最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
FX自動売買プログラムリバースエンジニアリング事件(控訴審)
知財高裁平成22.4.27平成21(ネ)10070損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 齊木教朗
裁判官 大須賀滋
*裁判所サイト公表 2010.4.28
*キーワード:リバースエンジニアリング、頒布、複製、翻案、損害、権利の濫用
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■事案
外国為替証拠金取引(FX取引)用トレーディングソフトウェア関連のプログラム(自動売買プログラム)の複製・翻案行為(リバースエンジニアリング)の違法性が争点となった事案の控訴審
原告(控訴人) :コンピュータプログラム開発業者
被告(被控訴人):プログラマーら
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法21条、113条1項2号、民法709条
1 被告プログラムが頒布されたか
2 原告に損害が生じたか
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■判決内容
<争点>
1 被告プログラムが頒布されたか
原告(控訴人)は、被告(被控訴人)Y2が原告の著作物である「おじゃるデブシステム」「スイングおじゃる原告版」の本件各プログラムを無断で改変して被告プログラムを作成し、本件各プログラムに係る原告の著作権(複製権、翻案権)を侵害し、被告Y1及びY3が、被告プログラムを原告の著作権を侵害する行為によって作成されたプログラムであるとを知りながら、これを頒布し又は頒布目的で所持したことにより原告の著作権を侵害した(著作権法113条1項2号)と主張して、不法行為(民法709条、719条)に基づく損害賠償を請求しました(1頁以下、原審4頁参照)。
結論としては、被告らが被告プログラムを頒布した事実、被告Y1及びY3が頒布目的で被告プログラムを所持していた事実が認められないと判断されています(4頁以下)。
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2 原告に損害が生じたか
被告プログラムの作成によって原告に損害が生じているかどうかについて、裁判所は、
(1)本件各プログラムの性質、機能
(2)原告の事情
(3)ソースコード開示の経緯
(4)本件各プログラムと被告作成プログラムの関係
(5)被告プログラムの機能、目的
以上の諸点について、
『これらの事情を総合考慮すると,被告プログラムが本件プログラム1及び2の複製物,翻案物であると評価されたとしても,原告に財産的又は非財産的損害が発生したものということは到底できない』(5頁)
として、損害の発生を否定。
原告の被告Y2に対する著作権侵害による損害賠償請求を否定しています。
結論として、原審同様棄却の判断となっています。
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■コメント
原審では、被告Y2に対する原告の損害賠償請求が権利の濫用(民法1条3項)として排斥され、被告によるリバースエンジニアリングの抗弁が認められる結果となった事案でしたが、控訴審では、この部分(原審PDF23頁 2(3)以下)に触れることなく「損害が生じていない」という要件部分で原審同様の請求棄却の判断となっています。
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■過去のブログ記事
原審記事(2009年11月08日)
FX自動売買プログラムリバースエンジニアリング事件
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■参考判例
原審
大阪地裁平成21.10.15平成19(ワ)16747損害賠償請求事件判決PDF
なお、権利濫用に言及する判例として、キューピー事件(原審)東京地裁平成11.11.17判決(判時1704号134頁以下)参照
東京地裁平成11年11月17日平成10(ワ)13236
東京地裁平成11年11月17日平成10(ワ)16389
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■参考文献
田村善之『著作権法概説第二版』(2001)197頁以下
FX自動売買プログラムリバースエンジニアリング事件(控訴審)
知財高裁平成22.4.27平成21(ネ)10070損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 齊木教朗
裁判官 大須賀滋
*裁判所サイト公表 2010.4.28
*キーワード:リバースエンジニアリング、頒布、複製、翻案、損害、権利の濫用
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■事案
外国為替証拠金取引(FX取引)用トレーディングソフトウェア関連のプログラム(自動売買プログラム)の複製・翻案行為(リバースエンジニアリング)の違法性が争点となった事案の控訴審
原告(控訴人) :コンピュータプログラム開発業者
被告(被控訴人):プログラマーら
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法21条、113条1項2号、民法709条
1 被告プログラムが頒布されたか
2 原告に損害が生じたか
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■判決内容
<争点>
1 被告プログラムが頒布されたか
原告(控訴人)は、被告(被控訴人)Y2が原告の著作物である「おじゃるデブシステム」「スイングおじゃる原告版」の本件各プログラムを無断で改変して被告プログラムを作成し、本件各プログラムに係る原告の著作権(複製権、翻案権)を侵害し、被告Y1及びY3が、被告プログラムを原告の著作権を侵害する行為によって作成されたプログラムであるとを知りながら、これを頒布し又は頒布目的で所持したことにより原告の著作権を侵害した(著作権法113条1項2号)と主張して、不法行為(民法709条、719条)に基づく損害賠償を請求しました(1頁以下、原審4頁参照)。
結論としては、被告らが被告プログラムを頒布した事実、被告Y1及びY3が頒布目的で被告プログラムを所持していた事実が認められないと判断されています(4頁以下)。
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2 原告に損害が生じたか
被告プログラムの作成によって原告に損害が生じているかどうかについて、裁判所は、
(1)本件各プログラムの性質、機能
(2)原告の事情
(3)ソースコード開示の経緯
(4)本件各プログラムと被告作成プログラムの関係
(5)被告プログラムの機能、目的
以上の諸点について、
『これらの事情を総合考慮すると,被告プログラムが本件プログラム1及び2の複製物,翻案物であると評価されたとしても,原告に財産的又は非財産的損害が発生したものということは到底できない』(5頁)
として、損害の発生を否定。
原告の被告Y2に対する著作権侵害による損害賠償請求を否定しています。
結論として、原審同様棄却の判断となっています。
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■コメント
原審では、被告Y2に対する原告の損害賠償請求が権利の濫用(民法1条3項)として排斥され、被告によるリバースエンジニアリングの抗弁が認められる結果となった事案でしたが、控訴審では、この部分(原審PDF23頁 2(3)以下)に触れることなく「損害が生じていない」という要件部分で原審同様の請求棄却の判断となっています。
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■過去のブログ記事
原審記事(2009年11月08日)
FX自動売買プログラムリバースエンジニアリング事件
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■参考判例
原審
大阪地裁平成21.10.15平成19(ワ)16747損害賠償請求事件判決PDF
なお、権利濫用に言及する判例として、キューピー事件(原審)東京地裁平成11.11.17判決(判時1704号134頁以下)参照
東京地裁平成11年11月17日平成10(ワ)13236
東京地裁平成11年11月17日平成10(ワ)16389
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■参考文献
田村善之『著作権法概説第二版』(2001)197頁以下