最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

猫ぬいぐるみ翻案事件

大阪地裁平成22.2.25平成21(ワ)6411著作権侵害差止等請求事件PDF


*裁判所サイト公表 2010/3/1
*キーワード:翻案権、複製権

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■事案

手作りの猫のぬいぐるみを翻案されたかどうかが争点となった事案

原告:手作り商品販売個人
被告:玩具等製造販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法27条、21条

1 被告各製品と原告各作品の類似性

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■判決内容

<争点>

1 被告各製品と原告各作品の類似性

原告は、手作りの猫のぬいぐるみ7点(原告各作品)について、被告が販売している製品が原告の複製権(著作権法21条)又は翻案権(27条)を侵害していると主張しました。

この点について、裁判所は江差追分事件最高裁判決について言及。

著作物の複製(著作権法21条)とは,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいい(最高裁判所昭和53年9月7日第一小法廷判決・民集32巻6号1145頁参照),著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作することをいう(最高裁判所平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。』(17頁)

その上で翻案権侵害の成否について検討をしています。

(1)原告各作品の本質的特徴

原告各作品について、2つの群に分けて本質的特徴を検討。
1群では「見る者に優しく、ほのぼのとした印象を与える」形態部分(20頁)、2群では「やや上目遣いで、のんきな印象を与える」形態部分(20頁以下)がぬいぐるみの印象を決定づける本質的特徴部分であると判断。

(2)被告各製品との対比

被告製品9点の特徴点が検討されています(21頁以下)。

(3)原告各作品との対比

被告各製品は、原告各作品の本質的特徴を備えているとは認められず、また、印象も大きく異なる(24頁以下)。

結論として、被告各製品からは原告各作品の本質的特徴を直接感得することはできないとして、翻案権侵害性(複製権についても)を否定しています。

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■コメント

商品の画像が添付されていないので、正確な類否判断がいまひとつ分からないところです。

原告運営と思われるウェブサイトpicnic FROG'S market - collca -を拝見しますと、上目遣いの「stand cat」、ほのぼの系「Relax cat」などの猫商品がラインナップされています。
被告の楽天サイトでの取扱い商品は現在2点で、うち1点が猫の形態をしたエコバッグとなっています。
ただ、別の楽天サイト内では被告取扱いの製品と思われる猫ぬいぐるみが13点確認できます。
【楽天市場】デザイナー&ブランド マリーメゾンドミュー:雑貨ショップドットコム

類否はひとまず措くとして全体としての印象ですが、原告作品のクオリティの高さ(デザイナーさんの猫好きのキモチがにじみ出ている)を感じます。

今回の訴訟では著作権だけが争点とされていますが、不正競争防止法(2条1項1号や3号)も争点としては考えられるところです。