最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
クレジットカード決済承認用ソフト事件
東京地裁24.3.23平成22(ワ)30222損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 岡本 岳
裁判官 鈴木和典
裁判官 坂本康博
*裁判所サイト公表 2012.3.26
*キーワード:譲渡権、公衆性、業務委託契約
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■事案
ソフトをインストールしたサーバを無断譲渡したとして著作権(譲渡権)侵害が争点となった事案
原告:通信機器開発製造販売会社
被告:電気通信事業会社、システム開発会社、クレジットカード決済情報配信会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法26条の2第1項
1 譲渡権侵害の成否
2 本件プログラムが「DSL回線対応クレジットカード決済システムの製品評価・機能評価のために一時的に使用させる目的」で本件サーバにインストールされたか
3 詐欺による不法行為の成否
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■事案の概要
『本件は,原告が,被告らの構築するクレジットカード決済システム(DSL回線対応クレジットカード決済システム)の製品評価,機能評価のために一時的に使用させる目的で,被告エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(以下「被告NTTコム」という。)が運営するデータセンター内のサーバ(ターミナルゲートウェイ〈T−GW〉サーバ)用コンピュータ(以下「本件サーバ」という。)2台にプログラム(サーバとクレジットカードの決済端末の認証を行い,TCP/IPプロトコル対応の決済端末からDSL回線経由で送られてきた暗号化された電文を復号化し,既存のレガシーシステムが電文を受け付けられるようにソケット変換して,決済認証用のホストコンピュータに送信するアプリケーションソフト。以下「本件プログラム」という。)をインストールしたにもかかわらず,被告NTTコムが被告株式会社ジー・ピー・ネット(以下「被告GPネット」という。)に本件プログラムがインストールされた本件サーバ2台を無許諾で譲渡し(被告アイエヌエス・ソリューション株式会社〈以下「被告INSソリューション」という。〉は,これを知りながら原告に告知せず,当該譲渡を幇助した。),被告らにおいて上記目的が終了した後(平成20年9月4日以降)も本件プログラムを継続的に使用していることが不法行為,債務不履行又は不当利得に該当すると主張して,被告らに対し,次の請求をする事案である。』(2頁以下)
<経緯>
H17.05 東京ソフトと原告がカード決済端末事業基本契約書締結
H17.08 被告がソフトをインストールしたサーバを納品
H17.10 被告らが本件協業スキームの商用化に向けた覚書を作成
H17.11 被告らがSSL−VPNサーバセグメント設計・建設委託契約締結
H18.03 被告NTTコムが被告GPネットに対し本件サーバ2台を引き渡し
H19.03 原告がターミナルゲートウェイ(T−GW)サーバー納入仕様書交付
H19.07 「OCNクレジット加盟店パック」販売開始
H20.09 協業各社がサービスの終了に向け協力することを合意
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■判決内容
<争点>
1 譲渡権侵害の成否
原告は、被告NTTコムが被告GPネットに対して本件プログラムがインストールされた本件サーバ2台を譲渡したことが、本件プログラムに係る原告又は韓国KDEの譲渡権(著作権法26条の2第1項)を侵害する旨主張しました。
しかし、裁判所は、『譲渡権は,著作物(映画の著作物を除く。)をその原作品又は複製物の譲渡により公衆に提供する権利をいい,「公衆」には「特定かつ多数の者」も含まれるが(同法2条5項),特定少数の者に対する譲渡について譲渡権は及ばない』と判示した上で、本件において、被告NTTコムは本件プログラムがインストールされた本件サーバを被告GPネットに譲渡したにすぎず、同譲渡は公衆に提供する行為には該当せず、本件プログラムに係る譲渡権を侵害するものということはできないと判断しています(42頁以下)。
また、裁判所は、原告が、被告NTTコムから被告GPネットに対して本件プログラムがインストールされた本件サーバが譲渡され、被告GPネットにおいて使用していることを認識し、これを了承していたことや本件プログラムの使用許諾の対価が支払われていたことなどを併せて認定しています。
