最高裁判所HP 労働事件裁判例集より
アサヒプリテック競業避止事件
★福岡地裁平成19.10.5平成18(ワ)2157競業避止等請求事件PDF
福岡地方裁判所第2民事部
裁判官 桂木正樹
*裁判所サイト公表 09/7/2
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■事案
原告の元従業員が入社時の誓約及び就業規則に規定する退職後の競業避止義務に違反したかどうかが争点となった事案
原告:歯科用合金等貴金属リサイクル会社
被告:歯科用合金リサイクル業者
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 民法90条
1 誓約書及び就業規則の公序良俗違反性
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■判決内容
<経緯>
H5.9.21 被告が原告に入社
被告が原告に誓約書を提出
H15.6.1 就業規則改訂
H17.11.30 被告が原告を退社
誓約書条項:
「在職中の会社の全取引に対して,退社後3年以内は会社と同一又は類似の業務は致しません。上記各条項に反し万一会社に迷惑をかけたときは,その損害を賠償致します。」
就業規則条項:
「社員は,退職後2年以内の期間において,会社と同等の事業に直接又は間接を問わず従事してはならない」
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<争点>
1 誓約書及び就業規則の公序良俗違反性
原告の元従業員が入社時の誓約及び就業規則に規定する退職後の競業避止義務規定に違反して同業となる歯科用合金スクラップ業を営んでいるかどうかが争点となりました。
判決では、従業員の職業選択の自由、営業の自由と会社のノウハウ等の秘密保持の利益の衡量から、従業員の退職後の競業避止条項の合理性を判断。
競業避止規定設置の合理性の判断にあたっては、顧客の秘密性の程度や従業員の役職、競業制限の程度、代償措置などを判断要素として検討。
結論として、競業避止条項設置の合理的事情が認められず、本件誓約書及び就業規則条項(19条4項部分)が公序良俗に違反し無効と判断されています(5頁以下)。
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■コメント
2年前の判決ですが、最高裁判所のサイト(労働事件裁判例集に収録)にアップされました。顧客情報等の秘密性に乏しいと判断された事案です。
なお、平成19年には、東京地裁でヤマダ電機事件の判決が出ていますが(東京地裁平成19.4.24判決)、ヤマダ電機事件では、退職時の競業避止義務契約について、退職従業員が店長で競業制限1年という事案で競業避止義務契約違反が認められています(一部認容)。
この点、退職時の競業避止義務契約については、原則として無効とされるべきとして東京地裁判決を批判するものとして、帖佐後掲論文参照。
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■過去のブログ記事
退職後の営業秘密、ノウハウの管理に関する最近の事例について、
2008年4月3日記事
退職取締役競業事件
2008年9月28日記事
手刺繍柄バッグ販売価格営業秘密事件
2008年12月6日記事
Eコマース商品仕入先情報営業秘密事件
2009年4月25日記事
アイブロウトリートメント営業秘密事件
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■参考文献
永野周志、砂田太士、播磨洋平「営業秘密と競業避止義務の法務」(2008)260頁以下
帖佐 隆「判例評釈 ヤマダ電機事件(退職後の競業避止義務契約に関する事件)」『久留米大学法学』59.60合併号(2008)260頁以下
辻本希世士「営業秘密である顧客名簿の不正取得行為等の有無と退職後の競業避止義務の範囲」『小松陽一郎先生還暦記念論文集 最新判例知財法』(2008)538頁以下
道幸哲也「競業避止義務制約の法理」田村善之編著『新世代知的財産法政策学の創成』(2008)311頁以下
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■参考サイト
企業法務マンサバイバル(2009年06月01日記事)
競業避止義務・秘密保持義務―労働者には職業選択の自由が保障されると言っても、実際のところ裁判での勝率は52.7%程度に過ぎない件
アサヒプリテック競業避止事件
★福岡地裁平成19.10.5平成18(ワ)2157競業避止等請求事件PDF
福岡地方裁判所第2民事部
裁判官 桂木正樹
*裁判所サイト公表 09/7/2
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■事案
原告の元従業員が入社時の誓約及び就業規則に規定する退職後の競業避止義務に違反したかどうかが争点となった事案
原告:歯科用合金等貴金属リサイクル会社
被告:歯科用合金リサイクル業者
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 民法90条
1 誓約書及び就業規則の公序良俗違反性
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■判決内容
<経緯>
H5.9.21 被告が原告に入社
被告が原告に誓約書を提出
H15.6.1 就業規則改訂
H17.11.30 被告が原告を退社
誓約書条項:
「在職中の会社の全取引に対して,退社後3年以内は会社と同一又は類似の業務は致しません。上記各条項に反し万一会社に迷惑をかけたときは,その損害を賠償致します。」
就業規則条項:
「社員は,退職後2年以内の期間において,会社と同等の事業に直接又は間接を問わず従事してはならない」
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<争点>
1 誓約書及び就業規則の公序良俗違反性
原告の元従業員が入社時の誓約及び就業規則に規定する退職後の競業避止義務規定に違反して同業となる歯科用合金スクラップ業を営んでいるかどうかが争点となりました。
判決では、従業員の職業選択の自由、営業の自由と会社のノウハウ等の秘密保持の利益の衡量から、従業員の退職後の競業避止条項の合理性を判断。
競業避止規定設置の合理性の判断にあたっては、顧客の秘密性の程度や従業員の役職、競業制限の程度、代償措置などを判断要素として検討。
結論として、競業避止条項設置の合理的事情が認められず、本件誓約書及び就業規則条項(19条4項部分)が公序良俗に違反し無効と判断されています(5頁以下)。
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■コメント
2年前の判決ですが、最高裁判所のサイト(労働事件裁判例集に収録)にアップされました。顧客情報等の秘密性に乏しいと判断された事案です。
なお、平成19年には、東京地裁でヤマダ電機事件の判決が出ていますが(東京地裁平成19.4.24判決)、ヤマダ電機事件では、退職時の競業避止義務契約について、退職従業員が店長で競業制限1年という事案で競業避止義務契約違反が認められています(一部認容)。
この点、退職時の競業避止義務契約については、原則として無効とされるべきとして東京地裁判決を批判するものとして、帖佐後掲論文参照。
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■過去のブログ記事
退職後の営業秘密、ノウハウの管理に関する最近の事例について、
2008年4月3日記事
退職取締役競業事件
2008年9月28日記事
手刺繍柄バッグ販売価格営業秘密事件
2008年12月6日記事
Eコマース商品仕入先情報営業秘密事件
2009年4月25日記事
アイブロウトリートメント営業秘密事件
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■参考文献
永野周志、砂田太士、播磨洋平「営業秘密と競業避止義務の法務」(2008)260頁以下
帖佐 隆「判例評釈 ヤマダ電機事件(退職後の競業避止義務契約に関する事件)」『久留米大学法学』59.60合併号(2008)260頁以下
辻本希世士「営業秘密である顧客名簿の不正取得行為等の有無と退職後の競業避止義務の範囲」『小松陽一郎先生還暦記念論文集 最新判例知財法』(2008)538頁以下
道幸哲也「競業避止義務制約の法理」田村善之編著『新世代知的財産法政策学の創成』(2008)311頁以下
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■参考サイト
企業法務マンサバイバル(2009年06月01日記事)
競業避止義務・秘密保持義務―労働者には職業選択の自由が保障されると言っても、実際のところ裁判での勝率は52.7%程度に過ぎない件