最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「恋愛の神様」ケータイコンテンツプログラム事件
東京地裁平成22.4.28平成18(ワ)24088損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 岡本岳
裁判官 坂本康博
裁判官 中村恭
*裁判所サイト公表 2010.5.21
*キーワード:創作性、著作者性、編集著作物性、翻案、公衆送信権、プログラム、ソフトウェア
--------------------
■事案
携帯電話コンテンツのソフトウェアの利用許諾契約違反性などが争点となった事案
原告:ソフトウェア開発販売会社
被告:モバイルコンテンツ開発配信会社ら
--------------------
■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法21条、27条、20条、114条3項、会社法810条
1 プログラム等の類否
2 期間制限違反等
3 著作者人格権侵害性
4 複製物の交付等
5 許諾契約違反性
6 被告会社らの責任
7 損害論
--------------------
■事案の概要
『原告は,別紙第1ソフトウェア目録記載のソフトウェアは,プログラム以外の部分も含めてすべての部分について原告が著作者である著作物であるところ(原告代表者の発意に基づき原告代表者が原告の業務につき職務上作成したこと,又は同様に原告代表者が作成し原告の著作名義の下に公表することによる職務著作),被告らがこれら著作物を著作物の利用許諾期間を超えて使用したこと(以下「期間制限違反」という。),利用許諾数量を超えて使用したこと(以下「数量制限違反」という。),許諾条件を越えて改変したこと(以下「改変」という。),原告の著作者名を表示しなかったこと(以下「氏名非表示」という。),第三者に複製物を交付してその内容を開示したこと(以下「複製物の交付」という。),第三者に改変若しくは2次的著作物を作成させたこと(以下「翻案」という。)が著作権侵害行為に当たるとともに,著作物の利用許諾契約違反の債務不履行(以下「許諾契約違反」という。)にも当たり(選択的併合),また,被告らがこれらソフトウェアのプログラム部分を使用していることが著作権法113条2項のみなし侵害行為(以下「みなし侵害」という。)に当たると主張している。』(4頁)
<経緯>
H7 原告会社設立
H7.9 被告HD設立
H10 原告が被告HDにサーバ等を販売
H11 原告が被告HDからプログラムの開発を受託
H11.2 「恋愛の神様」携帯配信開始
H12.3.27 サーバ管理に関して原告が内容証明郵送
H12.5 関係者で協議
被告HDが「恋愛の神様」C言語開発を外注
H12.6.15 確認書締結
H13.7.31 被告HDがデリリオスにコンテンツ売却
H15.7 前訴(東京地裁H15(ワ)16027)提訴
H17.3.31 確認書での期間満了日
H18.6.1 被告HDを新設分割会社とする会社分割実施
H18.9.1 裁判上の和解、和解確認書作成
H18.10.30 本訴提起
H22.2.23 訴え変更申立て、請求額を拡張
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■判決内容
<争点>
1 プログラム等の類否
原告がPHP言語で制作した携帯コンテンツ向けプログラムを被告がC言語で制作するなどした行為の著作権侵害性が争点となりました。
1.プログラム等の類否 創作性 × 類似性 ×
2.テキスト文章の類否 著作者性× 創作性 ×
3.画像の類否 著作者性○ 創作性 ○ 依拠性 ○ 類似性 ○
4.データベースの類否
(1)データ定義ファイル 創作性 × 類似性 ×
(2)原告会員情報 創作性 × 類似性 ×
5.データ定義ファイルの編集著作物性 創作性 ×
6.画面表示 創作性 ×
7.数値、記号 表現性 ×
結論として、カラー画像の部分(186頁以下)だけ著作権侵害性が肯定されています(137頁以下)。
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2 期間制限違反等
原被告間で締結されたコンテンツの利用関係に関する確認書(20頁以下)の期間制限に違反した原告の著作権が及ぶ被告カラー画像の公衆送信が認められています(197頁以下)。
なお、本件確認書3条や前訴和解8条に関わる数量制限違反(負荷分散のための複製)を理由とする著作権侵害性は否定されています(199頁以下)。
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3 著作者人格権侵害性
原告は、同一性保持権、氏名表示権侵害性についても主張しましたが、裁判所は容れていません(220頁以下)。
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4 複製物の交付等
被告がプログラム開発にあたって外部の開発会社に委託しており、その際のソースコードの複製物交付の著作権侵害性を原告は争点としていますが、裁判所は容れていません(222頁以下)。
そのほか、第三者に改変や二次的著作物を作成させた翻案行為や被告らの使用行為のみなし侵害行為(113条2項)の成否についても同様に裁判所は認めていません(231頁以下)。
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5 許諾契約違反性
