2009年12月11日刊行の本書は、中京大学文学部准教授浅岡邦雄先生による明治時代を中心とした近代出版史における権利と報酬(すなわち著作権問題、契約問題)を対象とする論考です。

版権条例の制定過程についての記述の誤謬(伊藤信男「著作権事件100話-側面からみた著作権発達史-」(1976)日本大家論集事件37頁以下参照)を示すくだり(本書34頁以下)など、なるほどなあ、と興味が尽きない部分です。

いずれにしても、無断転載、出版問題は100年前の明治時代の頃と現代でさほど変わっていないことが良く分かります。

【目次】

はじめに──権利と報酬をめぐる近代

1 権利をめぐる著者と出版者

1『西国立志編』をめぐる出版事情
2「版権条例」「版権法」における雑誌の権利
3「同盟医書販売組合」の設立と医学書の出版
4書物としての『一年有半』『続一年有半』

2 作家の出版契約

1著者と出版者とのデリケート・バランス
2小杉天外の著書出版契約
3明治後期地方新聞における小説再掲載の実態──山田美妙を中心に
4岩野泡鳴日記にみる著書の出版
5籾山書店と作家の印税領収書および契約書


“著者”の出版史―権利と報酬をめぐる近代
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