最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「姿三四郎」格安DVD事件(対東宝 損害賠償)事件
★東京地裁平成21.7.31平成20(ワ)6849損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官 大西勝滋
裁判官 関根澄子
*裁判所サイト公表 09/8/17
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■事案
「姿三四郎」「生きる」などの映画作品の保護期間をめぐり各映画の著作者が監督なのか映画会社であるのかが争われた事案(損害賠償請求事案)
原告:東宝株式会社
被告:格安DVD製造販売会社
映画目録:
「姿三四郎」「虎の尾を踏む男達」「續姿三四郎」「わが青春に悔なし」「素晴らしき日曜日」「酔いどれ天使」「野良犬」「生きる」
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項2号、21条、113条1項1号、114条3項、旧法6条
1 本件各映画の著作者及び原告の著作権の取得原因
2 存続期間満了による本件各映画の著作権の消滅の有無
3 被告の故意又は過失による侵害行為の有無
4 原告の損害額
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■判決内容
<争点>
1 本件各映画の著作者及び原告の著作権の取得原因
旧著作権法下で制作された映画の著作者の意義について、本件各映画の差止請求事件となる知財高裁平成20.7.30判決(後掲PDF参照)の判断を前提に黒澤明監督が本件各映画の著作者であると判断されています(16頁以下)。また、本件各映画の著作権については、原告が承継取得していると認定されています(20頁以下)。
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2 存続期間満了による本件各映画の著作権の消滅の有無
黒澤明監督が本件各映画の著作者であること、本件各映画が旧著作権法6条の団体の著作名義をもって興行された著作物に当たらないことから、本件各映画の著作権の存続期間は、旧著作権法23条の3、3条、52条1項、民法141条によりいずれも黒澤明監督が死亡した平成10年の翌年から起算して38年が経過する平成48年12月31日までとなるとして、被告が本件各DVDを輸入していた平成19年1月以降よりも前に存続期間の満了により消滅しているわけではないと認定されています(22頁以下)。
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3 被告の故意又は過失による侵害行為の有無
被告による本件DVDの輸入行為が著作権法113条1項1号(侵害とみなす行為)により原告の本件各映画の著作権(複製権)を侵害する行為とみなされる点について、被告に少なくとも過失があったと認められています(26頁以下)。
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4 原告の損害額
原告の損害額に関し、著作権使用料相当額として
販売価格(1800円)×ロイヤリティ料率(30%)×輸入数量(13600枚)
合計734万4000円と認定されています(著作権法114条3項 27頁以下)。
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■コメント
本訴訟は「姿三四郎」「生きる」など黒澤明監督8作品に関する格安DVD事件の対東宝訴訟のうち、損害賠償請求に関するものとなります。
同8作品についての差止請求訴訟はすでに昨年控訴審(後掲)の判断が出ています。
損害論としてロイヤリティ料率が高めに認定されている点が注目されます。
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■過去のブログ記事
2009年7月21日記事
「暁の脱走」格安DVD事件(対東宝)
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■参考判例
差止請求訴訟
東京地裁平成19.9.14平成19(ワ)8141著作権侵害差止請求事件
原審PDF
知財高裁平成20.7.30平成19(ネ)10083著作権侵害差止請求控訴事件
控訴審PDF
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