最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
皮フ科診療所名称類似事件
★大阪地裁平成21.7.23平成20(ワ)13162不正競争行為差止等請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官 達野ゆき
裁判官 北岡裕章
*裁判所サイト公表 09/7/29
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■事案
退職した医師が開設した診療所と元の雇用先の診療所との名称の類似性や不正目的の有無が争点となった事案
原告:医療法人
被告:医師(原告元従業員)
原告表示:わたなべ皮フ科・形成外科
被告表示:わたなべ皮ふ科
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 不正競争防止法2条1項1号、19条1項2号
1 不正の目的の有無
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■判決内容
<経緯>
H5 原告診療所開設
H7.12.13 原告医療法人設立
H19.8.1〜 被告が原告に雇用
H20.6.5
H20.7.1 被告が診療所を開設
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<争点>
1 不正の目的の有無
原告の診療所に勤めていた医師が独立して元の診療所から約700メートル離れた位置に診療所を開設しました。
その際の診療所の名称に被告表示(わたなべ皮ふ科)を使用。この被告表示が原告表示(わたなべ皮フ科・形成外科)に類似するものであるとして、被告の周知表示混同惹起行為性(不正競争防止法2条1項1号)が争われました(5頁以下)。
この点について、2条1項1号の適用除外として19条1項2号(自己氏名)の規定があることから、まずはこの適用除外事由について検討がされています(自己氏名使用の抗弁)。
まず、自己の氏名を不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他不正の目的をいう。)でなく使用する行為については、
2条1項1号の規定が適用されない(19条1項2号)ことを明らかにしたうえで、
1.被告診療所の名称
(1)開設届出書において診療所の名称は原則として開設者の姓を冠することとされている
(2)被告は開業当初「あい皮ふ科」にすることを予定していた
(3)被告の「渡部」を「わたべ」と読むことも多いので誤読防止に平仮名表記したことに合理性がある
2.被告診療所の開設場所、開設時期
(1)約700メートル離れた位置にあって、ある程度の距離が存在する
(2)被告は、原告との雇用契約にあたり、開業予定を告げていた
3.被告表示の使用態様
(1)看板の色づかいが類似するが、特徴のある色彩とはいえない
(2)誤認混同防止措置も講じている
などの諸事情から、被告に不正の目的はなかったと判断しています。
結論として、原告の主張は容れられませんでした。
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■コメント
行政書士でも事務所名に氏名を用いる場合が多くて、行政書士事務所開設の際の行政書士会への登録の際も既存の事務所名とまったく同じでもかまわないという取扱いとなっていたかと思います。
被告の医師が、在職中に得た患者データを元に営業をしたとか、患者さんの引き抜きをしたということでもあれば、原告としては損害賠償請求も求めるところでしょうが、訴訟では名称の使用差止がメインとなっています。ですので、そうした悪質性を伺わせる背景事情でもないと「不正の目的」が認められるのは難しかったかもしれません。
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皮フ科診療所名称類似事件
★大阪地裁平成21.7.23平成20(ワ)13162不正競争行為差止等請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官 達野ゆき
裁判官 北岡裕章
*裁判所サイト公表 09/7/29
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■事案
退職した医師が開設した診療所と元の雇用先の診療所との名称の類似性や不正目的の有無が争点となった事案
原告:医療法人
被告:医師(原告元従業員)
原告表示:わたなべ皮フ科・形成外科
被告表示:わたなべ皮ふ科
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 不正競争防止法2条1項1号、19条1項2号
1 不正の目的の有無
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■判決内容
<経緯>
H5 原告診療所開設
H7.12.13 原告医療法人設立
H19.8.1〜 被告が原告に雇用
H20.6.5
H20.7.1 被告が診療所を開設
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<争点>
1 不正の目的の有無
原告の診療所に勤めていた医師が独立して元の診療所から約700メートル離れた位置に診療所を開設しました。
その際の診療所の名称に被告表示(わたなべ皮ふ科)を使用。この被告表示が原告表示(わたなべ皮フ科・形成外科)に類似するものであるとして、被告の周知表示混同惹起行為性(不正競争防止法2条1項1号)が争われました(5頁以下)。
この点について、2条1項1号の適用除外として19条1項2号(自己氏名)の規定があることから、まずはこの適用除外事由について検討がされています(自己氏名使用の抗弁)。
まず、自己の氏名を不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他不正の目的をいう。)でなく使用する行為については、
2条1項1号の規定が適用されない(19条1項2号)ことを明らかにしたうえで、
1.被告診療所の名称
(1)開設届出書において診療所の名称は原則として開設者の姓を冠することとされている
(2)被告は開業当初「あい皮ふ科」にすることを予定していた
(3)被告の「渡部」を「わたべ」と読むことも多いので誤読防止に平仮名表記したことに合理性がある
2.被告診療所の開設場所、開設時期
(1)約700メートル離れた位置にあって、ある程度の距離が存在する
(2)被告は、原告との雇用契約にあたり、開業予定を告げていた
3.被告表示の使用態様
(1)看板の色づかいが類似するが、特徴のある色彩とはいえない
(2)誤認混同防止措置も講じている
などの諸事情から、被告に不正の目的はなかったと判断しています。
結論として、原告の主張は容れられませんでした。
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■コメント
行政書士でも事務所名に氏名を用いる場合が多くて、行政書士事務所開設の際の行政書士会への登録の際も既存の事務所名とまったく同じでもかまわないという取扱いとなっていたかと思います。
被告の医師が、在職中に得た患者データを元に営業をしたとか、患者さんの引き抜きをしたということでもあれば、原告としては損害賠償請求も求めるところでしょうが、訴訟では名称の使用差止がメインとなっています。ですので、そうした悪質性を伺わせる背景事情でもないと「不正の目的」が認められるのは難しかったかもしれません。
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