最高裁判所HP 最高裁判所判例集より
モダンタイムス格安DVD事件(上告審)
★最高裁平成20.10.8平成20(受)889著作権侵害差止等請求事件PDF
裁判長裁判官 宮川光治
裁判官 甲斐中辰夫
裁判官 涌井紀夫
裁判官 櫻井龍子
裁判官 金築誠志
*裁判所サイト公表 09/10/08
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■事案
チャップリン『モダンタイムス』『独裁者』などの映画作品の保護期間をめぐり映画の著作者がチャップリンなのか映画会社であるのかが争われた事案の上告審
原告(被上告人):チャップリン映画管理会社
被告(上告人) :映像ソフト企画製造販売会社ら
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■結論
上告棄却
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■争点
条文 著作権法第2条1項2号、21条、26条、旧法3条、6条
1 著作権存続期間満了の有無
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■判決内容
判決要旨
『著作者が自然人である著作物の旧著作権法による著作権の存続期間は,当該自然人が著作者である旨がその実名をもって表示され,著作物が公表された場合には,団体の著作名義の表示があったとしても,著作者の死亡の時点を基準に定められる』(裁判要旨より)
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<争点>
1 著作権存続期間満了の有無
チャップリンの9つの作品は、いずれも昭和45年改正法(昭和45年法律第48号)施行前に公表された著作物でしたので、旧法の適用関係が争点となりました。
格安DVD制作会社ら(被告)は、本件各映画が団体の著作名義をもって公表されたものであるとして旧法6条(保護期間−団体著作物)の適用により存続期間が満了して本件各映画の著作権は消滅していると主張していました。
この点について、最高裁判所第一小法廷は、チャップリンがその全体的形成に創作的に寄与したとして本件各映画の著作者であるとしたうえで
『著作者が自然人である著作物の旧法による著作権の存続期間については,当該自然人が著作者である旨がその実名をもって表示され,当該著作物が公表された場合には,それにより当該著作者の死亡の時点を把握することができる以上,仮に団体の著作名義の表示があったとしても,旧法6条ではなく旧法3条が適用され,上記時点を基準に定められると解するのが相当である。』
とし、
『本件各映画は,自然人であるチャップリンを著作者とする独創性を有する著作物であるところ,上記事実関係によれば,本件各映画には,それぞれチャップリンの原作に基づき同人が監督等をしたことが表示されているというのであるから,本件各映画は,自然人であるチャップリンが著作者である旨が実名をもって表示されて公表されたものとして,その旧法による著作権の存続期間については,旧法6条ではなく,旧法3条1項が適用されるというべきである。団体を著作者とする旨の登録がされていることや映画の映像上団体が著作権者である旨が表示されていることは,上記結論を左右しない。』
として、6条ではなく、3条(保護期間−生前公表著作物)が適用されると判断。
結論として、本件各映画の著作権は、その存続期間の満了により消滅したということはできないとして、同旨の原審の判断を是認しています。
なお、映画「シェーン」最高裁判決との整合性については、
『所論引用の最高裁平成19年(受)第1105号同年12月18日第三小法廷判決・民集61巻9号3460頁は,自然人が著作者である旨がその実名をもって表示されたことを前提とするものではなく,旧法6条の適用がある著作物であることを前提として平成15年法律第85号附則2条の適用について判示したものにすぎないから,本件に適切でない。論旨は採用することができない。』
として整合するものとしています。
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■コメント
2009年10月8日同日に第一小法廷から黒澤明監督作品「姿三四郎」「羅生門」などにかかわる東宝、松竹、角川の3社の差止訴訟についても上告棄却決定の判断が出たとの報道がありました(日経ネット09/10/8 19:10)。
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■過去のブログ記事
原審
『モダンタイムス』格安DVD事件(控訴審)
その他の差止請求事件(控訴審)
対角川
対東宝(*判決文PDF)
対松竹
シェーン最高裁判決(最高裁判所第三小法廷平成19.12.18平成19(受)1105)
『シェーン』著作権保護期間満了事件(上告審)
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■参考文献
吉田正夫・狩野雅澄「旧著作権法下の映画著作物の著作者の意義と保護期間-チャップリン映画DVD無断複製頒布事件及び黒澤映画DVD無断頒布事件の知財高裁判決-」『コピライト』(2009)573号30頁以下
旧著作権法における職務著作(旧6条の位置付け)について、
前田哲男「龍渓書舎(国の著作物)」『小野昌延先生喜寿記念 知的財産法最高裁判例評釈大系3』(2009)100頁以下
小松陽一郎「映画「ライムライト」等の保護期間が,旧著作権法の適用により満了していないとされた事例」『知財管理』59巻8号(2009)1035頁以下
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■追記09/10/13
企業法務戦士の雑感(2009.10.12記事)
企業法務][知財]チャップリン&黒沢明・格安DVD販売訴訟決着。
