最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

マンモスCT画像3DCG事件(控訴審)

知財高裁平成24.4.25平成23(ネ)10089著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官      高部眞規子
裁判官      齋藤 巌

*裁判所サイト公表 2012.05.17
*キーワード:著作物性、著作者、複製権、譲渡権、著作者人格権、同一性保持権、氏名表示権、使用許諾、出版

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■事案

マンモス標本のCT画像を加工した3DCG画像の著作物性、使用許諾の有無などが争点となった事案の控訴審

控訴人 :出版社
被控訴人:研究者

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、19条、20条、21条、26条の2

1 本件各画像の著作物性、被控訴人の著作者性及び著作権の帰属
2 本件各画像の著作権侵害性の成否
3 本件各画像の著作者人格権侵害の成否
4 被控訴人の損害額

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■事案の概要

『1 本件は,控訴人が,原判決別紙1ないし3記載の各画像(控訴人各画像)が掲載された原判決別紙書籍目録記載の書籍(以下「控訴人書籍」という。)を発行及び頒布した行為は,原判決別紙3記載の各画像(本件各画像)に係る被控訴人の著作権(複製権,譲渡権)及び著作者人格権(同一性保持権,氏名表示権)の侵害に当たる旨主張して,(1)著作権法112条1項に基づき,控訴人各画像を削除しない控訴人書籍の発行又は頒布の差止めを,(2)同条2項に基づき,控訴人書籍からの控訴人各画像の削除を求めるとともに,(3)不法行為に基づく損害賠償として,400万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払ずみまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
2 原判決は,控訴人各画像は,いずれも被控訴人の許諾なく本件各画像を複製したものであり,控訴人の上記行為は,被控訴人が本件各画像について有する著作権(複製権,譲渡権)及び著作者人格権(本件各画像についての同一性保持権,本件画像1についての氏名表示権)を侵害した旨判示して,被控訴人の請求のうち,上記(1)(2)をいずれも認容し,上記(3)を50万円及び遅延損害金の支払の限度で認容し,その余の請求を棄却した。そこで,控訴人がこれを不服として控訴した。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 本件各画像の著作物性、被控訴人の著作者性及び著作権の帰属

本件マンモスの頭部について、CT装置(コンピュータ断層撮影装置)による撮影(CT撮影)によって得られた断層像のX線CTデータ(本件CTデータ)を基にして作成された本件画像1と、本件CTデータを3次元画像として再構築したボリュームレンダリング像(本件三次元再構築モデル)を基にして作成された本件画像2の各3DCG画像の著作物性(著作権法2条1項1号)について、裁判所は、「美術的又は学術的観点からの作者の個性が表現されているものということができる」と判断しています(16頁以下)。
また、本件各画像の著作者、著作権者は、被控訴人であると認定されています(18頁以下)。

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2 本件各画像の著作権侵害性の成否

控訴人各画像は、本件各画像に依拠して作成されており、本件各画像を有形的に再製していること、また利用許諾もない、として控訴人が控訴人各画像を掲載した控訴人書籍を発行及び頒布する行為は、本件各画像の著作権(複製権、譲渡権)を侵害すると判断されています(19頁以下)。

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3 本件各画像の著作者人格権侵害の成否

本件各画像をカラー画像から白黒画像などにする改変が著作者の許諾がない中で行われており、著作者の意に反する改変(20条1項)に該当するとして、控訴人各画像を掲載した控訴人書籍を発行する控訴人の行為は、被控訴人が本件各画像について有する同一性保持権の侵害にあたると判断されています(24頁以下)。
また、控訴人書籍の表紙カバーに掲載された控訴人画像3には、本件画像1の著作者である被控訴人の氏名が表示されておらず、この点について氏名表示権(19条3項)侵害にあたると判断されています。

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4 被控訴人の損害額

控訴人による不法行為の成立を認めた上で、著作者人格権侵害による慰謝料として30万円、弁護士費用相当額の損害として20万円の合計50万円が認定されています(26頁以下)。

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■コメント

原審の結論が維持された内容となっています。

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■過去のブログ記事

2011.12.8記事 原審