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2 本件プログラムが「DSL回線対応クレジットカード決済システムの製品評価・機能評価のために一時的に使用させる目的」で本件サーバにインストールされたか
原告は、債務不履行の成否、みなし著作権侵害(著作権法113条2項)の成否、不当利得の成否の各争点において、いずれも本件プログラムが、「DSL回線対応クレジットカード決済システムの製品評価・機能評価のために一時的に使用させる目的」で本件サーバにインストールされたことを前提とする主張をしました。
しかし、裁判所は、原告の見積もりやターミナルゲートウェイ(T−GW)サーバー納入仕様書などで使用条件の制限等に関する事項の提示がないと判断。原告各争点はいずれもその前提を欠くとして原告の主張を認めていません(44頁以下)。
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3 詐欺による不法行為の成否
原告は、被告らが実際には被告GPネット独自の決済認証サービスに本件プログラムを使用する意思を有していたにもかかわらず、その意思を秘匿し、あたかも本件プログラムが本件協業スキームにおいてKDE製端末を大量導入する前提でその性能等を検証する目的で使用されるものであり、本件協業スキームが商用化された場合にはKDE製端末が被告INSソリューションや東京ソフトを介して被告NTTコムから原告に大量発注されるものと騙した旨主張しました(45頁以下)。
しかし、裁判所は、被告GPネットが本件プログラムを使用することについて、目的や期限の制限を受けるものではなく、また、原告は、KDE製端末の販売の対価のほか、同端末に関連して多額の金員を取得しているなどとして、原告の詐欺の成立の主張を認めていません。
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■コメント
サーバとクレジットカードの決済端末の認証などを行うアプリケーションソフトの使用許諾契約を巡って争われた事案となります。原告側の認識としては、期間限定の試験評価のみの使用許諾でしたが、裁判所はそうした限定を認めませんでした。
事案の概要については、後掲原告サイトに詳しいです。
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■参考サイト
原告サイト
原告2010年8月9日付配付資料
クレジットカード決済承認用ソフト事件
東京地裁24.3.23平成22(ワ)30222損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 岡本 岳
裁判官 鈴木和典
裁判官 坂本康博
*裁判所サイト公表 2012.3.26
*キーワード:譲渡権、公衆性、業務委託契約
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■事案
ソフトをインストールしたサーバを無断譲渡したとして著作権(譲渡権)侵害が争点となった事案
原告:通信機器開発製造販売会社
被告:電気通信事業会社、システム開発会社、クレジットカード決済情報配信会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法26条の2第1項
1 譲渡権侵害の成否
2 本件プログラムが「DSL回線対応クレジットカード決済システムの製品評価・機能評価のために一時的に使用させる目的」で本件サーバにインストールされたか
3 詐欺による不法行為の成否
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■事案の概要
『本件は,原告が,被告らの構築するクレジットカード決済システム(DSL回線対応クレジットカード決済システム)の製品評価,機能評価のために一時的に使用させる目的で,被告エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(以下「被告NTTコム」という。)が運営するデータセンター内のサーバ(ターミナルゲートウェイ〈T−GW〉サーバ)用コンピュータ(以下「本件サーバ」という。)2台にプログラム(サーバとクレジットカードの決済端末の認証を行い,TCP/IPプロトコル対応の決済端末からDSL回線経由で送られてきた暗号化された電文を復号化し,既存のレガシーシステムが電文を受け付けられるようにソケット変換して,決済認証用のホストコンピュータに送信するアプリケーションソフト。以下「本件プログラム」という。)をインストールしたにもかかわらず,被告NTTコムが被告株式会社ジー・ピー・ネット(以下「被告GPネット」という。)に本件プログラムがインストールされた本件サーバ2台を無許諾で譲渡し(被告アイエヌエス・ソリューション株式会社〈以下「被告INSソリューション」という。〉は,これを知りながら原告に告知せず,当該譲渡を幇助した。),被告らにおいて上記目的が終了した後(平成20年9月4日以降)も本件プログラムを継続的に使用していることが不法行為,債務不履行又は不当利得に該当すると主張して,被告らに対し,次の請求をする事案である。』(2頁以下)
