最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
スピーカ測定システム事件
★東京地裁平成21.11.9平成20(ワ)21090著作権侵害差止等請求PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官 菊池絵理
裁判官 坂本三郎
*裁判所サイト公表 09/11/30
--------------------
■事案
退職従業員によるスピーカ測定システムに関する営業秘密不正利用行為性と著作権侵害性が争点となった事案
原告:音響機器製造販売会社
被告:原告元従業員
--------------------
■結論
請求一部認容
--------------------
■争点
条文 著作権法21条、114条3項、不正競争防止法2条1項7号
1 不正競争防止法2条1項7号該当性
2 被告ソフトウェアの著作権侵害の有無
3 原告の許諾の有無
4 差止め等の請求の可否
5 損害賠償請求の可否及びその額
--------------------
■判決内容
<経緯>
S60.1.7 被告が原告会社に入社
H16.9 原告がスピーカ測定システムを開発
H17.12.31 被告が退社
H19.1.30 被告が被告システムの販促活動
------------------
<争点>
1 不正競争防止法2条1項7号該当性
被告元従業員は、原告会社を退職後スピーカ測定器とこれを稼働させるソフトウェア(被告システム)を販売しました。
この点について、不正競争防止法の論点に関してまず被告の製造販売行為の不正競争行為性(保有営業秘密の不正使用)として原告のスピーカ測定システムに関する情報(回路図やソースコード)が営業秘密にあたるかどうかが争点となっています(15頁以下)。
この点について裁判所は、
(1)回路図など
「原告システムに関する情報」の具体例として原告が主張する回路図を含め内容が明らかにされておらず特定されてないこと、また秘密管理性も認めるに足りる証拠はないとして、営業秘密性を否定。
(2)ソフトウェアのソースコード
「原告システムに関する情報」のうちソフトウェアのソースコードについては、著作権侵害の争点での被侵害利益と全く同一であることなどから、まず著作権侵害の有無、差止め等の範囲を検討するとして不正競争防止法の争点については判断をしていません。
結論としては、ソフトウェアのソースコードに関して著作権侵害性及びそれに基づく差止め等が認められており、不競法違反の請求については判断されていません(27頁)。
------------------
2 被告ソフトウェアの著作権侵害の有無
1.原告ソフトウェアの著作物性及び原告の著作権
そこで被告ソフトウェアの著作権侵害の有無について、まず、原告ソフトウェアの著作物性については、創作性(著作権法2条1項1号)があると判断されています(17頁)。そして法人著作(15条2項)の点から原告が原告ソフトウェアの著作者、著作権者であると認定されています。
2.著作権(複製権)の侵害
被告ソフトウェアが原告ソフトウェアに依拠していることが認められ、また原告ソフトウェアと被告ソフトウェアが同一又は類似していることが認められるとして著作権侵害性が肯定されています(18頁以下)。
------------------
3 原告の許諾の有無
被告は、スピーカ測定器を製造することを原告関係者に伝えていることや原告社員との共同開発の事実をもって、原告の許諾があったと主張しましたが、裁判所に容れられていません(20頁以下)。
------------------
4 差止め等の請求の可否
被告計測器については、差止め等の必要が認められませんでしたが、被告ソフトウェアについては、複製・販売の差止め及びそれを格納した記憶媒体の廃棄が認められています(著作権法112条 22頁以下)。
------------------
5 損害賠償請求の可否及びその額
裁判所は著作権侵害について、被告に少なくとも過失があったと認めた上で損害論については、著作権法114条3項(使用料相当額)により、
被告システムの販売額160万円×1/2(被告システムにおいて被告ソフトウェアが占める価値)×実施料率5%=4万円
そして弁護士費用5万円の合計9万円を損害額と判断しています(24頁以下)。
--------------------
■コメント
営業秘密情報の不正利用を不正競争防止法と著作権法で処理した事案です。
結論としては、ソフトウェアの無断利用が認められましたが、被告システムの販売先の一つが原告の関連会社であったり(11頁)と、提訴に至る背景事情に何かあったのかもしれません。
