最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
中小企業診断士試験予備校教材事件
東京地裁平成23.2.28平成21(ワ)23987損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官 菊池絵理
裁判官 坂本三郎
*裁判所サイト公表 2011.4.20
*キーワード:依拠性、複製権、同一性保持権、講義資料、利用許諾
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■事案
中小企業診断士試験の予備校用の教材に関して著作権や著作者人格権侵害の成否について依拠性が争点となった事案
原告:中小企業診断士
被告:経営コンサルティング会社、資格予備校
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法21条、20条
1 第8回テキスト原稿及び被告LECテキスト(第8回)は、原告メモ等に依拠して作成されたものか
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■事案の概要
『被告株式会社東京リーガルマインド(以下「被告LEC」という。)の講座におけるビデオ講義を担当した原告が,講義のために作成した資料を被告経営戦略研究所株式会社(以下「被告経営戦略」という。)に提出したところ,被告らが,原告に無断でこれを複製,改竄し,被告LECの講義用のテキストとして作成し配布したと主張して,被告らに対し,著作権(複製権)侵害及び著作者人格権(同一性保持権)侵害に基づく損害賠償請求(著作権法114条,民法709条,710条)として,連帯して140万円の支払を求める事案』(1頁以下)
<経緯>
H13 被告LECが被告コンサル会社に教材作成を委託
被告コンサル会社が原告に講義を依頼、ビデオ収録
中小企業診断士試験「2001年度2次ストレート合格講座」開講
H18 別件訴訟一審判決
H19 第8回テキストと原告メモ等との関係について原告が通知
H21.7.13 本件訴訟を提起
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■判決内容
<争点>
1 第8回テキスト原稿及び被告LECテキスト(第8回)は、原告メモ等に依拠して作成されたものか
被告予備校で開講された中小企業診断士試験「2001年度2次ストレート合格講座」で使用された第8回「財務」の講義のテキスト原稿及びテキストが、原告の新規事業開発ビデオ収録メモ(原告メモ等)に依拠して無断で作成されたものであると原告は主張しました(37頁以下)。
この点について裁判所は、
(1)作成の経緯:テキストは、平成13年2月中には完成し、LECに納品されていた
(2)形式面:主要項目の項目立ては同一であるが、小項目などで非類似
(3)内容面:原告メモ等は簡潔な記載であったり、両者は表現が異なっていたりして非類似
といった点から、原告によるビデオ講義の収録後、平成13年3月上旬に被告コンサル会社に送付した原告メモ等に依拠してテキストを作成したとする原告の主張は否定されています。
なお、原告は予備的主張として、平成13年2月中の原告メモ等の送付の可能性を主張しましたが、仮にその時期に送付がありテキスト作成において依拠があったとしても、原稿料の受領があり原告メモ等の利用について許諾していたとして、裁判所は複製権侵害性を否定しています(49頁以下)。
結論として、著作者人格権(同一性保持権)侵害性の点を含め原告の主張は認められませんでした。
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■コメント
原被告らによる別件訴訟(予備教材事件 知財高裁平成19年2月28日)は、株式会社通産資料調査会から刊行予定の「中小企業診断士合格ポイントマスター(下)」の「第9章 助言理論1コンサルティング理論2.問題の発見3.問題解決策の立案」部分の執筆を被告コンサル会社からの依頼で執筆担当した原告が、その原稿を被告コンサル会社らが被告予備校の講座で無断使用したとして著作権侵害性を争った事案でした。
この別件訴訟では、被告予備校の注意義務違反も肯定されて被告らの著作権侵害性が認められましたが、今回の訴訟は、同時期の被告予備校のビデオ講義を担当した原告が、その講義のために作成した資料メモを被告らが無断で別の回の講義のテキストに複製などしたとして新たに訴えた事案です。
原告としては、第5回「新規事業開発」の講義ビデオ収録、資料メモとの認識があったようですが、実際には第8回「財務」のビデオ収録となっており、認識のズレがありました。
すでに10年前の事実関係ですが、経緯としては、別件訴訟の検討過程でテキスト原稿と原告のメモの関係性に原告が新たに着目したというものでした(41頁以下)。
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■過去のブログ記事
2006年11月18日記事 予備校教材事件(一審)
予備校教材事件
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■参考判例
予備校教材事件(控訴審判決PDF)