<経緯>
H17.05 東京ソフトと原告がカード決済端末事業基本契約書締結
H17.08 被告がソフトをインストールしたサーバを納品
H17.10 被告らが本件協業スキームの商用化に向けた覚書を作成
H17.11 被告らがSSL−VPNサーバセグメント設計・建設委託契約締結
H18.03 被告NTTコムが被告GPネットに対し本件サーバ2台を引き渡し
H19.03 原告がターミナルゲートウェイ(T−GW)サーバー納入仕様書交付
H19.07 「OCNクレジット加盟店パック」販売開始
H20.09 協業各社がサービスの終了に向け協力することを合意
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■判決内容
<争点>
1 譲渡権侵害の成否
原告は、被告NTTコムが被告GPネットに対して本件プログラムがインストールされた本件サーバ2台を譲渡したことが、本件プログラムに係る原告又は韓国KDEの譲渡権(著作権法26条の2第1項)を侵害する旨主張しました。
しかし、裁判所は、『譲渡権は,著作物(映画の著作物を除く。)をその原作品又は複製物の譲渡により公衆に提供する権利をいい,「公衆」には「特定かつ多数の者」も含まれるが(同法2条5項),特定少数の者に対する譲渡について譲渡権は及ばない』と判示した上で、本件において、被告NTTコムは本件プログラムがインストールされた本件サーバを被告GPネットに譲渡したにすぎず、同譲渡は公衆に提供する行為には該当せず、本件プログラムに係る譲渡権を侵害するものということはできないと判断しています(42頁以下)。
また、裁判所は、原告が、被告NTTコムから被告GPネットに対して本件プログラムがインストールされた本件サーバが譲渡され、被告GPネットにおいて使用していることを認識し、これを了承していたことや本件プログラムの使用許諾の対価が支払われていたことなどを併せて認定しています。
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2 本件プログラムが「DSL回線対応クレジットカード決済システムの製品評価・機能評価のために一時的に使用させる目的」で本件サーバにインストールされたか
原告は、債務不履行の成否、みなし著作権侵害(著作権法113条2項)の成否、不当利得の成否の各争点において、いずれも本件プログラムが、「DSL回線対応クレジットカード決済システムの製品評価・機能評価のために一時的に使用させる目的」で本件サーバにインストールされたことを前提とする主張をしました。
しかし、裁判所は、原告の見積もりやターミナルゲートウェイ(T−GW)サーバー納入仕様書などで使用条件の制限等に関する事項の提示がないと判断。原告各争点はいずれもその前提を欠くとして原告の主張を認めていません(44頁以下)。
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3 詐欺による不法行為の成否
原告は、被告らが実際には被告GPネット独自の決済認証サービスに本件プログラムを使用する意思を有していたにもかかわらず、その意思を秘匿し、あたかも本件プログラムが本件協業スキームにおいてKDE製端末を大量導入する前提でその性能等を検証する目的で使用されるものであり、本件協業スキームが商用化された場合にはKDE製端末が被告INSソリューションや東京ソフトを介して被告NTTコムから原告に大量発注されるものと騙した旨主張しました(45頁以下)。
しかし、裁判所は、被告GPネットが本件プログラムを使用することについて、目的や期限の制限を受けるものではなく、また、原告は、KDE製端末の販売の対価のほか、同端末に関連して多額の金員を取得しているなどとして、原告の詐欺の成立の主張を認めていません。
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■コメント
サーバとクレジットカードの決済端末の認証などを行うアプリケーションソフトの使用許諾契約を巡って争われた事案となります。原告側の認識としては、期間限定の試験評価のみの使用許諾でしたが、裁判所はそうした限定を認めませんでした。
事案の概要については、後掲原告サイトに詳しいです。
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■参考サイト
原告サイト
原告2010年8月9日付配付資料