最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「病院の業務管理項目完全チェックリスト集」書籍職務著作事件
東京地裁平成22.9.30平成22(ワ)35335損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 山門優
裁判官 小川卓逸
*裁判所サイト公表 2010.10.14
*キーワード: 職務著作、法人著作、複製
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■事案
元従業員らが分担執筆して出版した書籍の職務著作物性が争点となった事案
原告:医療・福祉経営コンサル会社
被告:原告元従業員
--------------------
■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法15条1項、22条
1 職務著作の成否
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■事案の概要
『原告が,「(仮題)病院の新経営管理項目読本」と題する著作物(甲第1号証。ただし,B(以下「B」という。)が執筆した「第5編院内IT化と情報管理・プライバシー保護」の部分は除く。以下この著作物を「本件著作物」という。)について著作権法15条1項に基づき著作権を有すると主張し,被告が本件著作物に依拠して被告書籍を作成し,出版,販売及び頒布する行為が,原告の本件著作物の複製権を侵害するとして,同法112条1項に基づき被告書籍の出版,販売及び頒布の差止め並びにその廃棄を求め,また,不法行為に基づき損害賠償として671万円及びこれに対する平成20年12月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案』(2頁)
<経緯>
H7.10 被告が原告会社に就職
H11.6 被告が部長に就任
H16.4 被告が取締役に就任
出版社が被告に執筆を依頼、被告は部下に分担執筆依頼
H18.8 被告が原告会社を辞職し退職
H19.2 本件書籍が出版
H20.12本件提訴
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■判決内容
<争点>
1 職務著作の成否
出版社から病院の経営管理に関する書籍の執筆を依頼された被告が、部下である従業員らと分担して執筆を担当。退職後に本件書籍が出版されました。
本件書籍が、原告の職務上作成されたものか、本件書籍のうち被告従業員らが執筆した部分の著作物の著作権の帰属について、その職務著作物性(法人著作物性 著作権法15条1項)の成否が争点となりました(11頁以下)。
本件著作物が「原告の発意に基づき」原告の従業員が「職務上作成」(15条1項)したかについて、裁判所は、執筆担当従業員が原告の業務時間内に執筆の打ち合わせのために原告の会議室を使用していたことや原告のPCなどが使用されて執筆されていた事実が認められるものの、
・原告会社と出版社で契約書が作成されていない
・原告内部において業務依頼書や業務受託報告書が作成されていない
・書籍シリーズが、いずれも個人の著作名義で公表されている
・原稿料が出版社から被告個人に支払われている
などの点から、本件書籍の執筆は被告個人に対して依頼されたものであり、各執筆担当従業員は被告からの個人的な依頼に基づき執筆を行ったものであるとして、本件書籍の執筆過程で作成された著作物である本件著作苦物は、原告の発意に基づき職務上作成されたものであるということはできないと判断されています。
結論として、本件著作物の職務著作物性が否定され複製権侵害性が認められていません。
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■コメント
原告会社の部門長であり取締役でもある被告の判断として、会社ではなく個人としての執筆とすることを決定して著作物を作成していることから、原告会社との間の労働契約や就業規則、委任契約に違反する場合は別段、著作物の著作権の帰属については、執筆者個人に帰属するという結果となります。
「病院の業務管理項目完全チェックリスト集」書籍職務著作事件
東京地裁平成22.9.30平成22(ワ)35335損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 山門優
裁判官 小川卓逸
*裁判所サイト公表 2010.10.14
*キーワード: 職務著作、法人著作、複製
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■事案
元従業員らが分担執筆して出版した書籍の職務著作物性が争点となった事案
原告:医療・福祉経営コンサル会社
被告:原告元従業員
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法15条1項、22条
1 職務著作の成否
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■事案の概要
『原告が,「(仮題)病院の新経営管理項目読本」と題する著作物(甲第1号証。ただし,B(以下「B」という。)が執筆した「第5編院内IT化と情報管理・プライバシー保護」の部分は除く。以下この著作物を「本件著作物」という。)について著作権法15条1項に基づき著作権を有すると主張し,被告が本件著作物に依拠して被告書籍を作成し,出版,販売及び頒布する行為が,原告の本件著作物の複製権を侵害するとして,同法112条1項に基づき被告書籍の出版,販売及び頒布の差止め並びにその廃棄を求め,また,不法行為に基づき損害賠償として671万円及びこれに対する平成20年12月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案』(2頁)
<経緯>
H7.10 被告が原告会社に就職
H11.6 被告が部長に就任
H16.4 被告が取締役に就任
出版社が被告に執筆を依頼、被告は部下に分担執筆依頼
H18.8 被告が原告会社を辞職し退職
H19.2 本件書籍が出版
H20.12本件提訴
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■判決内容
<争点>
1 職務著作の成否
出版社から病院の経営管理に関する書籍の執筆を依頼された被告が、部下である従業員らと分担して執筆を担当。退職後に本件書籍が出版されました。
本件書籍が、原告の職務上作成されたものか、本件書籍のうち被告従業員らが執筆した部分の著作物の著作権の帰属について、その職務著作物性(法人著作物性 著作権法15条1項)の成否が争点となりました(11頁以下)。
本件著作物が「原告の発意に基づき」原告の従業員が「職務上作成」(15条1項)したかについて、裁判所は、執筆担当従業員が原告の業務時間内に執筆の打ち合わせのために原告の会議室を使用していたことや原告のPCなどが使用されて執筆されていた事実が認められるものの、
・原告会社と出版社で契約書が作成されていない
・原告内部において業務依頼書や業務受託報告書が作成されていない
・書籍シリーズが、いずれも個人の著作名義で公表されている
・原稿料が出版社から被告個人に支払われている
などの点から、本件書籍の執筆は被告個人に対して依頼されたものであり、各執筆担当従業員は被告からの個人的な依頼に基づき執筆を行ったものであるとして、本件書籍の執筆過程で作成された著作物である本件著作苦物は、原告の発意に基づき職務上作成されたものであるということはできないと判断されています。
結論として、本件著作物の職務著作物性が否定され複製権侵害性が認められていません。
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■コメント
原告会社の部門長であり取締役でもある被告の判断として、会社ではなく個人としての執筆とすることを決定して著作物を作成していることから、原告会社との間の労働契約や就業規則、委任契約に違反する場合は別段、著作物の著作権の帰属については、執筆者個人に帰属するという結果となります。