最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「冬のソナタ」主題歌著作権管理事件
東京地裁平成22.2.10平成16(ワ)18443損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官 菊池絵理
裁判官 坂本三郎
*裁判所サイト公表 2010/3/12
*キーワード:信託譲渡、使用料規程、カラオケ、注意義務
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■事案
韓国楽曲の著作権管理に関して、著作権等管理事業法に基づく文化庁届出使用料規程の合理性やカラオケ事業者の注意義務違反性が争点となった事案
原告:音楽著作権管理団体
被告:通信カラオケ事業者
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■結論
請求一部認容、却下
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■争点
条文 著作権法21条、23条、114条3項、著作権等管理事業法13条、旧信託法63条
1 著作権信託契約の一方的な解約の肯否
2 解散が信託終了事由にあたるか
3 信託終了後の著作権の帰属
4 カラオケ事業者の故意過失
5 損害論
6 その他(権利濫用、禁反言)
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■判決内容
<経緯>
H14.6.28 原告が文化庁に著作権等管理事業者として登録
H14.8 原告がAMEI(社団法人音楽電子事業協会)等と交渉
H14.8.9 原告が文化庁に使用料規程を提出
H14.10.17 TMAと原告が著作権信託契約締結
H16.8.31 原告が本訴提起
H18.7.14 TMAが解除の意思表示
H18.10.4 TMAが解散の決議
H19.3.28 TMAが清算結了の登記
H19.12.10 ジャスラックとKOMCAが相互管理契約締結
(管理委託関係)
韓国の作詞家、作曲家、音楽出版社(原権利者)
↓ ↓
↓ 株式会社ザ・ミュージックアジア(TMA 韓国代理仲介業者)
↓ ↓
原告
(直接契約か、原権利者・TMA契約+TMA・原告契約の流れ)
*韓国国内で音楽著作権信託管理事業を行うのは、韓国音楽著作権協会(KOMCA)のみ
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<争点>
1 著作権信託契約の一方的な解約の肯否
著作権等管理事業法上の著作権管理事業者である原告が、韓国楽曲の著作権について信託譲渡を受けた上で管理しているとして、利用者であるカラオケ事業者を被告として著作権(複製権、公衆送信権)侵害を主張しました。
原告が管理していたとする韓国楽曲(請求対象楽曲:1297楽曲)のうち、原告に著作権が帰属していたかどうか被告との間で争点(契約上の問題や楽曲リストの不存在など)となっているものがあります。
ところで、原告に著作権の帰属が認められた楽曲について、韓国法人の音楽出版社である株式会社ザ・ミュージックアジア(TMA)が原告との間で著作権信託管理契約を締結したものの、その後TMAが同契約を解除して解散したことから、TMAによる一方的な解約の効力が争点の一つとされました。
この点について、被告は、有償委任において受任者の利益をも目的とする場合は一方的な解約は認められないと反論しました。
しかし、裁判所は、解除の効力について法性決定の上、日本法が準拠法とされ、契約条項に基づく解除(旧信託法59条、同契約19条1項)を肯定。同契約は終了したと判断しています(64頁以下)。
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2 解散が信託終了事由にあたるか
TMAの解散等の事情が著作権信託管理契約に及ぼす影響について、裁判所は、原権利者・TMA契約は契約上準拠法が韓国法、TMA・原告契約は契約上準拠法が日本国法と定められていたことから、各国の法律が準拠法となると判断。
TMA解散により本来の信託の目的を達することができなくなるため、韓国信託法55条、旧信託法56条により信託目的不達成として、信託の終了事由が発生したと認めるのが相当であると判断しています(66頁以下)。
なお、被告は、原権利者・TMA契約の法的性質は期限付きの著作権譲渡契約であると反論しましたが、裁判所は信託譲渡契約と判断しています(67頁)。
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3 信託終了後の著作権の帰属
信託が終了した場合の残務処理について、信託関係は信託財産がその帰属権利者に移転するまではなお存続するとみなされることから(法定信託 旧信託法63条、韓国信託法61条)、法定信託の存続及び清算事務の内容等が争点となっています(67頁以下)。
