最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「縁切り・縁結び碑」石碑事件
大阪地裁平成24.4.26平成23(ワ)12933著作権侵害差止請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官 西田昌吾
裁判官 達野ゆき
*裁判所サイト公表 2012.5.8
*キーワード:同一性保持権、題号、展示権、所有権
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■事案
金比羅宮の境内に設置された縁切り祈願の石碑の題号を無断で改変したなどとして、同一性保持権侵害の成否等が争点とされた事案
原告:石碑制作業者
被告:宗教法人
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法20条、25条、45条
1 本件碑の題号は、「断叶の碑」であるか
2 被告は、本件碑の所有権を有するか
3 本件札の題号は、「神札」であるか
4 本件被告札の作成・頒布による同一性保持権侵害の成否
5 被告の行為は原告の名誉、声望を毀損するものであるか
6 原告は、本件印鑑等の所有権を有するか
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■事案の概要
『原告は,被告の行為により本件碑及び本件原告札に関する著作権,著作者人格権を侵害されたとして,被告に対し,(1)本件碑に関する同一性保持権(著作権法20条)に基づき,本件碑の題号として,「縁切り・縁結び碑」の名称を使用することの差止めを,(2)本件碑に関する展示権(同法25条)に基づき,本件碑を展示することの差止めを,(3)本件原告札に関する同一性保持権に基づき,本件札の題号として「形代」の名称を使用することの差止めを,(4)本件原告札に関する同一性保持権に基づき,本件札を頒布することの差止めを,(5)原告の名誉,声望が毀損されたことを理由に,上記(1)ないし(4)の各差止めを,(6)所有権に基づき,本件印鑑等の引渡しを,それぞれ求めている』事案(3頁)
<経緯>
S55 被告が原告に石碑の製作を依頼
H23 被告が原告に紛争解決金として100万円を送金
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■判決内容
<争点>
1 本件碑の題号は、「断叶の碑」であるか
原告は、製作した石碑の題号は、「断叶の碑」であって、被告が無断で「縁切り・縁結びの碑」に改変したとして、同一性保持権侵害を理由に本件碑の題号として「縁切り・縁結びの碑」の名称を使用することの差止めを主張しました。
しかし、裁判所は、本件碑の題号が「断叶の碑」であるとの証拠がないとしてこれを認めていません(8頁以下)。
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2 被告は、本件碑の所有権を有するか
原告は、本件碑の展示権(25条)に基づき本件碑の展示の差止めを主張しましたが、裁判所は、本件碑の所有権は被告に帰属するとして、所有者による展示あるいは経緯などから原告の許諾があったとして(45条1項)、原告の主張を認めていません(9頁以下)。
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3 本件札の題号は、「神札」であるか
原告製作による御幣(幣束)を描いた護符である本件札の題号について、原告は題号は「神札」であって、被告が無断で「形代」に改変したとして、同一性保持権侵害を理由に本件札の題号として「形代」の名称を使用することの差止めも主張しました。
しかし、裁判所は、本件札の題号が「神札」であることを裏付ける証拠が全くなく、また「神札」は一般名称であるとして、原告の主張を認めていません(10頁以下)。
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4 本件被告札の作成・頒布による同一性保持権侵害の成否
本件札の御幣の重なりが、本来、向かって右重ね(左前)であるに、それを被告が左重ね(右前)に改変して頒布しているとして原告は本件札の頒布の差止めを求めましたが、裁判所は、本件札の表現の実質的同一性が損なわれているとはいえないこと、また差止めの必要もないとして、原告の主張を認めていません(11頁以下)。
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5 被告の行為は原告の名誉、声望を毀損するものであるか
本件碑の題号として「縁切り・縁結びの碑」の名称を使用すること、本件碑を公に展示すること、本件札の題号として「形代」の名称を使用すること、本件札を頒布すること、といった被告の行為が、原告の名誉、声望を毀損すると原告は主張しましたが、裁判所は認めていません(12頁)。
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6 原告は、本件印鑑等の所有権を有するか
札に押印された印影に係る印鑑の所有権について、裁判所は、製造請負契約に基づき本件印鑑等の引渡しを受けることにより被告が所有権を取得したとして、原告の本件印鑑等の引渡し請求を認めていません(12頁)。
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■コメント
30年前の石碑や護符の製作を巡って争われた事案ですが、発注者である金比羅宮も、紛争解決金として100万円を原告に送金するなどしていて、双方で過去、どのような経緯があったのか、前宮司との約定について本当のところがよく分からない事案です。
30年に亘って契約金を支払っていくという、息の長い契約だったとの原告側のお考えですが、裁判所に契約書の趣旨やその存在を理解させるまでに至りませんでした。
石碑(別紙1)
被告札(別紙2)
■2012.06.26訂正
■追記(2012.11.05)
原告の方が判決の内容を伝えておいでです。
平成24年10月13日記事
