最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
中国ドラマ「苦菜花」スカパー事件(控訴審)
知財高裁平成21.10.28平成21(ネ)10044損害賠償等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 大須賀滋
裁判官 齊木教朗
*裁判所サイト公表 09/10/28
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■事案
テレビ番組の著作権の移転に関する対抗要件の要否や通信衛星放送会社の注意義務違反性が争点となった事案の控訴審
原告(控訴人兼被控訴人):放送事業者(中国法人)
被告(被控訴人) :スカパーJSAT株式会社
被告(被控訴人兼控訴人):衛星テレビ専門会社
--------------------
■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法23条、民法709条
1 スカパーの本件ドラマの放送に係る事前調査確認義務等違反の有無
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■判決内容
<争点>
1 スカパーの本件ドラマの放送に係る事前調査確認義務等違反の有無
権利処理がされていないドラマ番組を放送した場合の衛星放送会社(スカパー)の事前調査確認義務、無断放送防止義務違反性が原審に引続き争点とされています。
この点について、控訴審でも被告スカパーの業務が、
(1)放送番組の制作、編集等に関与することが想定されていない
(2)瞬時かつ機械的に処理してリアルタイムでそのまま伝達している
といったことから、
『上記のような受託事業を実施している被告スカパーは,著作権者等(著作権等と主張する者を含む。)から,相当な期間を置いた上,個別的具体的な放送番組の内容(全部又は一部)について著作権侵害のおそれがある旨,しかるべき根拠を示した資料等に基づいて指摘,通知又は警告等がされたような場合はさておき,そのような特段の事情がない限り,電気通信役務利用放送事業者が本件CS放送サービスを通じて提供する個々の放送番組の内容等について,あらかじめ,個別具体的かつ直接的に把握した上で,当該放送番組に第三者の有する著作権の侵害があるか否かを調査確認する注意義務を負うことはないものと解するのが相当である。』
(12頁以下)
としたうえで、本件では上記のような特段の事情はないとして、被告スカパーに事前調査確認義務違反、無断放送防止義務違反の過失があると認めることができないと判断しています。
結論として、原審同様被告スカパーの責任は認められず、被告スカパーに番組を提供した被告衛星テレビ専門会社の著作権侵害に関して、本件ドラマの放送の差止、損害賠償(135万円)が認められるに留まっています。
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■コメント
原審の結論が維持されています。
原告側は、スカパーの衛星放送事業者としての責任を強く求めましたが、控訴審でも認められない結果となりました。
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■過去のブログ記事
2009年5月8日記事
中国ドラマ「苦菜花」スカパー事件
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■追記2011.5.22
嶋 拓哉「日本における中国著作権侵害に関する準拠法について −テレビドラマ「苦菜花」事件−」『知的財産法政策学研究』(2010)31号277頁以下
論文PDF
中国ドラマ「苦菜花」スカパー事件(控訴審)
知財高裁平成21.10.28平成21(ネ)10044損害賠償等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 大須賀滋
裁判官 齊木教朗
*裁判所サイト公表 09/10/28
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■事案
テレビ番組の著作権の移転に関する対抗要件の要否や通信衛星放送会社の注意義務違反性が争点となった事案の控訴審
原告(控訴人兼被控訴人):放送事業者(中国法人)
被告(被控訴人) :スカパーJSAT株式会社
被告(被控訴人兼控訴人):衛星テレビ専門会社
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法23条、民法709条
1 スカパーの本件ドラマの放送に係る事前調査確認義務等違反の有無
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■判決内容
<争点>
1 スカパーの本件ドラマの放送に係る事前調査確認義務等違反の有無
権利処理がされていないドラマ番組を放送した場合の衛星放送会社(スカパー)の事前調査確認義務、無断放送防止義務違反性が原審に引続き争点とされています。
この点について、控訴審でも被告スカパーの業務が、
(1)放送番組の制作、編集等に関与することが想定されていない
(2)瞬時かつ機械的に処理してリアルタイムでそのまま伝達している
といったことから、
『上記のような受託事業を実施している被告スカパーは,著作権者等(著作権等と主張する者を含む。)から,相当な期間を置いた上,個別的具体的な放送番組の内容(全部又は一部)について著作権侵害のおそれがある旨,しかるべき根拠を示した資料等に基づいて指摘,通知又は警告等がされたような場合はさておき,そのような特段の事情がない限り,電気通信役務利用放送事業者が本件CS放送サービスを通じて提供する個々の放送番組の内容等について,あらかじめ,個別具体的かつ直接的に把握した上で,当該放送番組に第三者の有する著作権の侵害があるか否かを調査確認する注意義務を負うことはないものと解するのが相当である。』
(12頁以下)
としたうえで、本件では上記のような特段の事情はないとして、被告スカパーに事前調査確認義務違反、無断放送防止義務違反の過失があると認めることができないと判断しています。
結論として、原審同様被告スカパーの責任は認められず、被告スカパーに番組を提供した被告衛星テレビ専門会社の著作権侵害に関して、本件ドラマの放送の差止、損害賠償(135万円)が認められるに留まっています。
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■コメント
原審の結論が維持されています。
原告側は、スカパーの衛星放送事業者としての責任を強く求めましたが、控訴審でも認められない結果となりました。
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■過去のブログ記事
2009年5月8日記事
中国ドラマ「苦菜花」スカパー事件
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■追記2011.5.22
嶋 拓哉「日本における中国著作権侵害に関する準拠法について −テレビドラマ「苦菜花」事件−」『知的財産法政策学研究』(2010)31号277頁以下
論文PDF