最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「病院の業務管理項目完全チェックリスト集」書籍職務著作事件(控訴審)
知財高裁平成23.3.10平成22(ネ)10081損害賠償等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官 本多知成
裁判官 荒井章光
*裁判所サイト公表 2011.3.14
*キーワード:職務著作、法人著作、複製
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■事案
元従業員らが分担執筆して出版した書籍の職務著作物性が争点となった事案の控訴審
原告(控訴人) :医療・福祉経営コンサル会社
被告(被控訴人):原告元従業員
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法15条1項
1 本件著作物が控訴人の職務著作(著作権法15条1項)に該当するか
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■事案の概要
『控訴人が,本件著作物について著作権法15条1項(職務著作)に基づき著作権を有すると主張し,被控訴人が本件著作物に依拠して被控訴人書籍を作成し,出版,販売及び頒布する行為が,控訴人の本件著作物の複製権を侵害するとして,同法112条1項に基づき被控訴人書籍の出版,販売及び頒布の差止め並びにその廃棄を求め,また,不法行為に基づく損害賠償として,671万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年12月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案』(2頁)
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■判決内容
<争点>
1 本件著作物が控訴人の職務著作(著作権法15条1項)に該当するか
「(仮題)病院の新経営管理項目読本」と題する書籍原稿(本件著作物)が、控訴人の職務著作(著作権法15条1項)に該当するかどうかについて(11頁以下)、控訴審は、RGBアドベンチャー事件最高裁判決(最判平成15.4.11平成13(受)216著作権使用差止請求事件)に言及した上で、
『同法15条1項が定める「法人等の発意に基づくこと」については,法人等が著作物の作成を企画,構想し,業務に従事する者に具体的に作成を命じる場合,あるいは,業務に従事する者が法人等の承諾を得て著作物を作成する場合には,法人等の発意があると認められるが,さらに,法人等と業務に従事する者との間に雇用関係があり,法人等の業務計画や法人等が第三者との間で締結した契約等に従って,業務に従事する者が所定の職務を遂行している場合には,法人等の具体的な指示あるいは承諾がなくとも,業務に従事する者の職務の遂行上,当該著作物の作成が予定又は予期される限り,「法人等の発意に基づくこと」の要件を満たすものと解すべきである。』(12頁)
として、「法人等の発意に基づくこと」の要件を検討しています。控訴審は、
(ア)本件執筆依頼は、出版社から直接被控訴人に対して行われている
(イ)B以外の各執筆担当者が控訴人を退職後,本件著作物の執筆作業が他の控訴人従業員に命じられたこともない
(ウ)このシリーズは、いずれも個人の著作名義で公表されている
(エ)被控訴人書籍の原稿料は、出版社から被控訴人に対して支払われている
といった諸点から、法人が具体的に作成を命じた場合であるとも、従事者が承諾を得て作成する場合であるとも、また、法人の契約に従って従事者が遂行している場合であるとも、いうことはできないとして、執筆が控訴人の発意に基づくものであると評価することはできないとしています。
結論として、原審同様、職務著作の要件を欠くとして、本件著作物は控訴人の著作物と認められず控訴棄却の判断となっています。
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■コメント
書籍原稿の職務著作物性について、原審と同様その成立が否定されています。
なお、発意要件については、雇用契約関係がある場合は、委任、請負型と比較してより幅広く認定することが可能と考えられます(後掲書675頁参照)。
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■過去のブログ記事
2010年10月25日記事 原審
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■参考判例
RGBアドベンチャー事件
最判平成15.4.11平成13(受)216著作権使用差止請求事件
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■参考文献
半田正夫、松田政行編『著作権法コンメンタール1』(2009)675頁以下(作花文雄)
「病院の業務管理項目完全チェックリスト集」書籍職務著作事件(控訴審)
知財高裁平成23.3.10平成22(ネ)10081損害賠償等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官 本多知成
裁判官 荒井章光
*裁判所サイト公表 2011.3.14
*キーワード:職務著作、法人著作、複製
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■事案
元従業員らが分担執筆して出版した書籍の職務著作物性が争点となった事案の控訴審
原告(控訴人) :医療・福祉経営コンサル会社
被告(被控訴人):原告元従業員
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法15条1項
1 本件著作物が控訴人の職務著作(著作権法15条1項)に該当するか
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■事案の概要
『控訴人が,本件著作物について著作権法15条1項(職務著作)に基づき著作権を有すると主張し,被控訴人が本件著作物に依拠して被控訴人書籍を作成し,出版,販売及び頒布する行為が,控訴人の本件著作物の複製権を侵害するとして,同法112条1項に基づき被控訴人書籍の出版,販売及び頒布の差止め並びにその廃棄を求め,また,不法行為に基づく損害賠償として,671万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年12月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案』(2頁)
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■判決内容
<争点>
1 本件著作物が控訴人の職務著作(著作権法15条1項)に該当するか
「(仮題)病院の新経営管理項目読本」と題する書籍原稿(本件著作物)が、控訴人の職務著作(著作権法15条1項)に該当するかどうかについて(11頁以下)、控訴審は、RGBアドベンチャー事件最高裁判決(最判平成15.4.11平成13(受)216著作権使用差止請求事件)に言及した上で、
『同法15条1項が定める「法人等の発意に基づくこと」については,法人等が著作物の作成を企画,構想し,業務に従事する者に具体的に作成を命じる場合,あるいは,業務に従事する者が法人等の承諾を得て著作物を作成する場合には,法人等の発意があると認められるが,さらに,法人等と業務に従事する者との間に雇用関係があり,法人等の業務計画や法人等が第三者との間で締結した契約等に従って,業務に従事する者が所定の職務を遂行している場合には,法人等の具体的な指示あるいは承諾がなくとも,業務に従事する者の職務の遂行上,当該著作物の作成が予定又は予期される限り,「法人等の発意に基づくこと」の要件を満たすものと解すべきである。』(12頁)
として、「法人等の発意に基づくこと」の要件を検討しています。控訴審は、
(ア)本件執筆依頼は、出版社から直接被控訴人に対して行われている
(イ)B以外の各執筆担当者が控訴人を退職後,本件著作物の執筆作業が他の控訴人従業員に命じられたこともない
(ウ)このシリーズは、いずれも個人の著作名義で公表されている
(エ)被控訴人書籍の原稿料は、出版社から被控訴人に対して支払われている
といった諸点から、法人が具体的に作成を命じた場合であるとも、従事者が承諾を得て作成する場合であるとも、また、法人の契約に従って従事者が遂行している場合であるとも、いうことはできないとして、執筆が控訴人の発意に基づくものであると評価することはできないとしています。
結論として、原審同様、職務著作の要件を欠くとして、本件著作物は控訴人の著作物と認められず控訴棄却の判断となっています。
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■コメント
書籍原稿の職務著作物性について、原審と同様その成立が否定されています。
なお、発意要件については、雇用契約関係がある場合は、委任、請負型と比較してより幅広く認定することが可能と考えられます(後掲書675頁参照)。
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■過去のブログ記事
2010年10月25日記事 原審
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■参考判例
RGBアドベンチャー事件
最判平成15.4.11平成13(受)216著作権使用差止請求事件
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■参考文献
半田正夫、松田政行編『著作権法コンメンタール1』(2009)675頁以下(作花文雄)