「暁の脱走」「また逢う日まで」「おかあさん」映画作品の利用を巡り、格安DVD製造販売会社の損害賠償責任が争われた事案の差戻審
控訴人(1審被告) :格安DVD製造販売会社
被控訴人(1審原告):東宝株式会社
--------------------
■結論
控訴棄却
--------------------
■争点
条文 著作権法114条3項
1 1審原告の著作権
2 1審被告の損害賠償責任
3 1審原告の損害額
--------------------
■事案の概要
『1 本件は,被控訴人(以下「1審原告」という。)が,控訴人(以下「1審被告」という。)に対し,1審被告が原判決別紙被告商品目録記載の各商品(以下「本件商品」という。)を輸入し,頒布する行為について,別紙映画目録記載の各映画(以下,順に「本件映画1」などといい,本件映画1ないし3を「本件各映画」という。)の著作権を侵害すると主張して,(1)著作権法112条に基づき,本件商品の製造,輸入及び頒布の差止め並びに本件商品及びその原版の廃棄を求めるとともに,(2)民法709条,著作権法114条3項に基づき,損害賠償金1350万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年5月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2 訴訟の経過
(1)第1審は,上記1(1)の請求を認容し,上記1(2)のうち,108万円及びこれに対する平成20年5月21日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度でこれを認容し,その余を棄却する旨の判決を言い渡した(東京地方裁判所平成20年(ワ)第11220号)。
(2)1審被告がこれを不服として控訴したところ,差戻前控訴審は,上記1(1)に係る控訴を棄却し,上記1(2)については,1審被告に過失がないとして第1審判決を取り消し,上記部分に係る1審原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡した(知的財産高等裁判所平成21年(ネ)第10050号)。
(3)1審原告がこれを不服として上告受理を申し立てたところ,最高裁判所は,上告を受理した上,1審被告の上記行為について,1審被告が本件各映画の著作権の存続期間が満了したと誤信していたとしても,1審被告に少なくとも過失があったというほかはないとして,上記1(2)に係る部分を破棄し,知的財産高等裁判所に差し戻す旨の判決を言い渡した( 最高裁判所平成22年(受)第1884号)。
(4)1審被告は,上記(2)の差戻前控訴審判決に対し上告又は上告受理申立てをしておらず,上記1(1)に係る部分は,上記(3)の最高裁判決の言渡しとともに確定したから,差戻審である当審の審理の対象は,上記1(2)に係る部分(ただし,上記(1)の第1審判決が認容した金額が不服の限度)である。そして,上記(3)の最高裁判決は,本件商品を輸入し,頒布する1審被告の上記行為について,1審被告に少なくとも過失があったことを破棄の理由としているから,その旨の判断は当審を拘束する(民事訴訟法325条3項)。』(1頁以下)
--------------------
■判決内容
<争点>
1 1審原告の著作権
本件各映画の著作権の帰属については、1審原告である被控訴人が単独で有していると判断されています(7頁以下)
--------------------
2 1審被告の損害賠償責任
1審被告が本件各映画を複製した本件商品を輸入し、頒布する行為について、1審原告の著作権を侵害するものとみなされ(著作権法113条1項3号)、1審被告に少なくとも過失があったというべきであるとして、1審原告に当該著作権の使用料相当額の損害が生じており、1審被告は1審原告に対して著作権侵害による損害賠償を支払うべきであると判断されています(11頁)。
--------------------
3 1審原告の損害額
DVD1本当たりの小売価格1800円×使用料率20%×輸入数3000本=108万円
本件各映画の使用料相当額を上記計算式で算定の上、1審原告の損害相当額と認定されています(11頁以下)。
--------------------
■コメント
同一業者に対する別件訴訟は、損害賠償請求を内容とする訴訟では、被告の過失が認定され損害賠償が認められていました。
差戻前控訴審となる知財高裁第1部(塚原裁判長)の判断だけが同種案件で唯一、過失否定の判断となっていましたが、今回の控訴審は、上告審の過失肯定、破棄差戻しを受けての判断となります。
結論としては、損害額について1審と同額となっています。
【損害賠償を内容とする訴訟の結果】
チャップリン「モダンタイムス」事件
東京地裁平成19.8.29平成18(ワ)15552 過失肯定
知財高裁平成20.2.28平成19(ネ)10073 原審維持
最高裁平成20.10.8平成20(受)889
黒澤明監督作品格安DVD事件(対松竹)(損害賠償請求附帯控訴)
知財高裁平成21.1.29平成20(ネ)10025等 過失肯定
黒澤明監督作品格安DVD事件(対角川)
東京地裁平成21.4.27平成20(ワ)6848 過失肯定
知財高裁平成21.9.15平成21(ネ)10042 原審維持
格安DVD事件(対東宝)
「暁の脱走」(谷口千吉監督)「また逢う日まで」(今井正監督)
「おかあさん」(成瀬巳喜男監督)
東京地裁平成21.6.17平成20(ワ)11220 過失肯定
知財高裁平成22.6.17平成21(ネ)10050 過失否定
最高裁平成24.1.17平成22(受)1884 過失肯定
知財高裁平成24.5.9平成24(ネ)10013 (本件)
「姿三四郎」(黒澤明監督)格安DVD事件(対東宝 損害賠償)事件
東京地裁平成21.7.31平成20(ワ)6849 過失肯定
--------------------
■過去のブログ記事
2012.1.23記事 上告審
2010.6.28記事 差戻前控訴審
2009.7.21記事 一審
「暁の脱走」格安DVD事件(対東宝)差戻審
知財高裁平成24.5.9平成24(ネ)10013著作権侵害差止等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官 高部眞規子
