2009年11月25日刊行(本文全290頁)の本書は、音楽著作権管理団体であるJASRAC(社団法人日本音楽著作権協会)の歴史や音楽著作権の管理に係わる権利関係について言及する学術書です。以下のように多彩な執筆陣容となっています。

はじめに 音楽文化とJASRAC/紋谷暢男
第1章  JASRAC誕生の経緯と法的環境/大家重夫
第2章  JASRACが管理する権利/上野達弘
第3章  JASRACへの音楽著作権の信託/鈴木道夫
第4章  JASRACの音楽著作権管理/市村直也
第5章  著作権侵害とJASRACの対応/田中 豊
第6章  国際条約と日本国著作権法/岡本 薫
第7章  音楽産業とその関係者/前田哲男
第8章  著作権をめぐる今日的課題/斉藤 博

JASRAC概論―音楽著作権の法と管理
JASRAC概論―音楽著作権の法と管理
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大家重夫先生ご執筆の第1章では、JASRACの歴史(すなわち日本の著作権の歴史)を振り返ることができます。
上野達弘先生は、著作権概論(第2章)、鈴木道夫先生は、管理委託契約関係(第3章)、市村直也先生は、分配などの実務的な部分(第4章)、田中豊先生は、著作権侵害論(第5章)、岡本薫先生はJASRACへの提言など(第6章)、前田哲男先生は著作隣接権まわりについて(第7章)、斉藤博先生は、Google Book Search和解案など今日的な問題について(第8章)取り上げておいでです。

つい先日、JASRAC70周年記念パーティーの席上、鳩山由紀夫総理が著作権保護期間延長議論について言及、「70年に延ばすよう最大限努力する」旨の発言があって、さっそくMIAUは声明を公表しています(鳩山内閣閣僚による、最近の著作権保護期間延長に関する発言について 2009-11-20 18:00:00 )。

公取委がジャスラックに対して排除措置命令を出したり(詳しくは、大家重夫先生「公取委のJASRACへの排除命令は妥当か」『マーチャンダイジングライツレポート』582号52頁以下(2009.4 商品化資料センター刊行)参照)と話題に事欠かないところですが、ジャスラックは音楽ビジネスにとっては無くてはならない存在。
ジャスラックは70周年を迎えましたが、政権交代や公益法人制度改正など環境は変化していますので、より身近な存在として日々ブラッシュアップして欲しいところです。