最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「釣りゲータウン2」事件
東京地裁平成24.2.23平成21(ワ)34012著作権侵害差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 山門 優
裁判官 志賀 勝
*裁判所サイト公表 2012.03.14
*キーワード:創作性、編集著作物、商品等表示性、一般不法行為論
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■事案
携帯電話向けインターネット釣りゲームの類否や誤認混同惹起行為性が争点となった事案
原告:インターネット情報提供会社
被告:インターネット情報提供会社、システム開発会社
--------------------
■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、12条1項、21条、23条、114条2項、不正競争防止法2条1項1号、民法709条
1 被告作品における「魚の引き寄せ画面」は、原告作品における「魚の引き寄せ画面」に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものか
2 被告作品における主要画面の変遷は、原告作品における主要画面の変遷に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものか
3 被告らのウェブページに被告作品の魚の引き寄せ画面を掲載する行為は、他人の商品等表示として周知のものと同一又は類似の商品等表示を電気通信回線を通じて提供し、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為(不競法2条1項1号)に当たるか
4 被告作品を製作し公衆に送信する行為は、原告の法的保護に値する利益を侵害する不法行為に当たるか
5 原告の損害
6 被告らによる謝罪広告の要否
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■事案の概要
『本件は,原告が,被告らに対し,(1)被告らが共同で製作し公衆に送信している携帯電話機用インターネット・ゲームソフト「釣りゲータウン2」(以下「被告作品」という。)は,原告が製作し公衆に送信している携帯電話機用インターネット・ゲームソフト「釣り★スタ」(以下「原告作品」という。)と,魚を引き寄せる動作を行う画面の影像及びその変化の態様や,ユーザーがゲームを行う際に必ずたどる画面(主要画面)の選択及び配列並びに各主要画面での素材の選択及び配列の点等において類似するので,被告作品を製作してこれを公衆送信する行為は,原告の原告作品に係る著作権(翻案権,公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害する,(2)被告らが,別紙影像目録1及び2記載の影像を被告らのウェブページに掲載し,被告作品の自他を識別する商品等表示として用いる行為は,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号の「混同惹起行為」に当たる,(3)被告らが,原告に無断で原告作品に依拠して被告作品を製作し,これを配信した行為は,原告作品の価値にただ乗り(フリー・ライド)するものであり,原告の法的保護に値する利益を違法に侵害する(民法709条,719条1項),と主張して,(1)著作権及び著作者人格権侵害を理由とする被告作品の公衆送信等の差止め及び被告作品の影像の抹消(上記請求1),(2)不競法2条1項1号違反を理由とする別紙影像目録1及び2記載の影像の抹消(請求2,3),(3)著作権侵害,不競法2条1項1号違反及び共同不法行為に基づく損害賠償として,被告作品の配信開始日である平成21年2月25日から本件第9回弁論準備手続期日である平成23年7月7日までの損害金9億4020万円及びこれに対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払(請求4),及び(4)著作権法115条,不競法14条又は民法723条に基づく謝罪広告の掲載(請求5,6)を求める事案』(3頁以下)
<経緯>
H19.05 原告作品のGREEでの配信開始
H20.08 被告旧作品のモバゲータウンでの配信開始
H21.02 被告作品のモバゲータウンでの配信開始
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■判決内容
<争点>
1 被告作品における「魚の引き寄せ画面」は、原告作品における「魚の引き寄せ画面」に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものか
原告作品と被告作品の「魚の引き寄せ画面」の類否について裁判所は、
(1)水面及びその上の様子は画面から捨象され、水中のみが真横から水平方向の視点で描かれている
(2)水中の画像には、中心からほぼ等間隔である三重の同心円が描かれ、同心円の中心が画面のほぼ中央に位置し、最も外側の円の大きさは、水中の画像の約半分を占める
(3)水中の画像の背景は、水の色を含め全体的に薄暗い青で、水底の左右両端付近に、上記同心円に沿うような形で岩陰が描かれ、水草、他の生物、気泡等は描かれていない
(4)水中の画像には、一匹の黒色の魚影が描かれており、魚の口から画像上部に向かって黒い直線の糸(釣り糸)が伸びている
(5)釣り針にかかった魚影は、頻繁に向きを変えながら水中全体を動き回り、その際、背景画像は静止しており(ただし、被告作品では、同心円の大きさや配色、中心の円の画像が変化する。)、ユーザーの視点は固定されている
(6)上記同心円中の一定の位置に魚影がある場合にユーザーが決定キーを押すと、魚を引き寄せやすくなっている
といった諸点などにおいて共通すると判断。
また、原告作品以前に公表された携帯電話機用釣りゲームにおいて、上記共通点をいずれも備えるゲームは存在しなかったと認めています。
これに対して、相違点として、
(1)被告作品では、同心円が表示される前に、水中の画面を魚影が移動する場面が存在する
(2)同心円の配色
(3)魚影の描き方及び魚影と同心円との前後関係
(4)魚影が動き回っている間、被告作品では、同心円の大きさ、配色及び中央の円の部分の画像が変化する
(5)同心円のどの位置に魚影がある際に決定キーを押すと魚を引き寄せやすくなっている
(6)被告作品では、中央の円の部分に魚影がある際に決定キーを押すと、円の中心部分の表示に応じてアニメーションが表示され、その後の表示も異なってくる
などにおいて相違することが認められると判断。
共通点である(2)と(6)に原告作品の製作者の個性が強く表れているとした上で、原告作品の魚の引き寄せ画面の表現上の本質的な特徴といえる、(1)(2)(3)(6)についての同一性は、被告作品の中に維持されていると判断。被告作品は、原告作品に依拠して翻案され公衆送信されたものと認めています(86頁以下)。
結論として、著作権(翻案権、公衆送信権)侵害、著作者人格権(同一性保持権)侵害を認め、複製及び公衆送信の差止め(112条1項)と記録媒体の廃棄(112条2項)を認めています。
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2 被告作品における主要画面の変遷は、原告作品における主要画面の変遷に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものか
ゲームの画面と画面とをどのように遷移させるか、主要画面の選択と配列などの類似性についても争点とされています(94頁以下)。
この点について、裁判所は類似点はあるものの相違点もある上、5つの場面を設け、配列したこと自体は、ありふれたものであるとして、その点での創作性を否定。被告作品が原告作品の翻案物であることを否定しています。
また、主要画面に用いられている素材の選択や配列の類似性について、利用者によるリンクの発見や閲覧の容易性、操作性等の利便性の観点からの制約があることなどを勘案した上で、アイデアないし表現上の創作性のない部分での類似にすぎないと判断しています。
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3 被告らのウェブページに被告作品の魚の引き寄せ画面を掲載する行為は、他人の商品等表示として周知のものと同一又は類似の商品等表示を電気通信回線を通じて提供し、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為(不競法2条1項1号)に当たるか
原告は、原告作品の引き寄せ画面は原告の商品等表示として周知性を有するとして、被告作品の利用について、混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)にあたると主張しました。
しかし、裁判所は、原告による電車内広告やテレビコマーシャル、新聞・雑誌等の宣伝広告によって、魚の引き寄せ画面が周知の商品等表示性を獲得したと認めることはできないと判断。不正競争行為性を否定しています(101頁以下)。
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4 被告作品を製作し公衆に送信する行為は、原告の法的保護に値する利益を侵害する不法行為に当たるか