この点について、裁判所は、
『平成21年7月時点においては,原権利者の半数程度とは容易に連絡が取れない状況となっていること等からすると,仮に,原告が,使用料相当額の損害金を回収したとしても,帰属権利者がその回収等を信託の清算事務として原告に委ねる旨の特段の意思を明確に表明していない限りは,その後の,原告とTMA間,TMAと原権利者間の各清算事務が円滑に遂行されることは到底期待できない。』
『本件では,帰属権利者が,原告に対し,信託の清算事務として,本件訴訟における使用料相当額の損害賠償請求権を行使すること,及び,訴訟を追行することを認めるとの意思を表明している場合(本件においては,確認書Bにおいて,原権利者のこのような意思が表明されている。)に限り,原告に上記の著作権侵害に基づく損害賠償請求権が帰属し,かつ,これを行使することができるというべきである。』(68頁以下)
とした上で、
・原権利者・TMA契約及びTMA・原告契約に基づくもの
作詞256楽曲
作曲191楽曲
について原告に損害賠償請求権が帰属すると判断されています。
その他、最終的には、原告が主張した1297楽曲の内、損害賠償請求が認められたものは以下の楽曲数となりました。
・不知楽曲(64頁以下)
作詞18楽曲
作曲28楽曲
・直接契約(79頁以下)
作詞15楽曲
作曲56楽曲
合計 作詞289楽曲 作曲275楽曲
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4 カラオケ事業者の故意過失
業務用通信カラオケ事業者である被告は、原告から楽曲のリストの交付を受けるまでは対象楽曲が分からず原告請求対象楽曲の利用の継続について過失はない等と反論しました(88頁以下)。
しかし、裁判所は、平成13年10月1日著作権等管理事業法施行や原告とAMEI(被告も会員)との交渉の経緯を踏まえ、
『業務用通信カラオケ事業者であれば,他人の著作物を利用する際には,その著作権を侵害することのないよう,当該著作権の帰属を調査し,事前に著作権者から複製又は公衆送信の許諾を得るべく万全の注意を尽くす義務がある。』
『被告は,これを怠り,漫然と請求対象楽曲の利用を継続してきたのであるから,被告には,過失があったというべきである。』
と判断しています。
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5 損害論
業務用通信カラオケの分野ではジャスラック管理楽曲が大多数であり、ジャスラックの使用料規程に基づき算定される使用料が事実上の基準として機能していることから、著作権法114条3項(使用料相当額損害金)の判断に当たりこれを一応の基準とすることに合理性があると判断。また、原告使用料規程内容の合理性も否定。
結論としては、原告使用料規程によらず、また、ジャスラック規程の包括的利用許諾契約方式ではなく、個別課金方式により楽曲毎に損害額を個別算定しています(89頁以下)。
(基本使用料1ヶ月各100円、利用単位使用料各20円)
(1)基本使用料相当損害金
作詞 49万9300円
作曲 42万2435円
(2)利用単位使用料相当損害金
作詞
総アクセス数253万9241回×289/1297曲×20円=1131万5969円
作曲
総アクセス数253万9241回×275/1297曲×20円=1076万7791円
(1)と(2)合計 2300万5495円
なお、被告は、過失相殺(民法722条2項)を主張しましたが、容れられていません(96頁)。
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6 その他(権利濫用、禁反言)
被告は、権利濫用や禁反言を主張しましたが、この点についても容れられていません(96頁)。
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■コメント
判決文では、対象楽曲となった韓国の具体的な楽曲名が分かりませんが、ニュースによると、「ドラマ「冬のソナタ」の主題歌など韓国の約1200曲を無断でカラオケ用に使っているとして、著作権管理会社「アジア著作協会」(東京)が業務用カラオケ大手第一興商(同)に約9億1千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は10日、請求の一部を認め、約2300万円の支払いを命じた。
清水節裁判長は、289曲の歌詞と275曲のメロディーに対する第一興商側の著作権侵害を認めたが、「冬ソナ」の主題歌「最初から今まで」(邦題)を含む大半については請求を退けた。」(韓国カラオケで著作権侵害 第一興商、損害賠償2300万円 - 西日本新聞 2010年2月10日 20:09)とのことです。
