最高裁判所HP 労働事件裁判例集より

デントリペア機密保持誓約書事件(トータルサービス競業避止義務事件)

東京高裁平成22.5.27平成21(ネ)356損害賠償等請求控訴事件PDF

東京高等裁判所第9民事部
裁判長裁判官 大坪丘
裁判官      宇田川基
裁判官      尾島明

*裁判所サイト公表 2010.7.5
*キーワード:営業秘密、機密保持契約、競業避止義務、就業規則、フランチャイズ

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■事案

自動車外装のリペアのノウハウについて営業秘密にあたるかどうかや退職従業員の競業避止義務違反性が争点となった事案

原告(被控訴人):家具・車両リペア業フランチャイザー
被告(控訴人) :原告元従業員

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■結論

控訴人敗訴部分取り消し

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■争点

条文 民法415条、709条

1 元従業員が競業避止義務を負うか

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■事案の概要

「被控訴人が,かつてその従業員であった控訴人に対して,就業規則並びに在職中及び退職時に締結した機密保持契約に基づく競業避止義務に違反して,被控訴人が実施し,又はフランチャイズ事業化している自動車の外装のへこみを修復する事業(以下「デントリペア事業」という。)又は家具や自動車の内装の修復や色替えを行う事業(以下「インテリアリペア事業」という。)を行ったこと及び被控訴人の顧客を奪ったことを理由に,債務不履行及び不法行為に基づく損害賠償1208万円並びにこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払並びに日本国内における上記競業避止義務に違反する行為の差止めを請求する訴訟である。
 原判決は,被控訴人の請求を,債務不履行に基づく674万円の損害賠償及びこれに対する平成18年10月20日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求並びに日本国内において,判決確定から2年間,原判決別紙目録1及び2記載の各技術と同一内容の技術を用いた車両外装のへこみを修復する事業及び家具・車両内装の修復や色替えを中心とした事業の実施の差止請求の限度で認容し,その余の請求を棄却したところ,控訴人が控訴をした」(1頁以下)

<経緯>

H2  被告が原告に入社
H7  原告がリペア事業を導入、被告を米国研修に派遣
H15 被告が原告を退社
     被告がリペア業を開業

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■判決内容

<争点>

1 元従業員が競業避止義務を負うか

被告元従業員は、原告との間で機密保持誓約書を原告リペア事業の開始時及び被告従業員の退職時に取り交わすとともに原告の就業規則にも機密保持規定がありました。
元従業員が退職後、原告のリペア事業と競業する事業を個人事業として開業したことから、機密保持義務・競業避止義務違反として損害賠償請求及び差止請求がされていました。

原審では、被告のリペア技術の営業秘密性を肯定したうえで、競業避止義務違反を認定。損害賠償と差止請求を認めていました。
しかし、控訴審は、リペア技術が原告だけが保有・利用できるような特殊な技術ではなく、これを習得しようとする者はだれでも原告以外のリペア事業者が提供する講習を受講して得ることができる技術であるとして営業秘密性を否定。原審の判断に反して原告の主張を認めていません(4頁以下)。

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■コメント

自動車のキズやヘコミを修復するリペア業務については、フランチャイズ展開されていて街中でも色々な業者の看板を目にします。特殊工具を利用して内側からヘコミを回復する技術などがカー雑誌の記事で紹介されていたりします。

競業避止契約の有効性については、裁判例の集積があるわけですが(後掲書参照)、営業秘密性の判断についても、不正競争防止法2条6項の解釈論を足掛かりに検討が加えられることになります。

本件では、原審では元従業員に対して米国研修を受けさせるなど、原告会社としても元従業員の技術取得に多額の費用を掛けているという点にも配慮して元従業員の競業避止義務違反性を肯定しましたが、控訴審では機密事項の営業秘密性自体を否定して元従業員の職業選択の自由、営業の自由を重視する結果となっています。

控訴審では競業避止契約の有効性まで進んで判断されていませんが、営業地域や制限期間、職種の範囲の限定もなく、また自社フランチャイザーにならない限りリペア業務が一切行えないとする代償措置の内容の契約では、従業員向けの縛りとしてはきついものがあります。

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■参考判例

原審
東京地裁平成20.11.18平成18(ワ)22955損害賠償等請求事件

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■参考文献

永野周志ほか『営業秘密と競業避止義務の法務』(2008)247頁以下