竹熊さんのブログに本書の紹介記事が掲載されていたので早速購入。
本書は、漫画家さんが出版社に生原稿を紛失されてしまった際の顛末をご本人が漫画で紹介するドキュメンタリー(批評は、大谷能生氏)。本文全155頁(2009年11月24日刊行)。

魔法なんて信じない。でも君は信じる。 (本人本)
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たけくまメモ(2009年11月1日記事)
マンガ原稿紛失とその賠償額について

本を出す前に出版契約を交わさないという業界の慣習についてのことで、これについての論考がまったくない」との指摘が竹熊さんのブログ記事にあるように、西島さんの今後の契約まわりの対応については言及がありません。たしかに現在、漫画雑誌の執筆については、契約書のやりとりはまだ少ないと思われます(漫画単行本の出版契約書はあります)。

でも、わたしのクライアント先の漫画家さんは、業界慣行に果敢にチャレンジ。いまでは、漫画雑誌執筆契約についてしっかりと契約書を取り交わしています(「契約書を取り交わさないというのが業界慣行だ」、という「昨日の常識」は、政権すら交代する現在となっては「今日の非常識」かもしれません)。

原稿紛失時の対応について、たとえば少数頁紛失の場合は原稿料の10倍額、出版不能の場合は、印税相当額を損害額と取決めておくなど、今後の契約書の内容を考えるにあたって本書はとても参考になりました。


以前、数頁分の紛失原稿が見つかって、そのやりとりの仲介をしたこともありましたが、当時わたし側の事情で預かった原稿を漫画家さんのところへ持参せず郵便送付しましたが、保険をめいっぱい掛けた(損害要償額数百万円)冷や冷やさ加減をいまでも思い出します。

手にとってみた一枚一枚のカラー原稿は、それこそ美術作品のように素晴らしいもので、雑誌や単行本でみるものとはまったくの別モノでした。生原稿の紛失は、当事者(漫画家さんだけでなく、出版社側にも)にとって想像以上のインパクトであろうことが分かります。