音楽出版社が解散して清算した場合の信託著作権の帰属や清算事務の内容、また、文化庁届出使用料規程の合理性(93頁)についても言及がされていて、知財(著作権)信託ビジネスでの「管理委託契約約款」「使用料規程」策定の場合に参考となる事案でした。
加えて、アジア著作協会立ち上げの際に関係団体意見聴取手続として利用者団体約100社を訪問したことなど、著作権管理団体立ち上げには手間が掛るということが判決文から伺えるところです。
なお、著作権管理団体との信託契約の解除については、アジア著作協会の場合、管理委託契約約款第8章23条以下に規定があります。この点、ジャスラックの著作権信託契約約款を見てみると、22条以下に規定があります(委託者からの解除の場合、3ヶ月の猶予期間を見込んで、かつ最初に到来する3月31日に手終い)。
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■参考サイト
・被告プレスリリース(平成16年10月22日)
第一興商 アジア著作協会訴訟に関連する報道について
・株式会社アジア著作協会
管理委託契約約款PDF
使用料規程PDF
・社団法人音楽電子事業協会(AMEI)との協議の経緯について
平成15年度社団法人 音楽電子事業協会 事業報告PDF
・2008年1月1日から社団法人日本音楽著作権協会(ジャスラック)と韓国音楽著作権協会(KOMCA)との間の相互管理契約 プレスリリース(2007.12.10)
KOMCA(韓国音楽著作権協会)との相互管理契約を締結
・韓国の著作権管理ビジネスについて
平成19年1月文化庁長官官房国際課「韓国における著作権侵害対策ハンドブック」PDF
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■参考判例
使用料規程の内容等が係わる事案について
社交ダンス教室事件(一審)
名古屋地裁平成15.2.7平成14(ワ)2148著作権侵害差止等請求事件
(控訴審)
名古屋高裁平成16.3.4平成15(ネ)233著作権侵害差止等請求控訴事件
ケーブルテレビ3社楽曲使用料事件(控訴審)
知財高裁平成17.8.30平成17(ネ)10009等著作権使用料請求控訴事件
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■参考文献
鈴木道夫「JASRACへの音楽著作権の信託」『JASRAC概論』(2009)99頁以下
市村直也「JASRACの音楽著作権管理」同上書137頁以下
「冬のソナタ」主題歌著作権管理事件
東京地裁平成22.2.10平成16(ワ)18443損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官 菊池絵理
裁判官 坂本三郎
*裁判所サイト公表 2010/3/12
*キーワード:信託譲渡、使用料規程、カラオケ、注意義務
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■事案
韓国楽曲の著作権管理に関して、著作権等管理事業法に基づく文化庁届出使用料規程の合理性やカラオケ事業者の注意義務違反性が争点となった事案
原告:音楽著作権管理団体
被告:通信カラオケ事業者
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■結論
請求一部認容、却下
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■争点
条文 著作権法21条、23条、114条3項、著作権等管理事業法13条、旧信託法63条
1 著作権信託契約の一方的な解約の肯否
2 解散が信託終了事由にあたるか
3 信託終了後の著作権の帰属
4 カラオケ事業者の故意過失
5 損害論
6 その他(権利濫用、禁反言)
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■判決内容
<経緯>
H14.6.28 原告が文化庁に著作権等管理事業者として登録
H14.8 原告がAMEI(社団法人音楽電子事業協会)等と交渉
H14.8.9 原告が文化庁に使用料規程を提出
H14.10.17 TMAと原告が著作権信託契約締結
H16.8.31 原告が本訴提起
H18.7.14 TMAが解除の意思表示
H18.10.4 TMAが解散の決議
H19.3.28 TMAが清算結了の登記
H19.12.10 ジャスラックとKOMCAが相互管理契約締結
(管理委託関係)
韓国の作詞家、作曲家、音楽出版社(原権利者)
↓ ↓
↓ 株式会社ザ・ミュージックアジア(TMA 韓国代理仲介業者)
↓ ↓
原告
(直接契約か、原権利者・TMA契約+TMA・原告契約の流れ)
*韓国国内で音楽著作権信託管理事業を行うのは、韓国音楽著作権協会(KOMCA)のみ