--------------------
スピーカ測定システム事件
★東京地裁平成21.11.9平成20(ワ)21090著作権侵害差止等請求PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官 菊池絵理
裁判官 坂本三郎
*裁判所サイト公表 09/11/30
--------------------
■事案
退職従業員によるスピーカ測定システムに関する営業秘密不正利用行為性と著作権侵害性が争点となった事案
原告:音響機器製造販売会社
被告:原告元従業員
--------------------
■結論
請求一部認容
--------------------
■争点
条文 著作権法21条、114条3項、不正競争防止法2条1項7号
1 不正競争防止法2条1項7号該当性
2 被告ソフトウェアの著作権侵害の有無
3 原告の許諾の有無
4 差止め等の請求の可否
5 損害賠償請求の可否及びその額
--------------------
■判決内容
<経緯>
S60.1.7 被告が原告会社に入社
H16.9 原告がスピーカ測定システムを開発
H17.12.31 被告が退社
H19.1.30 被告が被告システムの販促活動
------------------
<争点>
1 不正競争防止法2条1項7号該当性
被告元従業員は、原告会社を退職後スピーカ測定器とこれを稼働させるソフトウェア(被告システム)を販売しました。
この点について、不正競争防止法の論点に関してまず被告の製造販売行為の不正競争行為性(保有営業秘密の不正使用)として原告のスピーカ測定システムに関する情報(回路図やソースコード)が営業秘密にあたるかどうかが争点となっています(15頁以下)。
この点について裁判所は、
(1)回路図など
「原告システムに関する情報」の具体例として原告が主張する回路図を含め内容が明らかにされておらず特定されてないこと、また秘密管理性も認めるに足りる証拠はないとして、営業秘密性を否定。
(2)ソフトウェアのソースコード
「原告システムに関する情報」のうちソフトウェアのソースコードについては、著作権侵害の争点での被侵害利益と全く同一であることなどから、まず著作権侵害の有無、差止め等の範囲を検討するとして不正競争防止法の争点については判断をしていません。
結論としては、ソフトウェアのソースコードに関して著作権侵害性及びそれに基づく差止め等が認められており、不競法違反の請求については判断されていません(27頁)。
------------------
2 被告ソフトウェアの著作権侵害の有無
1.原告ソフトウェアの著作物性及び原告の著作権
そこで被告ソフトウェアの著作権侵害の有無について、まず、原告ソフトウェアの著作物性については、創作性(著作権法2条1項1号)があると判断されています(17頁)。そして法人著作(15条2項)の点から原告が原告ソフトウェアの著作者、著作権者であると認定されています。
2.著作権(複製権)の侵害
被告ソフトウェアが原告ソフトウェアに依拠していることが認められ、また原告ソフトウェアと被告ソフトウェアが同一又は類似していることが認められるとして著作権侵害性が肯定されています(18頁以下)。
------------------
3 原告の許諾の有無
被告は、スピーカ測定器を製造することを原告関係者に伝えていることや原告社員との共同開発の事実をもって、原告の許諾があったと主張しましたが、裁判所に容れられていません(20頁以下)。
------------------
4 差止め等の請求の可否
被告計測器については、差止め等の必要が認められませんでしたが、被告ソフトウェアについては、複製・販売の差止め及びそれを格納した記憶媒体の廃棄が認められています(著作権法112条 22頁以下)。
------------------
5 損害賠償請求の可否及びその額
裁判所は著作権侵害について、被告に少なくとも過失があったと認めた上で損害論については、著作権法114条3項(使用料相当額)により、
被告システムの販売額160万円×1/2(被告システムにおいて被告ソフトウェアが占める価値)×実施料率5%=4万円
そして弁護士費用5万円の合計9万円を損害額と判断しています(24頁以下)。
--------------------
■コメント
営業秘密情報の不正利用を不正競争防止法と著作権法で処理した事案です。
結論としては、ソフトウェアの無断利用が認められましたが、被告システムの販売先の一つが原告の関連会社であったり(11頁)と、提訴に至る背景事情に何かあったのかもしれません。
--------------------