最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「おまかせ君プロVer.2.5」測量業務用ソフトウェア事件(控訴審)

知財高裁平成24.1.31平成23(ネ)10041損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官      八木貴美子
裁判官      知野 明

*裁判所サイト公表 2012.2.13
*キーワード:退職従業員、創作性、職務著作、複製、翻案、共同不法行為、限界利益

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■事案

測量業務用ソフトウェアの著作物性や退職従業員らによる複製権侵害性などが争点となった事案の控訴審

控訴人(一審被告・附帯被控訴人):工事測量サービス会社、建設工事会社、被告会社代表取締役X1、原告元従業員X2
被控訴人(一審原告・附帯控訴人):測量ソフトウェア開発販売会社

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■結論

控訴棄却、附帯控訴による原判決変更

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、15条2項、21条、27条、112条、114条2項

1 原告プログラムは創作性を有するか
2 原告プログラムは職務著作か
3 被告プログラムは原告プログラムを複製又は翻案したものか
4 被告らの共同不法行為の成否
5 原告の損害


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■事案の概要

『「おまかせ君プロVer.2.5」という名称の測量業務用の原告ソフトを製造し,これを使用して測量業務等を行っている原告が,被告ソフトを製造し,これを使用して測量業務等を行っている被告YKSC社,同社の関連会社である被告ワイケイズ社,被告YKSC社の代表取締役である被告X1,及び原告の元従業員で,被告YKSC社の従業員である被告X2に対し,被告プログラムは原告プログラムを複製又は翻案したものであり,共同して被告ソフトを製造し,これを複製,使用,譲渡する被告らの行為は,原告の原告プログラムに対する著作権(複製権又は翻案権)を侵害すると主張して,(1)被告YKSC社及び被告ワイケイズ社に対して,著作権法112条1項に基づいて被告プログラムの製造等の差止め,及び同条2項に基づいて被告プログラムの複製物等の廃棄を,(2)被告らに対して,著作権侵害に基づく損害賠償として6000万円及び内金3000万円に対する訴状送達日の翌日である平成19年10月6日から,内金3000万円に対する訴え変更の申立書送達の日の翌日である平成21年3月7日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うよう求めて,訴訟を提起した。
 原審は,(1)被告YKSC社及び被告ワイケイズ社に対し,被告プロクラムの製造等の差止めを,被告YKSC社に対し,被告プログラムの複製物等の廃棄を命じ,また,(2)被告らに対し,損害賠償として連帯して3227万3664円及び内金983万3716円に対する平成19年10月6日から,内金998万3927円に対する平成21年3月7日から,内金509万2587円に対する平成21年8月31日から,内金736万3434円に対する平成23年2月25日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を命じ,原告のその余の請求を棄却する旨の判決をした。
 被告らは,これを不服として控訴を提起し,原告は,損害賠償の請求について附帯控訴を提起し,併せて被告らに対する損害賠償の請求を9000万円に拡張すると共に,拡張部分3000万円に対する「附帯控訴及び訴変更申立書」の送達日の翌日である,被告X2については平成23年9月29日から,その余の被告については同月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた』事案(3頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 原告プログラムは創作性を有するか
2 原告プログラムは職務著作か
3 被告プログラムは原告プログラムを複製又は翻案したものか
4 被告らの共同不法行為の成否
5 原告の損害


1から4の各争点について、原審の判断が維持されています(7頁以下)。但し、原告の損害額については、増額されています(10頁以下)。

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■コメント

原告の損額額について、被告YKSC社が被告ソフトを使用したことによる利益(いわゆる限界利益。著作権法114条2項)の算定において増額されるとともに、弁護士費用も増額されています。

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■過去のブログ記事

2011.6.13記事 原審