裁判官 齋藤 巌
*裁判所サイト公表 2012.5.17
*キーワード:黙示の譲渡、過失、損害論
--------------------
■事案
「暁の脱走」「また逢う日まで」「おかあさん」映画作品の利用を巡り、格安DVD製造販売会社の損害賠償責任が争われた事案の差戻審
控訴人(1審被告) :格安DVD製造販売会社
被控訴人(1審原告):東宝株式会社
--------------------
■結論
控訴棄却
--------------------
■争点
条文 著作権法114条3項
1 1審原告の著作権
2 1審被告の損害賠償責任
3 1審原告の損害額
--------------------
■事案の概要
『1 本件は,被控訴人(以下「1審原告」という。)が,控訴人(以下「1審被告」という。)に対し,1審被告が原判決別紙被告商品目録記載の各商品(以下「本件商品」という。)を輸入し,頒布する行為について,別紙映画目録記載の各映画(以下,順に「本件映画1」などといい,本件映画1ないし3を「本件各映画」という。)の著作権を侵害すると主張して,(1)著作権法112条に基づき,本件商品の製造,輸入及び頒布の差止め並びに本件商品及びその原版の廃棄を求めるとともに,(2)民法709条,著作権法114条3項に基づき,損害賠償金1350万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年5月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2 訴訟の経過
(1)第1審は,上記1(1)の請求を認容し,上記1(2)のうち,108万円及びこれに対する平成20年5月21日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度でこれを認容し,その余を棄却する旨の判決を言い渡した(東京地方裁判所平成20年(ワ)第11220号)。
(2)1審被告がこれを不服として控訴したところ,差戻前控訴審は,上記1(1)に係る控訴を棄却し,上記1(2)については,1審被告に過失がないとして第1審判決を取り消し,上記部分に係る1審原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡した(知的財産高等裁判所平成21年(ネ)第10050号)。
(3)1審原告がこれを不服として上告受理を申し立てたところ,最高裁判所は,上告を受理した上,1審被告の上記行為について,1審被告が本件各映画の著作権の存続期間が満了したと誤信していたとしても,1審被告に少なくとも過失があったというほかはないとして,上記1(2)に係る部分を破棄し,知的財産高等裁判所に差し戻す旨の判決を言い渡した( 最高裁判所平成22年(受)第1884号)。
(4)1審被告は,上記(2)の差戻前控訴審判決に対し上告又は上告受理申立てをしておらず,上記1(1)に係る部分は,上記(3)の最高裁判決の言渡しとともに確定したから,差戻審である当審の審理の対象は,上記1(2)に係る部分(ただし,上記(1)の第1審判決が認容した金額が不服の限度)である。そして,上記(3)の最高裁判決は,本件商品を輸入し,頒布する1審被告の上記行為について,1審被告に少なくとも過失があったことを破棄の理由としているから,その旨の判断は当審を拘束する(民事訴訟法325条3項)。』(1頁以下)
--------------------
■判決内容
<争点>
1 1審原告の著作権
本件各映画の著作権の帰属については、1審原告である被控訴人が単独で有していると判断されています(7頁以下)
--------------------
2 1審被告の損害賠償責任
1審被告が本件各映画を複製した本件商品を輸入し、頒布する行為について、1審原告の著作権を侵害するものとみなされ(著作権法113条1項3号)、1審被告に少なくとも過失があったというべきであるとして、1審原告に当該著作権の使用料相当額の損害が生じており、1審被告は1審原告に対して著作権侵害による損害賠償を支払うべきであると判断されています(11頁)。
--------------------
3 1審原告の損害額
DVD1本当たりの小売価格1800円×使用料率20%×輸入数3000本=108万円
本件各映画の使用料相当額を上記計算式で算定の上、1審原告の損害相当額と認定されています(11頁以下)。
--------------------
■コメント
同一業者に対する別件訴訟は、損害賠償請求を内容とする訴訟では、被告の過失が認定され損害賠償が認められていました。
差戻前控訴審となる知財高裁第1部(塚原裁判長)の判断だけが同種案件で唯一、過失否定の判断となっていましたが、今回の控訴審は、上告審の過失肯定、破棄差戻しを受けての判断となります。
結論としては、損害額について1審と同額となっています。
【損害賠償を内容とする訴訟の結果】
チャップリン「モダンタイムス」事件
東京地裁平成19.8.29平成18(ワ)15552 過失肯定
知財高裁平成20.2.28平成19(ネ)10073 原審維持
最高裁平成20.10.8平成20(受)889
黒澤明監督作品格安DVD事件(対松竹)(損害賠償請求附帯控訴)
知財高裁平成21.1.29平成20(ネ)10025等 過失肯定
黒澤明監督作品格安DVD事件(対角川)
東京地裁平成21.4.27平成20(ワ)6848 過失肯定
知財高裁平成21.9.15平成21(ネ)10042 原審維持
格安DVD事件(対東宝)
「暁の脱走」(谷口千吉監督)「また逢う日まで」(今井正監督)
「おかあさん」(成瀬巳喜男監督)
東京地裁平成21.6.17平成20(ワ)11220 過失肯定
知財高裁平成22.6.17平成21(ネ)10050 過失否定
最高裁平成24.1.17平成22(受)1884 過失肯定
知財高裁平成24.5.9平成24(ネ)10013 (本件)
「姿三四郎」(黒澤明監督)格安DVD事件(対東宝 損害賠償)事件
東京地裁平成21.7.31平成20(ワ)6849 過失肯定
--------------------
■過去のブログ記事
2012.1.23記事 上告審
2010.6.28記事 差戻前控訴審
2009.7.21記事 一審