最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

自動車用フロントテーブル形態模倣事件

大阪地裁平成21.12.10平成18(ワ)8794不正競争行為差止等請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官      北岡裕章
裁判官      山下隼人

*裁判所サイト公表 09/12/25
*キーワード:形態の商品等表示性、模倣、意匠権

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■事案

自動車用品のフロントテーブルの形態模倣性やカップホルダ用装飾リングの意匠権侵害性が争点となった事案

原告:自動車用品製造販売会社
被告:自動車用品輸出入販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号、3号、意匠法3条2項

1 フロントテーブルの形態に係る周知商品表示性(2条1項1号)
2 フロントテーブルの実質的同一性の有無(2条1項3号)
3 カップホルダ用装飾リング登録意匠の意匠法3条2項違反の無効理由の有無
4 カップホルダ用装飾リングの商品形態模倣行為の成否(2条1項3号)

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■判決内容

<経緯>

H15.8.4 原告商品1Aフロントテーブル販売開始
H16.7.1 原告商品1Bフロントテーブル販売開始
H17.7.1 原告商品1Cフロントテーブル販売開始
H17.10.21 カップホルダ用装飾リング意匠登録
H18.1  被告が被告商品1フロントテーブルを製造販売

本件登録意匠:カップホルダ用装飾リング1257568号

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<争点>

1 フロントテーブルの形態に係る周知商品表示性(2条1項1号)

自動車のフロント部分のダッシュボードに取り付ける内装グッズ(フロントテーブル(原告商品1、被告商品1))の周知表示混同惹起行為性(不正競争防止法2条1項1号)が争点となっています。

まず、前提として、商品の形態自体がが直ちに出所を示す商品等表示となるわけではないことから、裁判所は、

原告は,原告商品1の形態をもってその商品表示であると主張する。商品の形態は,それ自体として,直ちに当該商品の出所を表示するものではない。しかし,当該商品の形態が他の商品とは異なる独自の特徴を有しており,かつ,その形態が特定の者によって長期間継続的かつ独占的に使用されるか,又は短期間でも極めて強力な宣伝広告活動や圧倒的な販売実績等があって,需要者において当該形態が特定の事業者の出所を表示するものとして周知となっている場合には,当該商品等の形態をもって,不正競争防止法2条1項1号の保護の対象となる商品表示と解することができる。』(67頁)

と従来の裁判所の判断を示したうえで、

1.形態の特徴
原告商品1は他の商品とは異なる商品形態を有していること自体は否定できないものの、その独自性は低い(67頁以下)。

2.原告商品1の形態の周知性について
原告商品1の需要者は少なくとも数十万人程度は存在するのではないかと考えられ、形態の独自性が低いことも併せ考慮すれば、原告主張の販売数量(1万2159台)程度では形態の周知性を肯定するには足りない(71頁以下)。
また、宣伝広告の状況、アンケート実施結果からも原告商品1の形態に係る周知性を肯定できない(72頁以下)。

3.結論
独自の特徴を有しているわけでもなく、短期間で極めて強力な宣伝広告活動や圧倒的な販売実績等があったわけでもないとして、裁判所は結論として原告商品1の形態は不正競争防止法2条1項1号の商品表示性を有するものではないと判断しています。

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2 フロントテーブルの実質的同一性の有無(2条1項3号)

被告商品による商品形態模倣行為・デッドコピー性(不正競争防止法2条1項3号)が次に争点となっています(74頁以下)。
結論としては、商品4点いずれも実質的同一性がないとされ模倣性が否定されています。

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3 カップホルダ用装飾リング登録意匠の意匠法3条2項違反の無効理由の有無

被告商品2カップホルダ用装飾リングの意匠が本件登録意匠類似し、これを被告商品1フロントテーブルなどに装着して販売することは本件意匠権を侵害すると原告は主張しました。

この点について裁判所は、

本件登録意匠は,その出願前に当業者に公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠と認められ,その結果,本件意匠登録は,意匠法3条2項の規定に違反して登録されたものであり,意匠登録無効審判により無効とされるべきものであるから,意匠法41条(特許法104条の3第1項)により,原告は被告に対して本件意匠権を行使することができない。』(103頁)

として、原告の意匠権に基づく主張を認めていません。

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4 カップホルダ用装飾リングの商品形態模倣行為の成否(2条1項3号)

フロントテーブルに装着されているカップホルダ用装飾リング部分に着目して2条1項3号の成否が検討されていますが、結論としては否定されています(103頁以下)。

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■コメント

後発会社による競業分野での商品展開や原告元従業員が被告会社に再就職しているといった状況が窺えます(33頁以下)。

わたし自身、オートバックスやイエローハット、ジェームスなどへは良く足を運んで内装グッズなども眺めます。ラグジュアリーなものは専用のショーケースに収まって展示されていて、ひとつのジャンルとして確立していることが分かります(原告の商品ラインナップ)。

もっとも、意匠登録されたカップホルダ用装飾リングのデザインについては、これを見てみても、?という感じです。

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