最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

CADソフトライセンス契約事件(控訴審)

知財高裁平成23.6.29平成22(ネ)10045著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官      知野 明
裁判官      中平 健

*裁判所サイト公表 2011.7.11
*キーワード:ライセンス契約、複製、翻案、権利濫用

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■事案

CADソフトウェアやマニュアルの販売に関して著作権侵害性や商標権侵害性が争われた事案の控訴審

控訴人兼被控訴人          :ソフト開発会社
(原審第1事件原告・第2事件被告)
控訴人  (第1事件被告)       :ソフト開発会社
被控訴人(第2事件原告)      :ソフト開発会社(米国法人)

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法21条、27条、114条2項、商標法38条3項、4項

1 国際裁判管轄の有無
2 訴えの変更の許否
3 Vellum3.0コードのプログラム著作権の帰属
4 Vellum2.7コード、Extensionsコードのプログラム著作権の帰属
5 被告コムネットが使用するマニュアルの著作権及びその侵害の有無
6 被告コムネットによるVellum3.0コードのプログラム著作権侵害の有無
7 原告コンセプトによるVellum2.7コード、Extensionsコードのプログラム著作権侵害の有無
8 商標権侵害
9 原告コンセプトの損害
10 原告アシュラの損害

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■事案の概要

『〔原審第1事件〕
 第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,CAD(コンピュータ支援デザイン)ソフトウェア(32ビットアプリケーションソフトウェア)であるAshlar−Vellum3.0のプログラムに係る著作権及びマニュアル(使用説明書)の著作権並びに別紙商標目録記載1,2の商標権(コンセプト商標1,2)に基づき,第1事件被告コムネットが販売する製品(別紙「被告コムネット商品目録」記載1,2のソフトウェア),マニュアルの販売等の差止め,廃棄等を求めるとともに,不法行為(著作権侵害,商標権侵害)による損害賠償請求権に基づき,第1事件被告コムネットに対し,第1事件原告・第2事件被告コンセプトに発生した損害の一部請求として,1億2264万2447円の支払を求めた。』

『〔原審第2事件〕
 第2事件原告アシュラが,CADソフトウェア(英語版の16ビットアプリケーションソフトウェア)であるAshlar−Vellum2.7及びこれを32ビット化(32ビットOS環境に搭載できるようにソースコードを書き換えること)する際に作成されたExtensionsのプログラムに係る著作権並びに別紙商標目録記載3の商標権(アシュラ商標)に基づき,第1事件原告・第2事件被告コンセプトが販売する製品(別紙「原告コンセプト商品目録」記載1〜3のソフトウェア),マニュアルの販売等の差止め,廃棄等を求めるとともに,不法行為(著作権侵害,商標権侵害)による損害賠償請求又は不当利得(第2事件原告アシュラの著作権,商標権の使用料相当額の不当利得)返還請求として,第1事件原告・第2事件被告コンセプトに対し,合計1億6186万9597円の支払を求めた。』

『〔原審の判断〕
 原審は,第1事件について,第1事件被告コムネットは,Vellum3.0のプログラムに係る著作権及びマニュアル(使用説明書)の著作権を侵害しているとして,別紙「被告コムネット商品目録」記載1,2のソフトウェアの複製等の差止め及び廃棄,並びに454万5079円の損害賠償請求を認め,その余の請求を棄却した。
また,原審は,第2事件について,第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,Vellum2.7及びExtensionsのプログラムに係る著作権,アシュラ商標の商標権を侵害しているとして,別紙「原告コンセプト商品目録」記載3のCADソフトウェアの複製等の差止め及び廃棄,並びに5826万0284円の損害賠償請求を認め,その余の請求を棄却した。これに対し,第1事件原告・第2事件被告コンセプト及び第1事件被告コムネットは,原判決のうち各敗訴部分の取消しを求めて,本件控訴を提起した。』
(3頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 国際裁判管轄の有無
2 訴えの変更の許否
3 Vellum3.0コードのプログラム著作権の帰属
4 Vellum2.7コード、Extensionsコードのプログラム著作権の帰属
5 被告コムネットが使用するマニュアルの著作権及びその侵害の有無
6 被告コムネットによるVellum3.0コードのプログラム著作権侵害の有無
7 原告コンセプトによるVellum2.7コード、Extensionsコードのプログラム著作権侵害の有無
8 商標権侵害
9 原告コンセプトの損害
10 原告アシュラの損害

原審での各争点について、控訴審は原審の判断を基本的に維持しています(25頁以下)。

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■コメント

設計・製図分野で汎用性のある2D/3DCADソフトに関するマニュアル(使用説明書)やプログラムの著作権侵害性とアシュラ商標に関する商標権侵害性を肯定した原審の結論を控訴審でも維持しています。

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■過去のブログ記事

2010年4月13日記事(原審)
CADソフトライセンス契約事件