最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
幼児教育教材絵本事件
東京地裁平成24.3.29平成23(ワ)8228出版差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 山門 優
裁判官 志賀 勝
*裁判所サイト公表 2012.04.12
*キーワード:黙示的譲渡、買取り、出版、挿絵、増刷
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■事案
幼児教育教材絵本の挿絵として使用された原画の著作権の帰属が争点となった事案
原告:画家ら
被告:教育教材等製造販売会社
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法21条、112条1項、114条3項
1 被告は原告らから本件原画の著作権を譲渡されたか
2 原告らの損害
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■事案の概要
『原告らは,いずれも画家であり,被告が平成17年に発行した別紙第1書籍目録記載の書籍(以下「本件第1書籍」という。)の挿絵に用いられている別紙第1著作物目録記載の絵画(以下「本件第1原画」という。),及び,被告が平成20年に発行した別紙第2書籍目録記載の書籍(以下「本件第2書籍」といい,本件第1書籍と併せて「本件書籍」という。)の挿絵に用いられている別紙第2著作物目録記載の絵画(以下「本件第2原画」といい,本件第1原画と併せて「本件原画」という。)の著作者である。
本件は,原告らが,(1)被告は,原告らに無断で本件第1書籍を増刷し,増刷した書籍を販売しており,本件第1原画に係る原告らの著作権(複製権及び譲渡権)を侵害している,(2)上記のような被告の態度に照らすと,被告は,本件第2書籍についても,今後,原告らに無断でこれを増刷し,本件第2原画に係る原告らの著作権(複製権)を侵害するおそれがある,と主張して,被告に対し,著作権(複製権ないし譲渡権)に基づき,本件第1書籍の印刷,出版,販売又は頒布の差止め及び本件第2書籍の印刷,出版の差止め(著作権法112条1項)を求めるとともに,不法行為に基づく損害賠償として,前記「第1 請求」記載の金員の支払を求める事案である。』(5頁)
<経緯>
H16.11 原被告らが絵本出版企画会合開催
H17 被告が幼児向け教育絵本を1万部出版
H19 原告の一部が原画を再制作
H20.04 第1書籍の増刷
H22.03 原告が増刷を認識、被告に禁止通告
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■判決内容
<争点>
1 被告は原告らから本件原画の著作権を譲渡されたか
幼児向け教育教材絵本のために制作された原告らの挿絵原画について、被告は、本件原画の引渡しを受けた際、原告らから本件原画の著作権及び同原画の所有権を黙示的に譲受けたものであり、原告らは、本件書籍の増刷について被告の随意に委ねていた、また、本件画料は、譲渡の対価として被告から原告に支払われたものであると主張しました(13頁以下)。
しかし、裁判所は、増刷に至る経緯を検討した上で、原告らが被告に対して原画の著作権を黙示的に譲渡したと認めることはできないと判断。本件第1原画の著作権者である原告らの許諾を得ることなく本件第1書籍を増刷し、これを販売したことは、原告らの著作権(複製権及び譲渡権)を侵害するものであるとして、結論として第1書籍の印刷、出版、販売、頒布の差止め、第2書籍の印刷又は出版の差止めが認められています。
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2 原告らの損害
裁判所は被告の過失を認めた上で、第1書籍が合計26万9000冊増刷されていることを前提に、本件第1原画の制作に至るまでの経緯、石井式漢字教育における絵本(漢字仮名交じり絵本)の役割(絵本の文章部分の重要性)、本件第1書籍の販売価格(430円)、本件第1書籍における本件第1原画の重要性、本件画料には原画の制作料の意味合いも含まれているとうかがえること等の事情を総合的に考慮して、1冊あたりの著作権料相当額を30円として、原告14名の複製権侵害についての損害額を算定しています。また、弁護士費用についても、その損害額の1割に相当するものとして算定しています。
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■コメント
絵本向けの原画制作発注の際の著作者と発注元との間で著作権の取り扱いや書籍増刷の際の取り決めがないまま、増刷などが重ねられてしまった結果、紛争が生じた事案となります。社内に出版に詳しい人材がいなくて、外部の出版エージェントを介したものの、権利処理をしっかりしなかったという内容です。
被告サイト(後掲)を拝見すると、幼児の漢字教育のために絵本に「本物の美術作品の手触りを感じてもらえるような原画」を使用しているということで、原画が単なる挿絵ではなく、書籍において重要な地位を占めるものであることが分かります。
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■参考サイト