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<争点>
1 著作権信託契約の一方的な解約の肯否
著作権等管理事業法上の著作権管理事業者である原告が、韓国楽曲の著作権について信託譲渡を受けた上で管理しているとして、利用者であるカラオケ事業者を被告として著作権(複製権、公衆送信権)侵害を主張しました。
原告が管理していたとする韓国楽曲(請求対象楽曲:1297楽曲)のうち、原告に著作権が帰属していたかどうか被告との間で争点(契約上の問題や楽曲リストの不存在など)となっているものがあります。
ところで、原告に著作権の帰属が認められた楽曲について、韓国法人の音楽出版社である株式会社ザ・ミュージックアジア(TMA)が原告との間で著作権信託管理契約を締結したものの、その後TMAが同契約を解除して解散したことから、TMAによる一方的な解約の効力が争点の一つとされました。
この点について、被告は、有償委任において受任者の利益をも目的とする場合は一方的な解約は認められないと反論しました。
しかし、裁判所は、解除の効力について法性決定の上、日本法が準拠法とされ、契約条項に基づく解除(旧信託法59条、同契約19条1項)を肯定。同契約は終了したと判断しています(64頁以下)。
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2 解散が信託終了事由にあたるか
TMAの解散等の事情が著作権信託管理契約に及ぼす影響について、裁判所は、原権利者・TMA契約は契約上準拠法が韓国法、TMA・原告契約は契約上準拠法が日本国法と定められていたことから、各国の法律が準拠法となると判断。
TMA解散により本来の信託の目的を達することができなくなるため、韓国信託法55条、旧信託法56条により信託目的不達成として、信託の終了事由が発生したと認めるのが相当であると判断しています(66頁以下)。
なお、被告は、原権利者・TMA契約の法的性質は期限付きの著作権譲渡契約であると反論しましたが、裁判所は信託譲渡契約と判断しています(67頁)。
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3 信託終了後の著作権の帰属
信託が終了した場合の残務処理について、信託関係は信託財産がその帰属権利者に移転するまではなお存続するとみなされることから(法定信託 旧信託法63条、韓国信託法61条)、法定信託の存続及び清算事務の内容等が争点となっています(67頁以下)。
この点について、裁判所は、
『平成21年7月時点においては,原権利者の半数程度とは容易に連絡が取れない状況となっていること等からすると,仮に,原告が,使用料相当額の損害金を回収したとしても,帰属権利者がその回収等を信託の清算事務として原告に委ねる旨の特段の意思を明確に表明していない限りは,その後の,原告とTMA間,TMAと原権利者間の各清算事務が円滑に遂行されることは到底期待できない。』
『本件では,帰属権利者が,原告に対し,信託の清算事務として,本件訴訟における使用料相当額の損害賠償請求権を行使すること,及び,訴訟を追行することを認めるとの意思を表明している場合(本件においては,確認書Bにおいて,原権利者のこのような意思が表明されている。)に限り,原告に上記の著作権侵害に基づく損害賠償請求権が帰属し,かつ,これを行使することができるというべきである。』(68頁以下)
とした上で、
・原権利者・TMA契約及びTMA・原告契約に基づくもの
作詞256楽曲
作曲191楽曲
について原告に損害賠償請求権が帰属すると判断されています。
その他、最終的には、原告が主張した1297楽曲の内、損害賠償請求が認められたものは以下の楽曲数となりました。
・不知楽曲(64頁以下)
作詞18楽曲
作曲28楽曲
・直接契約(79頁以下)
作詞15楽曲
作曲56楽曲
合計 作詞289楽曲 作曲275楽曲
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4 カラオケ事業者の故意過失
業務用通信カラオケ事業者である被告は、原告から楽曲のリストの交付を受けるまでは対象楽曲が分からず原告請求対象楽曲の利用の継続について過失はない等と反論しました(88頁以下)。
しかし、裁判所は、平成13年10月1日著作権等管理事業法施行や原告とAMEI(被告も会員)との交渉の経緯を踏まえ、
『業務用通信カラオケ事業者であれば,他人の著作物を利用する際には,その著作権を侵害することのないよう,当該著作権の帰属を調査し,事前に著作権者から複製又は公衆送信の許諾を得るべく万全の注意を尽くす義務がある。』
『被告は,これを怠り,漫然と請求対象楽曲の利用を継続してきたのであるから,被告には,過失があったというべきである。』
と判断しています。
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5 損害論