安井金比羅宮 著作権侵害差止請求事件について
「縁切り・縁結び碑」石碑事件
大阪地裁平成24.4.26平成23(ワ)12933著作権侵害差止請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官 西田昌吾
裁判官 達野ゆき
*裁判所サイト公表 2012.5.8
*キーワード:同一性保持権、題号、展示権、所有権
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■事案
金比羅宮の境内に設置された縁切り祈願の石碑の題号を無断で改変したなどとして、同一性保持権侵害の成否等が争点とされた事案
原告:石碑制作業者
被告:宗教法人
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法20条、25条、45条
1 本件碑の題号は、「断叶の碑」であるか
2 被告は、本件碑の所有権を有するか
3 本件札の題号は、「神札」であるか
4 本件被告札の作成・頒布による同一性保持権侵害の成否
5 被告の行為は原告の名誉、声望を毀損するものであるか
6 原告は、本件印鑑等の所有権を有するか
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■事案の概要
『原告は,被告の行為により本件碑及び本件原告札に関する著作権,著作者人格権を侵害されたとして,被告に対し,(1)本件碑に関する同一性保持権(著作権法20条)に基づき,本件碑の題号として,「縁切り・縁結び碑」の名称を使用することの差止めを,(2)本件碑に関する展示権(同法25条)に基づき,本件碑を展示することの差止めを,(3)本件原告札に関する同一性保持権に基づき,本件札の題号として「形代」の名称を使用することの差止めを,(4)本件原告札に関する同一性保持権に基づき,本件札を頒布することの差止めを,(5)原告の名誉,声望が毀損されたことを理由に,上記(1)ないし(4)の各差止めを,(6)所有権に基づき,本件印鑑等の引渡しを,それぞれ求めている』事案(3頁)
<経緯>
S55 被告が原告に石碑の製作を依頼
H23 被告が原告に紛争解決金として100万円を送金
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■判決内容
<争点>
1 本件碑の題号は、「断叶の碑」であるか
原告は、製作した石碑の題号は、「断叶の碑」であって、被告が無断で「縁切り・縁結びの碑」に改変したとして、同一性保持権侵害を理由に本件碑の題号として「縁切り・縁結びの碑」の名称を使用することの差止めを主張しました。
しかし、裁判所は、本件碑の題号が「断叶の碑」であるとの証拠がないとしてこれを認めていません(8頁以下)。
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2 被告は、本件碑の所有権を有するか
原告は、本件碑の展示権(25条)に基づき本件碑の展示の差止めを主張しましたが、裁判所は、本件碑の所有権は被告に帰属するとして、所有者による展示あるいは経緯などから原告の許諾があったとして(45条1項)、原告の主張を認めていません(9頁以下)。
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3 本件札の題号は、「神札」であるか
原告製作による御幣(幣束)を描いた護符である本件札の題号について、原告は題号は「神札」であって、被告が無断で「形代」に改変したとして、同一性保持権侵害を理由に本件札の題号として「形代」の名称を使用することの差止めも主張しました。
しかし、裁判所は、本件札の題号が「神札」であることを裏付ける証拠が全くなく、また「神札」は一般名称であるとして、原告の主張を認めていません(10頁以下)。
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4 本件被告札の作成・頒布による同一性保持権侵害の成否
本件札の御幣の重なりが、本来、向かって右重ね(左前)であるに、それを被告が左重ね(右前)に改変して頒布しているとして原告は本件札の頒布の差止めを求めましたが、裁判所は、本件札の表現の実質的同一性が損なわれているとはいえないこと、また差止めの必要もないとして、原告の主張を認めていません(11頁以下)。
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5 被告の行為は原告の名誉、声望を毀損するものであるか
本件碑の題号として「縁切り・縁結びの碑」の名称を使用すること、本件碑を公に展示すること、本件札の題号として「形代」の名称を使用すること、本件札を頒布すること、といった被告の行為が、原告の名誉、声望を毀損すると原告は主張しましたが、裁判所は認めていません(12頁)。
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6 原告は、本件印鑑等の所有権を有するか
札に押印された印影に係る印鑑の所有権について、裁判所は、製造請負契約に基づき本件印鑑等の引渡しを受けることにより被告が所有権を取得したとして、原告の本件印鑑等の引渡し請求を認めていません(12頁)。
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■コメント
30年前の石碑や護符の製作を巡って争われた事案ですが、発注者である金比羅宮も、紛争解決金として100万円を原告に送金するなどしていて、双方で過去、どのような経緯があったのか、前宮司との約定について本当のところがよく分からない事案です。
30年に亘って契約金を支払っていくという、息の長い契約だったとの原告側のお考えですが、裁判所に契約書の趣旨やその存在を理解させるまでに至りませんでした。
石碑(別紙1)
被告札(別紙2)
■2012.06.26訂正
■追記(2012.11.05)
原告の方が判決の内容を伝えておいでです。
平成24年10月13日記事
安井金比羅宮 著作権侵害差止請求事件について