最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

女性用ボレロ編み物編み図事件(控訴審)

知財高裁平成24.4.25平成24(ネ)10004損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 塩月秀平
裁判官      真辺朋子
裁判官      田邉 実

*裁判所サイト公表 2012.4.27
*キーワード:著作物性、アイデア

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■事案

女性用ボレロの毛糸編み物や編み図の著作物性が争点となった事案の控訴審

控訴人 (一審原告):手編み物作家
被控訴人(一審被告):毛糸等繊維会社、編物教室主宰者

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号

1 原告編み物及び原告編み図の著作物性

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■事案の概要

『 控訴人は,原判決別紙原告作品目録記載1及び2の原告編み物,同目録記載3及び4の原告編み図の制作者である。被控訴人Yは被控訴人会社に原判決別紙被告作品目録記載1の被告編み物及び同目録記載2の被告編み図を納入し,被控訴人会社は被告編み物を下請業者に製作させて展示,販売し,被告編み物を写真撮影して雑誌等に掲載して使用し,かつ,被告編み図を複製して顧客や販売店等に頒布するなどした。
 控訴人は,被告編み物及び編み図は原告編み物又は原告編み図を複製,翻案したものであり,被控訴人会社撮影に係る原判決別紙被告作品目録記載3の写真は原告編み物又は原告編み図を翻案したものであり,被告編み物及び被告編み図の展示は展示権を侵害するなどと主張し,被告編み物,被告編み図及び上記写真の展示,販売,販売の申出の差止め,侵害品の廃棄を求めるとともに,被控訴人らは,故意又は過失により,共同して上記各行為に及んだものであるとして,著作権及び著作者人格権侵害の共同不法行為責任に基づき,損害賠償金合計660万円及び遅延損害金の連帯支払を求め,さらに,著作権法115条に基づき,謝罪広告の掲載を求めた。
 原審は,原告編み物及び原告編み図に著作物性を認めることはできないとして,原告の請求をいずれも棄却した。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 原告編み物及び原告編み図の著作物性

手編みによって作成された女性用のベストである原告編み物及びその編み図の著作物性(著作権法2条1項1号)について、控訴審においても、『「形の最小単位は直角三角形であり,この三角形二つの各最大辺を線対称的に合わせて四角形を構成し,この四角形五つを円環的につなげた形二つをさらにつなげた形」と表現される原判決最末尾別紙図面記載の構成は,表現ではなく,そのような構成を有する衣服を作成する抽象的な構想又はアイデアにとどまるものと解されるから,上記構成を根拠として原告編み物に著作物性を認めることはできず,原告編み図についても著作物性を認めることはできない』(5頁以下)と判断されています。

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■コメント

毛糸編み物とその編み図の著作物性について、原審の判断が維持されていて、控訴審でも否定されました。
なお、原審が「念のため」検討した本件構成を含む編み図全体(各2枚目)の美術の著作物性あるいは図面の著作物性については、控訴審は判断していません。

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■過去のブログ記事

2012年1月30日記事 原審