期間制限に違反した原告の著作権が及ぶ被告カラー画像の公衆送信行為に不法行為性が認められていますが、この部分についてだけ契約違反性も肯定されています(237頁以下)。
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6 被告会社らの責任
会社分割前後の被告会社らの不法行為責任の関係について争点となっています(234頁以下)。
結論としては、新設分割株式会社と新設分割設立会社の不真正連帯債務関係となる部分と新設分割設立会社の単独責任部分とが認定されています。
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7 損害論
被告らに過失があることを前提に、著作権法114条3項(使用料相当額)に基づき使用料率10%、寄与率0.01で算定、被告会社らが連帯して負う損害額は35万円、弁護士費用3万円の合計38万円(被告インデックスは単独で77万円)と判断されています(238頁以下)。
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■コメント
被告となったのは、携帯コンテンツ配信事業者として有名なインデックス社ですが、携帯コンテンツ向けプログラム開発を担当していた原告と紛争となっています。
結論としては、携帯電話画面に表示されるカラー画像の部分についてだけ著作権侵害、契約違反が認められるにとどまっています。
原告がサーバを一手に管理する状況があったようですが(18頁以下)、上場を検討していたインデックス社としては、零細企業にサーバやシステムを管理させるのは困難との判断をしたのかもしれません。
とりあえず現状確認の為に作られた感のある本件確認書は、裁判所に「およそ契約書としては不十分なものというほかない」(199頁)と、手厳しい評価です。
実際、似たような状況で基幹システムの著作権譲渡契約書を作成・検討したことがありますが、ストックオプションで譲渡価格のバランスを取ることや譲渡の範囲(モジュールの切り分け)なども含め、双方の将来の事業展開についての思惑が交錯して難しい判断がそこでは求められていました。
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■参考サイト
IR情報 株式会社インデックス・ホールディングス
(平成22年2月26日)
株式会社ハイパーキューブとの訴訟についてPDF
(平成22年4月28日)
訴訟の判決に関するお知らせPDF
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■追記(2010.6.1)
参考サイト
恋愛の神様DX 公式ウェブサイト
「恋愛の神様」ケータイコンテンツプログラム事件
東京地裁平成22.4.28平成18(ワ)24088損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 岡本岳
裁判官 坂本康博
裁判官 中村恭
*裁判所サイト公表 2010.5.21
*キーワード:創作性、著作者性、編集著作物性、翻案、公衆送信権、プログラム、ソフトウェア
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■事案
携帯電話コンテンツのソフトウェアの利用許諾契約違反性などが争点となった事案
原告:ソフトウェア開発販売会社
被告:モバイルコンテンツ開発配信会社ら
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法21条、27条、20条、114条3項、会社法810条
1 プログラム等の類否
2 期間制限違反等
3 著作者人格権侵害性
4 複製物の交付等
5 許諾契約違反性
6 被告会社らの責任
7 損害論
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■事案の概要
『原告は,別紙第1ソフトウェア目録記載のソフトウェアは,プログラム以外の部分も含めてすべての部分について原告が著作者である著作物であるところ(原告代表者の発意に基づき原告代表者が原告の業務につき職務上作成したこと,又は同様に原告代表者が作成し原告の著作名義の下に公表することによる職務著作),被告らがこれら著作物を著作物の利用許諾期間を超えて使用したこと(以下「期間制限違反」という。),利用許諾数量を超えて使用したこと(以下「数量制限違反」という。),許諾条件を越えて改変したこと(以下「改変」という。),原告の著作者名を表示しなかったこと(以下「氏名非表示」という。),第三者に複製物を交付してその内容を開示したこと(以下「複製物の交付」という。),第三者に改変若しくは2次的著作物を作成させたこと(以下「翻案」という。)が著作権侵害行為に当たるとともに,著作物の利用許諾契約違反の債務不履行(以下「許諾契約違反」という。)にも当たり(選択的併合),また,被告らがこれらソフトウェアのプログラム部分を使用していることが著作権法113条2項のみなし侵害行為(以下「みなし侵害」という。)に当たると主張している。』(4頁)
<経緯>
H7 原告会社設立
H7.9 被告HD設立
H10 原告が被告HDにサーバ等を販売
H11 原告が被告HDからプログラムの開発を受託
H11.2 「恋愛の神様」携帯配信開始
H12.3.27 サーバ管理に関して原告が内容証明郵送
H12.5 関係者で協議
被告HDが「恋愛の神様」C言語開発を外注
