最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「朝バナナダイエット」書籍題号事件
★東京地裁平成21.11.12平成21(ワ)657商標使用差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 柵木澄子
裁判官 舟橋伸行
*裁判所サイト公表 09/11/17
*キーワード:書籍の題号、商品等表示、使用
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■事案
商標「朝バナナ」を題号に使用した書籍の出版行為の商標権侵害性や不正競争行為性が争点となった事案
原告:出版社
被告:出版社
原告商標「朝バナナ」(標準文字 登録番号5171201)
原告書籍「朝バナナダイエット」「もっと朝バナナダイエット」など
被告書籍「朝バナナダイエット成功のコツ40」
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 不正競争防止法2条1項1号、2号、商標法36条
1 商標権侵害の成否
2 不正競争防止法違反の成否
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■判決内容
<争点>
1 商標権侵害の成否
被告が書籍の題号に原告登録商標を使用したことから、被告書籍の出版販売行為が原告の有する商標権を侵害すると原告は主張しました(18頁以下)。
この点について、裁判所は、
『商標の使用が商標権の侵害行為であると認められるためには,登録商標と同一又は類似の第三者の標章が,単に形式的に指定商品又はこれに類似する商品等に表示されているだけでは足りず,その商品の出所を表示し自他商品を識別する標識としての機能を果たす態様で使用されていることを要するものと解すべきである。』
とした上で、
『前記1で認定したところによれば,被告書籍の内容は,「朝バナナダイエット」というダイエット方法を実行し,ダイエットに成功するために,著者が成功の秘訣と考える事項を40項目挙げるというものであり,題号の表示も,被告書籍に接した読者において,書籍の題号が表示されていると認識するものと考えられる箇所に,題号の表示として不自然な印象を与えるとはいえない表示を用いて記載されているといえる。』
『そうすると,被告書籍に接した読者は,「朝バナナ」を含む被告書籍の題号の表示を,被告書籍が「朝バナナダイエット」というダイエット方法を行ってダイエットに成功するための秘訣が記述された書籍であることを示す表示であると理解するものと解される。』
結論として、
『被告書籍のカバーや表紙等における被告標章の表示は,被告標章を,単に書籍の内容を示す題号の一部として表示したものであるにすぎず,自他商品識別機能ないし出所表示機能を有する態様で使用されていると認めることはできないから,本件商標権を侵害するものであるとはいえない。』
商標権侵害性を否定しています。
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2 不正競争防止法違反の成否
原告はさらに被告書籍の出版販売行為について、商品等主体混同惹起行為性(不正競争防止法2条1項1号)と著名表示冒用行為性(2条1項2号)を争点としました(20頁以下)。
この点について、裁判所は、
『自己の商品表示中に,他人の商品等表示が含まれていたとしても,その表示の態様からみて,専ら,商品の内容・特徴等を叙述,表現するために用いられたにすぎない場合には,他人の商品等表示と同一又は類似のものを使用したと評価することはできない。』
とした上で、被告標章を含む被告書籍の題号は、専ら被告書籍の内容を表現するために用いられたものであると判断。
結論として、他人の商品等表示の使用行為に当たらず、1号と2号の成立を否定しています。
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■コメント
書籍の題号での標章の使用が商品等表示の使用に当たらないとされた事例です。最近では、「時効の管理」法律書籍事件が記憶に新しいところです。
「商品等表示の使用」の判断にあたっては、不正競争防止法でも商標法での観点と同様、自他識別・出所表示機能を有する態様での使用かどうかが実質的には考慮されることとなります(後掲ペレッタM93R事件参照)。
もっとも、不正競争防止法2条1項1号では「混同」のおそれを具体的に吟味できるので、商標的使用の例外法理の発展をみる商標法とは区別して考えるべきとの指摘について、田村後掲不正競争法概説96頁参照。
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■過去のブログ記事
・トレーニング理論名と不正競争行為性
2006年4月30日記事
「初動負荷トレーニング理論名」著作権事件(控訴審)
原審参照(大阪地裁平成17.7.12平成16(ワ)5130)
・書籍の題号と不正競争行為性
2008年5月31日記事
「時効の管理」法律実務書事件
2008年10月24日記事
控訴審
・アニメ映画の題号と不正競争行為性
2005年11月4日記事
マクロス事件控訴審
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■参考判例
・模型での標章の使用について、
ペレッタM93R事件
東京地裁平成12.6.29平成10(ワ)21507損害賠償等請求事件
書籍の題号での標章の使用について、
デール・カーネギー事件
東京高裁平成14.2.28平成12(ネ)5295損害賠償等請求控訴事件
脱ゴーマニズム宣言事件
東京地裁平成11.8.31平成9(ワ)27869著作権侵害差止等請求事件
スイングジャーナル事件
東京地裁平成11.2.19(後掲新注解185頁以下参照)
著作物の題号と商標法について、
POS実践マニュアル事件
東京地裁昭和63.9.16昭和62(ワ)9572
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■参考文献
田村善之『不正競争法概説第2版』(2003)94頁以下
創作物の題号と商標法について、
田村善之『商標法概説第2版』(2000)229頁以下
書籍の題号、映画・番組タイトルと商品等表示性について、
小野昌延編著『新注解不正競争防止法新版上巻』(2007)184頁以下、342頁以下、414頁以下
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■参考サイト
朝バナナダイエットオフィシャルサイト
「朝バナナダイエット」ぶんか社公式サイト
朝バナナダイエット成功のコツ40 データハウス
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■追記09.12.01