被告サイト:石井式の幼児教育『石井式国語教育研究会』
幼児教育教材絵本事件
東京地裁平成24.3.29平成23(ワ)8228出版差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 山門 優
裁判官 志賀 勝
*裁判所サイト公表 2012.04.12
*キーワード:黙示的譲渡、買取り、出版、挿絵、増刷
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■事案
幼児教育教材絵本の挿絵として使用された原画の著作権の帰属が争点となった事案
原告:画家ら
被告:教育教材等製造販売会社
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法21条、112条1項、114条3項
1 被告は原告らから本件原画の著作権を譲渡されたか
2 原告らの損害
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■事案の概要
『原告らは,いずれも画家であり,被告が平成17年に発行した別紙第1書籍目録記載の書籍(以下「本件第1書籍」という。)の挿絵に用いられている別紙第1著作物目録記載の絵画(以下「本件第1原画」という。),及び,被告が平成20年に発行した別紙第2書籍目録記載の書籍(以下「本件第2書籍」といい,本件第1書籍と併せて「本件書籍」という。)の挿絵に用いられている別紙第2著作物目録記載の絵画(以下「本件第2原画」といい,本件第1原画と併せて「本件原画」という。)の著作者である。
本件は,原告らが,(1)被告は,原告らに無断で本件第1書籍を増刷し,増刷した書籍を販売しており,本件第1原画に係る原告らの著作権(複製権及び譲渡権)を侵害している,(2)上記のような被告の態度に照らすと,被告は,本件第2書籍についても,今後,原告らに無断でこれを増刷し,本件第2原画に係る原告らの著作権(複製権)を侵害するおそれがある,と主張して,被告に対し,著作権(複製権ないし譲渡権)に基づき,本件第1書籍の印刷,出版,販売又は頒布の差止め及び本件第2書籍の印刷,出版の差止め(著作権法112条1項)を求めるとともに,不法行為に基づく損害賠償として,前記「第1 請求」記載の金員の支払を求める事案である。』(5頁)
<経緯>
H16.11 原被告らが絵本出版企画会合開催
H17 被告が幼児向け教育絵本を1万部出版
H19 原告の一部が原画を再制作
H20.04 第1書籍の増刷
H22.03 原告が増刷を認識、被告に禁止通告
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■判決内容
<争点>
1 被告は原告らから本件原画の著作権を譲渡されたか
幼児向け教育教材絵本のために制作された原告らの挿絵原画について、被告は、本件原画の引渡しを受けた際、原告らから本件原画の著作権及び同原画の所有権を黙示的に譲受けたものであり、原告らは、本件書籍の増刷について被告の随意に委ねていた、また、本件画料は、譲渡の対価として被告から原告に支払われたものであると主張しました(13頁以下)。
しかし、裁判所は、増刷に至る経緯を検討した上で、原告らが被告に対して原画の著作権を黙示的に譲渡したと認めることはできないと判断。本件第1原画の著作権者である原告らの許諾を得ることなく本件第1書籍を増刷し、これを販売したことは、原告らの著作権(複製権及び譲渡権)を侵害するものであるとして、結論として第1書籍の印刷、出版、販売、頒布の差止め、第2書籍の印刷又は出版の差止めが認められています。
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2 原告らの損害
裁判所は被告の過失を認めた上で、第1書籍が合計26万9000冊増刷されていることを前提に、本件第1原画の制作に至るまでの経緯、石井式漢字教育における絵本(漢字仮名交じり絵本)の役割(絵本の文章部分の重要性)、本件第1書籍の販売価格(430円)、本件第1書籍における本件第1原画の重要性、本件画料には原画の制作料の意味合いも含まれているとうかがえること等の事情を総合的に考慮して、1冊あたりの著作権料相当額を30円として、原告14名の複製権侵害についての損害額を算定しています。また、弁護士費用についても、その損害額の1割に相当するものとして算定しています。
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■コメント
絵本向けの原画制作発注の際の著作者と発注元との間で著作権の取り扱いや書籍増刷の際の取り決めがないまま、増刷などが重ねられてしまった結果、紛争が生じた事案となります。社内に出版に詳しい人材がいなくて、外部の出版エージェントを介したものの、権利処理をしっかりしなかったという内容です。
被告サイト(後掲)を拝見すると、幼児の漢字教育のために絵本に「本物の美術作品の手触りを感じてもらえるような原画」を使用しているということで、原画が単なる挿絵ではなく、書籍において重要な地位を占めるものであることが分かります。
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■参考サイト
被告サイト:石井式の幼児教育『石井式国語教育研究会』