原告はさらに被告らの行為が原告作品の価値にフリーライドするものであるとして一般不法行為論の成立を主張しましたが、裁判所は、著作権侵害が認められる部分を超えて被告らの行為が自由競争の範囲を逸脱し原告の法的に保護された利益を侵害する違法な行為であるということはできないとして、民法の一般不法行為の成立を否定しています(105頁以下)。
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5 原告の損害
損害額の算定については、著作権法114条2項(侵害者利益推定)の適用を認めた上で、被告作品による被告らの限界利益を7億1200万円と認定。被告製品の売上げに対する被告作品の魚の引き寄せ画面の寄与度を30%として、被告らが被告作品の配信により受けた利益の額は2億1360万円(7億1200万円×0.3)と判断しています(106頁以下)。そのほか弁護士費用相当額として、2100万円が認定されています。
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6 被告らによる謝罪広告の要否
被告らが被告作品を製作し配信したことによる原告作品の魚の引き寄せ画面に係る原告の著作権の侵害の内容、態様等に照らし、差止め及び損害に対する賠償金に加えて原告の名誉、声望を回復するために適当な措置として、原告の請求する謝罪広告を掲載する必要性はないと判断されています(113頁)。
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■コメント
ソーシャルゲームとして人気のある携帯電話端末向けゲーム作品が争点となって注目を集めた事案です。
映画著作物としてのゲームやゲームのプログラム部分ではなくて、画面デザインやゲームの流れにおける著作権侵害性などが争点となっています。
著作権侵害が肯定された魚の引き寄せ画面のデザインですが、上が原告サイトで下が被告サイトとなります(7頁)。
また、たとえば画面トップのデザインは、このような対比になりますが(23頁)、
(原告作品)
(被告作品)
全体として類似の印象を与えるものの、同心円でのターゲットでタイミングを図る部分の具体的な表現についてだけ類似性が肯定されるにとどまりました。
ゲーム業界はクリエーターの移動が多いので、あるいは原告作品の制作担当者が、被告会社に転職して被告作品の制作担当をしていた可能性もあるのかな、とも思いましたが、その点についての言及はありませんでした。いずれにしても、ゲームの新規性・独創性をどう保護するかやアイデアと表現の区別の難しさが伝わる事案で、知財高裁の判断が注目されます。
「釣りゲータウン2」事件
東京地裁平成24.2.23平成21(ワ)34012著作権侵害差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 山門 優
裁判官 志賀 勝
*裁判所サイト公表 2012.03.14
*キーワード:創作性、編集著作物、商品等表示性、一般不法行為論
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■事案
携帯電話向けインターネット釣りゲームの類否や誤認混同惹起行為性が争点となった事案
原告:インターネット情報提供会社
被告:インターネット情報提供会社、システム開発会社
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、12条1項、21条、23条、114条2項、不正競争防止法2条1項1号、民法709条
1 被告作品における「魚の引き寄せ画面」は、原告作品における「魚の引き寄せ画面」に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものか
2 被告作品における主要画面の変遷は、原告作品における主要画面の変遷に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものか
3 被告らのウェブページに被告作品の魚の引き寄せ画面を掲載する行為は、他人の商品等表示として周知のものと同一又は類似の商品等表示を電気通信回線を通じて提供し、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為(不競法2条1項1号)に当たるか
4 被告作品を製作し公衆に送信する行為は、原告の法的保護に値する利益を侵害する不法行為に当たるか
5 原告の損害
6 被告らによる謝罪広告の要否
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■事案の概要