業務用通信カラオケの分野ではジャスラック管理楽曲が大多数であり、ジャスラックの使用料規程に基づき算定される使用料が事実上の基準として機能していることから、著作権法114条3項(使用料相当額損害金)の判断に当たりこれを一応の基準とすることに合理性があると判断。また、原告使用料規程内容の合理性も否定。
結論としては、原告使用料規程によらず、また、ジャスラック規程の包括的利用許諾契約方式ではなく、個別課金方式により楽曲毎に損害額を個別算定しています(89頁以下)。
(基本使用料1ヶ月各100円、利用単位使用料各20円)
(1)基本使用料相当損害金
作詞 49万9300円
作曲 42万2435円
(2)利用単位使用料相当損害金
作詞
総アクセス数253万9241回×289/1297曲×20円=1131万5969円
作曲
総アクセス数253万9241回×275/1297曲×20円=1076万7791円
(1)と(2)合計 2300万5495円
なお、被告は、過失相殺(民法722条2項)を主張しましたが、容れられていません(96頁)。
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6 その他(権利濫用、禁反言)
被告は、権利濫用や禁反言を主張しましたが、この点についても容れられていません(96頁)。
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■コメント
判決文では、対象楽曲となった韓国の具体的な楽曲名が分かりませんが、ニュースによると、「ドラマ「冬のソナタ」の主題歌など韓国の約1200曲を無断でカラオケ用に使っているとして、著作権管理会社「アジア著作協会」(東京)が業務用カラオケ大手第一興商(同)に約9億1千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は10日、請求の一部を認め、約2300万円の支払いを命じた。
清水節裁判長は、289曲の歌詞と275曲のメロディーに対する第一興商側の著作権侵害を認めたが、「冬ソナ」の主題歌「最初から今まで」(邦題)を含む大半については請求を退けた。」(韓国カラオケで著作権侵害 第一興商、損害賠償2300万円 - 西日本新聞 2010年2月10日 20:09)とのことです。
音楽出版社が解散して清算した場合の信託著作権の帰属や清算事務の内容、また、文化庁届出使用料規程の合理性(93頁)についても言及がされていて、知財(著作権)信託ビジネスでの「管理委託契約約款」「使用料規程」策定の場合に参考となる事案でした。
加えて、アジア著作協会立ち上げの際に関係団体意見聴取手続として利用者団体約100社を訪問したことなど、著作権管理団体立ち上げには手間が掛るということが判決文から伺えるところです。
なお、著作権管理団体との信託契約の解除については、アジア著作協会の場合、管理委託契約約款第8章23条以下に規定があります。この点、ジャスラックの著作権信託契約約款を見てみると、22条以下に規定があります(委託者からの解除の場合、3ヶ月の猶予期間を見込んで、かつ最初に到来する3月31日に手終い)。
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■参考サイト
・被告プレスリリース(平成16年10月22日)
第一興商 アジア著作協会訴訟に関連する報道について
・株式会社アジア著作協会
管理委託契約約款PDF
使用料規程PDF
・社団法人音楽電子事業協会(AMEI)との協議の経緯について
平成15年度社団法人 音楽電子事業協会 事業報告PDF
・2008年1月1日から社団法人日本音楽著作権協会(ジャスラック)と韓国音楽著作権協会(KOMCA)との間の相互管理契約 プレスリリース(2007.12.10)
KOMCA(韓国音楽著作権協会)との相互管理契約を締結
・韓国の著作権管理ビジネスについて
平成19年1月文化庁長官官房国際課「韓国における著作権侵害対策ハンドブック」PDF
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■参考判例
使用料規程の内容等が係わる事案について
社交ダンス教室事件(一審)
名古屋地裁平成15.2.7平成14(ワ)2148著作権侵害差止等請求事件
(控訴審)
名古屋高裁平成16.3.4平成15(ネ)233著作権侵害差止等請求控訴事件
ケーブルテレビ3社楽曲使用料事件(控訴審)
知財高裁平成17.8.30平成17(ネ)10009等著作権使用料請求控訴事件
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■参考文献
鈴木道夫「JASRACへの音楽著作権の信託」『JASRAC概論』(2009)99頁以下
市村直也「JASRACの音楽著作権管理」同上書137頁以下