H12.6.15 確認書締結
H13.7.31 被告HDがデリリオスにコンテンツ売却
H15.7 前訴(東京地裁H15(ワ)16027)提訴
H17.3.31 確認書での期間満了日
H18.6.1 被告HDを新設分割会社とする会社分割実施
H18.9.1 裁判上の和解、和解確認書作成
H18.10.30 本訴提起
H22.2.23 訴え変更申立て、請求額を拡張
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■判決内容
<争点>
1 プログラム等の類否
原告がPHP言語で制作した携帯コンテンツ向けプログラムを被告がC言語で制作するなどした行為の著作権侵害性が争点となりました。
1.プログラム等の類否 創作性 × 類似性 ×
2.テキスト文章の類否 著作者性× 創作性 ×
3.画像の類否 著作者性○ 創作性 ○ 依拠性 ○ 類似性 ○
4.データベースの類否
(1)データ定義ファイル 創作性 × 類似性 ×
(2)原告会員情報 創作性 × 類似性 ×
5.データ定義ファイルの編集著作物性 創作性 ×
6.画面表示 創作性 ×
7.数値、記号 表現性 ×
結論として、カラー画像の部分(186頁以下)だけ著作権侵害性が肯定されています(137頁以下)。
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2 期間制限違反等
原被告間で締結されたコンテンツの利用関係に関する確認書(20頁以下)の期間制限に違反した原告の著作権が及ぶ被告カラー画像の公衆送信が認められています(197頁以下)。
なお、本件確認書3条や前訴和解8条に関わる数量制限違反(負荷分散のための複製)を理由とする著作権侵害性は否定されています(199頁以下)。
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3 著作者人格権侵害性
原告は、同一性保持権、氏名表示権侵害性についても主張しましたが、裁判所は容れていません(220頁以下)。
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4 複製物の交付等
被告がプログラム開発にあたって外部の開発会社に委託しており、その際のソースコードの複製物交付の著作権侵害性を原告は争点としていますが、裁判所は容れていません(222頁以下)。
そのほか、第三者に改変や二次的著作物を作成させた翻案行為や被告らの使用行為のみなし侵害行為(113条2項)の成否についても同様に裁判所は認めていません(231頁以下)。
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5 許諾契約違反性
期間制限に違反した原告の著作権が及ぶ被告カラー画像の公衆送信行為に不法行為性が認められていますが、この部分についてだけ契約違反性も肯定されています(237頁以下)。
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6 被告会社らの責任
会社分割前後の被告会社らの不法行為責任の関係について争点となっています(234頁以下)。
結論としては、新設分割株式会社と新設分割設立会社の不真正連帯債務関係となる部分と新設分割設立会社の単独責任部分とが認定されています。
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7 損害論
被告らに過失があることを前提に、著作権法114条3項(使用料相当額)に基づき使用料率10%、寄与率0.01で算定、被告会社らが連帯して負う損害額は35万円、弁護士費用3万円の合計38万円(被告インデックスは単独で77万円)と判断されています(238頁以下)。
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■コメント
被告となったのは、携帯コンテンツ配信事業者として有名なインデックス社ですが、携帯コンテンツ向けプログラム開発を担当していた原告と紛争となっています。
結論としては、携帯電話画面に表示されるカラー画像の部分についてだけ著作権侵害、契約違反が認められるにとどまっています。
原告がサーバを一手に管理する状況があったようですが(18頁以下)、上場を検討していたインデックス社としては、零細企業にサーバやシステムを管理させるのは困難との判断をしたのかもしれません。
とりあえず現状確認の為に作られた感のある本件確認書は、裁判所に「およそ契約書としては不十分なものというほかない」(199頁)と、手厳しい評価です。
実際、似たような状況で基幹システムの著作権譲渡契約書を作成・検討したことがありますが、ストックオプションで譲渡価格のバランスを取ることや譲渡の範囲(モジュールの切り分け)なども含め、双方の将来の事業展開についての思惑が交錯して難しい判断がそこでは求められていました。
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■参考サイト
IR情報 株式会社インデックス・ホールディングス
(平成22年2月26日)
株式会社ハイパーキューブとの訴訟についてPDF
(平成22年4月28日)
訴訟の判決に関するお知らせPDF
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■追記(2010.6.1)
参考サイト
恋愛の神様DX 公式ウェブサイト