『本件は,原告が,被告らに対し,(1)被告らが共同で製作し公衆に送信している携帯電話機用インターネット・ゲームソフト「釣りゲータウン2」(以下「被告作品」という。)は,原告が製作し公衆に送信している携帯電話機用インターネット・ゲームソフト「釣り★スタ」(以下「原告作品」という。)と,魚を引き寄せる動作を行う画面の影像及びその変化の態様や,ユーザーがゲームを行う際に必ずたどる画面(主要画面)の選択及び配列並びに各主要画面での素材の選択及び配列の点等において類似するので,被告作品を製作してこれを公衆送信する行為は,原告の原告作品に係る著作権(翻案権,公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害する,(2)被告らが,別紙影像目録1及び2記載の影像を被告らのウェブページに掲載し,被告作品の自他を識別する商品等表示として用いる行為は,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号の「混同惹起行為」に当たる,(3)被告らが,原告に無断で原告作品に依拠して被告作品を製作し,これを配信した行為は,原告作品の価値にただ乗り(フリー・ライド)するものであり,原告の法的保護に値する利益を違法に侵害する(民法709条,719条1項),と主張して,(1)著作権及び著作者人格権侵害を理由とする被告作品の公衆送信等の差止め及び被告作品の影像の抹消(上記請求1),(2)不競法2条1項1号違反を理由とする別紙影像目録1及び2記載の影像の抹消(請求2,3),(3)著作権侵害,不競法2条1項1号違反及び共同不法行為に基づく損害賠償として,被告作品の配信開始日である平成21年2月25日から本件第9回弁論準備手続期日である平成23年7月7日までの損害金9億4020万円及びこれに対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払(請求4),及び(4)著作権法115条,不競法14条又は民法723条に基づく謝罪広告の掲載(請求5,6)を求める事案』(3頁以下)
<経緯>
H19.05 原告作品のGREEでの配信開始
H20.08 被告旧作品のモバゲータウンでの配信開始
H21.02 被告作品のモバゲータウンでの配信開始
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■判決内容
<争点>
1 被告作品における「魚の引き寄せ画面」は、原告作品における「魚の引き寄せ画面」に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものか
原告作品と被告作品の「魚の引き寄せ画面」の類否について裁判所は、
(1)水面及びその上の様子は画面から捨象され、水中のみが真横から水平方向の視点で描かれている
(2)水中の画像には、中心からほぼ等間隔である三重の同心円が描かれ、同心円の中心が画面のほぼ中央に位置し、最も外側の円の大きさは、水中の画像の約半分を占める
(3)水中の画像の背景は、水の色を含め全体的に薄暗い青で、水底の左右両端付近に、上記同心円に沿うような形で岩陰が描かれ、水草、他の生物、気泡等は描かれていない
(4)水中の画像には、一匹の黒色の魚影が描かれており、魚の口から画像上部に向かって黒い直線の糸(釣り糸)が伸びている
(5)釣り針にかかった魚影は、頻繁に向きを変えながら水中全体を動き回り、その際、背景画像は静止しており(ただし、被告作品では、同心円の大きさや配色、中心の円の画像が変化する。)、ユーザーの視点は固定されている
(6)上記同心円中の一定の位置に魚影がある場合にユーザーが決定キーを押すと、魚を引き寄せやすくなっている
といった諸点などにおいて共通すると判断。
また、原告作品以前に公表された携帯電話機用釣りゲームにおいて、上記共通点をいずれも備えるゲームは存在しなかったと認めています。
これに対して、相違点として、
(1)被告作品では、同心円が表示される前に、水中の画面を魚影が移動する場面が存在する
(2)同心円の配色
(3)魚影の描き方及び魚影と同心円との前後関係
(4)魚影が動き回っている間、被告作品では、同心円の大きさ、配色及び中央の円の部分の画像が変化する
(5)同心円のどの位置に魚影がある際に決定キーを押すと魚を引き寄せやすくなっている
(6)被告作品では、中央の円の部分に魚影がある際に決定キーを押すと、円の中心部分の表示に応じてアニメーションが表示され、その後の表示も異なってくる
などにおいて相違することが認められると判断。
共通点である(2)と(6)に原告作品の製作者の個性が強く表れているとした上で、原告作品の魚の引き寄せ画面の表現上の本質的な特徴といえる、(1)(2)(3)(6)についての同一性は、被告作品の中に維持されていると判断。被告作品は、原告作品に依拠して翻案され公衆送信されたものと認めています(86頁以下)。
結論として、著作権(翻案権、公衆送信権)侵害、著作者人格権(同一性保持権)侵害を認め、複製及び公衆送信の差止め(112条1項)と記録媒体の廃棄(112条2項)を認めています。