名古屋の商標亭(廣田先生)
2009年12月1日記事
「朝バナナダイエット」書籍題号事件
★東京地裁平成21.11.12平成21(ワ)657商標使用差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 柵木澄子
裁判官 舟橋伸行
*裁判所サイト公表 09/11/17
*キーワード:書籍の題号、商品等表示、使用
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■事案
商標「朝バナナ」を題号に使用した書籍の出版行為の商標権侵害性や不正競争行為性が争点となった事案
原告:出版社
被告:出版社
原告商標「朝バナナ」(標準文字 登録番号5171201)
原告書籍「朝バナナダイエット」「もっと朝バナナダイエット」など
被告書籍「朝バナナダイエット成功のコツ40」
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 不正競争防止法2条1項1号、2号、商標法36条
1 商標権侵害の成否
2 不正競争防止法違反の成否
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■判決内容
<争点>
1 商標権侵害の成否
被告が書籍の題号に原告登録商標を使用したことから、被告書籍の出版販売行為が原告の有する商標権を侵害すると原告は主張しました(18頁以下)。
この点について、裁判所は、
『商標の使用が商標権の侵害行為であると認められるためには,登録商標と同一又は類似の第三者の標章が,単に形式的に指定商品又はこれに類似する商品等に表示されているだけでは足りず,その商品の出所を表示し自他商品を識別する標識としての機能を果たす態様で使用されていることを要するものと解すべきである。』
とした上で、
『前記1で認定したところによれば,被告書籍の内容は,「朝バナナダイエット」というダイエット方法を実行し,ダイエットに成功するために,著者が成功の秘訣と考える事項を40項目挙げるというものであり,題号の表示も,被告書籍に接した読者において,書籍の題号が表示されていると認識するものと考えられる箇所に,題号の表示として不自然な印象を与えるとはいえない表示を用いて記載されているといえる。』
『そうすると,被告書籍に接した読者は,「朝バナナ」を含む被告書籍の題号の表示を,被告書籍が「朝バナナダイエット」というダイエット方法を行ってダイエットに成功するための秘訣が記述された書籍であることを示す表示であると理解するものと解される。』
結論として、
『被告書籍のカバーや表紙等における被告標章の表示は,被告標章を,単に書籍の内容を示す題号の一部として表示したものであるにすぎず,自他商品識別機能ないし出所表示機能を有する態様で使用されていると認めることはできないから,本件商標権を侵害するものであるとはいえない。』
商標権侵害性を否定しています。
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2 不正競争防止法違反の成否
原告はさらに被告書籍の出版販売行為について、商品等主体混同惹起行為性(不正競争防止法2条1項1号)と著名表示冒用行為性(2条1項2号)を争点としました(20頁以下)。
この点について、裁判所は、
『自己の商品表示中に,他人の商品等表示が含まれていたとしても,その表示の態様からみて,専ら,商品の内容・特徴等を叙述,表現するために用いられたにすぎない場合には,他人の商品等表示と同一又は類似のものを使用したと評価することはできない。』
とした上で、被告標章を含む被告書籍の題号は、専ら被告書籍の内容を表現するために用いられたものであると判断。
結論として、他人の商品等表示の使用行為に当たらず、1号と2号の成立を否定しています。
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■コメント
書籍の題号での標章の使用が商品等表示の使用に当たらないとされた事例です。最近では、「時効の管理」法律書籍事件が記憶に新しいところです。
「商品等表示の使用」の判断にあたっては、不正競争防止法でも商標法での観点と同様、自他識別・出所表示機能を有する態様での使用かどうかが実質的には考慮されることとなります(後掲ペレッタM93R事件参照)。
もっとも、不正競争防止法2条1項1号では「混同」のおそれを具体的に吟味できるので、商標的使用の例外法理の発展をみる商標法とは区別して考えるべきとの指摘について、田村後掲不正競争法概説96頁参照。
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■過去のブログ記事
・トレーニング理論名と不正競争行為性
2006年4月30日記事
「初動負荷トレーニング理論名」著作権事件(控訴審)
原審参照(大阪地裁平成17.7.12平成16(ワ)5130)
・書籍の題号と不正競争行為性
2008年5月31日記事
「時効の管理」法律実務書事件
2008年10月24日記事
控訴審
・アニメ映画の題号と不正競争行為性
2005年11月4日記事
マクロス事件控訴審
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■参考判例
・模型での標章の使用について、
ペレッタM93R事件
東京地裁平成12.6.29平成10(ワ)21507損害賠償等請求事件
書籍の題号での標章の使用について、
デール・カーネギー事件
東京高裁平成14.2.28平成12(ネ)5295損害賠償等請求控訴事件
脱ゴーマニズム宣言事件
東京地裁平成11.8.31平成9(ワ)27869著作権侵害差止等請求事件
スイングジャーナル事件
東京地裁平成11.2.19(後掲新注解185頁以下参照)
著作物の題号と商標法について、
POS実践マニュアル事件
東京地裁昭和63.9.16昭和62(ワ)9572
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■参考文献
田村善之『不正競争法概説第2版』(2003)94頁以下
創作物の題号と商標法について、
田村善之『商標法概説第2版』(2000)229頁以下
書籍の題号、映画・番組タイトルと商品等表示性について、
小野昌延編著『新注解不正競争防止法新版上巻』(2007)184頁以下、342頁以下、414頁以下
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■参考サイト
朝バナナダイエットオフィシャルサイト
「朝バナナダイエット」ぶんか社公式サイト
朝バナナダイエット成功のコツ40 データハウス
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■追記09.12.01
名古屋の商標亭(廣田先生)
2009年12月1日記事