知財高裁平成19年2月28日平成18(ネ)10090損害賠償請求控訴事件
中小企業診断士試験予備校教材事件
東京地裁平成23.2.28平成21(ワ)23987損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官 菊池絵理
裁判官 坂本三郎
*裁判所サイト公表 2011.4.20
*キーワード:依拠性、複製権、同一性保持権、講義資料、利用許諾
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■事案
中小企業診断士試験の予備校用の教材に関して著作権や著作者人格権侵害の成否について依拠性が争点となった事案
原告:中小企業診断士
被告:経営コンサルティング会社、資格予備校
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法21条、20条
1 第8回テキスト原稿及び被告LECテキスト(第8回)は、原告メモ等に依拠して作成されたものか
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■事案の概要
『被告株式会社東京リーガルマインド(以下「被告LEC」という。)の講座におけるビデオ講義を担当した原告が,講義のために作成した資料を被告経営戦略研究所株式会社(以下「被告経営戦略」という。)に提出したところ,被告らが,原告に無断でこれを複製,改竄し,被告LECの講義用のテキストとして作成し配布したと主張して,被告らに対し,著作権(複製権)侵害及び著作者人格権(同一性保持権)侵害に基づく損害賠償請求(著作権法114条,民法709条,710条)として,連帯して140万円の支払を求める事案』(1頁以下)
<経緯>
H13 被告LECが被告コンサル会社に教材作成を委託
被告コンサル会社が原告に講義を依頼、ビデオ収録
中小企業診断士試験「2001年度2次ストレート合格講座」開講
H18 別件訴訟一審判決
H19 第8回テキストと原告メモ等との関係について原告が通知
H21.7.13 本件訴訟を提起
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■判決内容
<争点>
1 第8回テキスト原稿及び被告LECテキスト(第8回)は、原告メモ等に依拠して作成されたものか
被告予備校で開講された中小企業診断士試験「2001年度2次ストレート合格講座」で使用された第8回「財務」の講義のテキスト原稿及びテキストが、原告の新規事業開発ビデオ収録メモ(原告メモ等)に依拠して無断で作成されたものであると原告は主張しました(37頁以下)。
この点について裁判所は、
(1)作成の経緯:テキストは、平成13年2月中には完成し、LECに納品されていた
(2)形式面:主要項目の項目立ては同一であるが、小項目などで非類似
(3)内容面:原告メモ等は簡潔な記載であったり、両者は表現が異なっていたりして非類似
といった点から、原告によるビデオ講義の収録後、平成13年3月上旬に被告コンサル会社に送付した原告メモ等に依拠してテキストを作成したとする原告の主張は否定されています。
なお、原告は予備的主張として、平成13年2月中の原告メモ等の送付の可能性を主張しましたが、仮にその時期に送付がありテキスト作成において依拠があったとしても、原稿料の受領があり原告メモ等の利用について許諾していたとして、裁判所は複製権侵害性を否定しています(49頁以下)。
結論として、著作者人格権(同一性保持権)侵害性の点を含め原告の主張は認められませんでした。
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■コメント
原被告らによる別件訴訟(予備教材事件 知財高裁平成19年2月28日)は、株式会社通産資料調査会から刊行予定の「中小企業診断士合格ポイントマスター(下)」の「第9章 助言理論1コンサルティング理論2.問題の発見3.問題解決策の立案」部分の執筆を被告コンサル会社からの依頼で執筆担当した原告が、その原稿を被告コンサル会社らが被告予備校の講座で無断使用したとして著作権侵害性を争った事案でした。
この別件訴訟では、被告予備校の注意義務違反も肯定されて被告らの著作権侵害性が認められましたが、今回の訴訟は、同時期の被告予備校のビデオ講義を担当した原告が、その講義のために作成した資料メモを被告らが無断で別の回の講義のテキストに複製などしたとして新たに訴えた事案です。
原告としては、第5回「新規事業開発」の講義ビデオ収録、資料メモとの認識があったようですが、実際には第8回「財務」のビデオ収録となっており、認識のズレがありました。
すでに10年前の事実関係ですが、経緯としては、別件訴訟の検討過程でテキスト原稿と原告のメモの関係性に原告が新たに着目したというものでした(41頁以下)。
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■過去のブログ記事
2006年11月18日記事 予備校教材事件(一審)
予備校教材事件
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■参考判例
予備校教材事件(控訴審判決PDF)
知財高裁平成19年2月28日平成18(ネ)10090損害賠償請求控訴事件