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2 被告作品における主要画面の変遷は、原告作品における主要画面の変遷に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものか
ゲームの画面と画面とをどのように遷移させるか、主要画面の選択と配列などの類似性についても争点とされています(94頁以下)。
この点について、裁判所は類似点はあるものの相違点もある上、5つの場面を設け、配列したこと自体は、ありふれたものであるとして、その点での創作性を否定。被告作品が原告作品の翻案物であることを否定しています。
また、主要画面に用いられている素材の選択や配列の類似性について、利用者によるリンクの発見や閲覧の容易性、操作性等の利便性の観点からの制約があることなどを勘案した上で、アイデアないし表現上の創作性のない部分での類似にすぎないと判断しています。
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3 被告らのウェブページに被告作品の魚の引き寄せ画面を掲載する行為は、他人の商品等表示として周知のものと同一又は類似の商品等表示を電気通信回線を通じて提供し、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為(不競法2条1項1号)に当たるか
原告は、原告作品の引き寄せ画面は原告の商品等表示として周知性を有するとして、被告作品の利用について、混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)にあたると主張しました。
しかし、裁判所は、原告による電車内広告やテレビコマーシャル、新聞・雑誌等の宣伝広告によって、魚の引き寄せ画面が周知の商品等表示性を獲得したと認めることはできないと判断。不正競争行為性を否定しています(101頁以下)。
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4 被告作品を製作し公衆に送信する行為は、原告の法的保護に値する利益を侵害する不法行為に当たるか
原告はさらに被告らの行為が原告作品の価値にフリーライドするものであるとして一般不法行為論の成立を主張しましたが、裁判所は、著作権侵害が認められる部分を超えて被告らの行為が自由競争の範囲を逸脱し原告の法的に保護された利益を侵害する違法な行為であるということはできないとして、民法の一般不法行為の成立を否定しています(105頁以下)。
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5 原告の損害
損害額の算定については、著作権法114条2項(侵害者利益推定)の適用を認めた上で、被告作品による被告らの限界利益を7億1200万円と認定。被告製品の売上げに対する被告作品の魚の引き寄せ画面の寄与度を30%として、被告らが被告作品の配信により受けた利益の額は2億1360万円(7億1200万円×0.3)と判断しています(106頁以下)。そのほか弁護士費用相当額として、2100万円が認定されています。
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6 被告らによる謝罪広告の要否
被告らが被告作品を製作し配信したことによる原告作品の魚の引き寄せ画面に係る原告の著作権の侵害の内容、態様等に照らし、差止め及び損害に対する賠償金に加えて原告の名誉、声望を回復するために適当な措置として、原告の請求する謝罪広告を掲載する必要性はないと判断されています(113頁)。
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■コメント
ソーシャルゲームとして人気のある携帯電話端末向けゲーム作品が争点となって注目を集めた事案です。
映画著作物としてのゲームやゲームのプログラム部分ではなくて、画面デザインやゲームの流れにおける著作権侵害性などが争点となっています。
著作権侵害が肯定された魚の引き寄せ画面のデザインですが、上が原告サイトで下が被告サイトとなります(7頁)。
また、たとえば画面トップのデザインは、このような対比になりますが(23頁)、
(原告作品)
(被告作品)
全体として類似の印象を与えるものの、同心円でのターゲットでタイミングを図る部分の具体的な表現についてだけ類似性が肯定されるにとどまりました。
ゲーム業界はクリエーターの移動が多いので、あるいは原告作品の制作担当者が、被告会社に転職して被告作品の制作担当をしていた可能性もあるのかな、とも思いましたが、その点についての言及はありませんでした。いずれにしても、ゲームの新規性・独創性をどう保護するかやアイデアと表現の区別の難しさが伝わる事案で、知財高裁の判断が注目されます。