最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
黒澤明監督作品格安DVD(対角川)事件(控訴審)
★知財高裁平成21.9.15平成21(ネ)10042損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官 高部眞規子
裁判官 杜下弘記
*裁判所サイト公表 09/10/5
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■事案
黒澤明監督「羅生門」「静かなる決闘」映画作品の保護期間をめぐり映画の著作者が黒澤監督なのか映画会社であるのかが争われた事案の損害賠償請求別訴の控訴審(一部控訴)
原告(控訴人) :角川映画株式会社
被告(被控訴人):格安DVD製造販売会社
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■結論
原判決変更
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■争点
条文 著作権法2条1項2号、21条、113条1項1号、114条3項、旧法6条
1 映画の存続期間の満了時期-映画の著作者はだれか
2 原告は映画の著作権を有するか
3 被告の故意又は過失による侵害行為の有無
4 損害の有無及びその額
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■判決内容
<争点>
1 映画の存続期間の満了時期-映画の著作者はだれか
2 原告は映画の著作権を有するか
3 被告の故意又は過失による侵害行為の有無
争点1〜3について、結論としては原審の判断を維持しています(4頁以下)。
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4 損害の有無及びその額
原告角川映画は、原告DVDの標準小売価格4700円(/1本)、4万本輸入、使用料率20%の合計3760万円を損害額として主張していました(著作権法114条3項)。
しかし、原審裁判所では被告DVD1本あたりの使用料相当額について被告DVDの小売価格の20%に相当する額として、小売価格1800円(/1本)×輸入販売数2000本×0.2=72万円が損害額と認定するにとどまっていました(原判決31頁)。
そこで、原告は、著作権法114条3項にいう「著作権の行使につき受けるべき金額の額に相当する額」については、すでに市場で販売されていて真正品についてライセンス料を取得している場合は、著作権者が真正品1個あたりにライセンシーから得ている金額と同額以上であるべきであるとして、原告と第三者との間で締結されていたDVD使用許諾契約書を根拠として4700円×現実の使用料率×2000本の損害額を主張しました(5頁以下)。
この点について、控訴審裁判所は、
『控訴人とジェネオンとの間の本件基本契約及び本件個別契約によって,現実の販売価格に関わらず,表示小売価格(4700円)の●%,すなわち,DVD1本当たり●円を使用料とすることが合意されていたのであり,しかも,この合意が独占的,かつ,排他的な許諾を前提とするものであったのであるから,少なくとも本件各映画については,著作権者である控訴人が,同条件を下回る条件において,第三者に対して使用を許諾することは想定できないというべきである。』
『そうすると,本件各映画の著作権の使用料相当額について,表示小売価格よりも廉価で販売されることを想定して,使用料相当額の算定の基準を変動させるべき理由はないというべきであるから,被控訴人による本件DVD2000本の輸入行為による控訴人の損害としての使用料相当額,すなわち,「控訴人が受けるべき金銭の額」については,本件DVD1本当たり●円とし,これに上記輸入に係る数量である2000本を乗じた●万円と算定すべきである。』
として、原告の主張を容れています。
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■コメント
原告角川映画は、一審では映画コンテンツのロイヤリティ(使用料率)について、一般的な相場(20〜25%)を根拠に原告DVDの標準小売価格の20%は下らないこと、ライセンス契約でもそのことが裏付けられると主張していましたが、控訴審では、具体的な第三者とのライセンス契約の内容が認定された結果、損害額の上乗せに成功しています。
いずれにせよ他社とのライセンス契約内容が伏せ字とはいえ一部開示されるため、その取扱いが難しいのかもしれません。
*その他の格安DVD販売事件での損害額の算定状況
・チャップリンモダンタイムス事件控訴審
著作権法114条3項:一般的な相場を主張
被告DVD価格×25%×譲渡数量
・「暁の脱走」格安DVD事件(対東宝)
著作権法114条3項:一般的な相場を主張
被告DVD価格×20%×譲渡数量
・「姿三四郎」格安DVD事件(対東宝)
著作権法114条3項:一般的な相場を主張
被告DVD価格×30%×譲渡数量
・黒澤明監督作品格安DVD事件(対松竹)控訴審
著作権法114条1項:(原告DVD価格−経費)×譲渡数量
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■過去のブログ記事
原審(2009年5月14日記事)
黒澤明監督作品格安DVD(対角川)損害賠償請求事件
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