モダンタイムス格安DVD事件(上告審)
★最高裁平成20.10.8平成20(受)889著作権侵害差止等請求事件PDF
裁判長裁判官 宮川光治
裁判官 甲斐中辰夫
裁判官 涌井紀夫
裁判官 櫻井龍子
裁判官 金築誠志
*裁判所サイト公表 09/10/08
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■事案
チャップリン『モダンタイムス』『独裁者』などの映画作品の保護期間をめぐり映画の著作者がチャップリンなのか映画会社であるのかが争われた事案の上告審
原告(被上告人):チャップリン映画管理会社
被告(上告人) :映像ソフト企画製造販売会社ら
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■結論
上告棄却
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■争点
条文 著作権法第2条1項2号、21条、26条、旧法3条、6条
1 著作権存続期間満了の有無
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■判決内容
判決要旨
『著作者が自然人である著作物の旧著作権法による著作権の存続期間は,当該自然人が著作者である旨がその実名をもって表示され,著作物が公表された場合には,団体の著作名義の表示があったとしても,著作者の死亡の時点を基準に定められる』(裁判要旨より)
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<争点>
1 著作権存続期間満了の有無
チャップリンの9つの作品は、いずれも昭和45年改正法(昭和45年法律第48号)施行前に公表された著作物でしたので、旧法の適用関係が争点となりました。
格安DVD制作会社ら(被告)は、本件各映画が団体の著作名義をもって公表されたものであるとして旧法6条(保護期間−団体著作物)の適用により存続期間が満了して本件各映画の著作権は消滅していると主張していました。
この点について、最高裁判所第一小法廷は、チャップリンがその全体的形成に創作的に寄与したとして本件各映画の著作者であるとしたうえで
『著作者が自然人である著作物の旧法による著作権の存続期間については,当該自然人が著作者である旨がその実名をもって表示され,当該著作物が公表された場合には,それにより当該著作者の死亡の時点を把握することができる以上,仮に団体の著作名義の表示があったとしても,旧法6条ではなく旧法3条が適用され,上記時点を基準に定められると解するのが相当である。』
とし、
『本件各映画は,自然人であるチャップリンを著作者とする独創性を有する著作物であるところ,上記事実関係によれば,本件各映画には,それぞれチャップリンの原作に基づき同人が監督等をしたことが表示されているというのであるから,本件各映画は,自然人であるチャップリンが著作者である旨が実名をもって表示されて公表されたものとして,その旧法による著作権の存続期間については,旧法6条ではなく,旧法3条1項が適用されるというべきである。団体を著作者とする旨の登録がされていることや映画の映像上団体が著作権者である旨が表示されていることは,上記結論を左右しない。』
として、6条ではなく、3条(保護期間−生前公表著作物)が適用されると判断。
結論として、本件各映画の著作権は、その存続期間の満了により消滅したということはできないとして、同旨の原審の判断を是認しています。
なお、映画「シェーン」最高裁判決との整合性については、
『所論引用の最高裁平成19年(受)第1105号同年12月18日第三小法廷判決・民集61巻9号3460頁は,自然人が著作者である旨がその実名をもって表示されたことを前提とするものではなく,旧法6条の適用がある著作物であることを前提として平成15年法律第85号附則2条の適用について判示したものにすぎないから,本件に適切でない。論旨は採用することができない。』
として整合するものとしています。
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■コメント
2009年10月8日同日に第一小法廷から黒澤明監督作品「姿三四郎」「羅生門」などにかかわる東宝、松竹、角川の3社の差止訴訟についても上告棄却決定の判断が出たとの報道がありました(日経ネット09/10/8 19:10)。
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■過去のブログ記事
原審
『モダンタイムス』格安DVD事件(控訴審)
その他の差止請求事件(控訴審)
対角川
対東宝(*判決文PDF)
対松竹
シェーン最高裁判決(最高裁判所第三小法廷平成19.12.18平成19(受)1105)
『シェーン』著作権保護期間満了事件(上告審)
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■参考文献
吉田正夫・狩野雅澄「旧著作権法下の映画著作物の著作者の意義と保護期間-チャップリン映画DVD無断複製頒布事件及び黒澤映画DVD無断頒布事件の知財高裁判決-」『コピライト』(2009)573号30頁以下
旧著作権法における職務著作(旧6条の位置付け)について、
前田哲男「龍渓書舎(国の著作物)」『小野昌延先生喜寿記念 知的財産法最高裁判例評釈大系3』(2009)100頁以下
小松陽一郎「映画「ライムライト」等の保護期間が,旧著作権法の適用により満了していないとされた事例」『知財管理』59巻8号(2009)1035頁以下
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■追記09/10/13
企業法務戦士の雑感(2009.10.12記事)
企業法務][知財]チャップリン&黒沢明・格安DVD販売訴訟決着。