最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
ステンレス製真空マグボトル形態模倣事件
★大阪地裁平成21.6.4平成20(ワ)15970損害賠償請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官 達野ゆき
裁判官 北岡裕章
*裁判所サイト公表 09/6/5
--------------------
■事案
ステンレス製真空マグボトルの形態の類否、依拠性が争われた事案
原告:魔法瓶製造販売会社
被告:金属類加工修理販売会社
--------------------
■結論
請求棄却
--------------------
■争点
条文 不正競争防止法2条1項3号、2条5項
1 形態の依拠性
2 形態の作出性
--------------------
■判決内容
<経緯>
H15.8 中国の会社が「GZD-C021」を製造販売
H18.11 原告が「サハラマグ」のデザイン作成を開始
H19.9 原告が「サハラマグ」の販売を開始
H20.4 被告が「サバンナミニマグボトル」の販売を開始
----------------------------------------
<争点>
1 形態の依拠性
ステンレス製真空マグボトルの形態について、原告商品と被告商品の類否(不正競争防止法2条1項3号 商品形態模倣行為性)が争われました。
ところで、被告は、中国で製造販売された商品を輸入していました。被告が中国から輸入した商品(被告商品)は、原告が販売を開始した以前から中国国内で製造販売されている商品だったかどうか、そもそも被告商品が原告商品に依拠(2条5項)して模倣されたものなのかどうかが争われました(7頁以下)。
この点について、被告商品の輸入元である中国の製造販売会社のカタログに掲載された商品と被告商品の形態がほぼ一致し、商品の型番号の同じものを被告が輸入していたことから、被告が輸入した商品は中国の会社が平成15年8月作成のカタログに掲載された商品と同一であると裁判所は判断。
結論として、時系列的にみて被告商品が原告商品の形態に依拠して作出されたものではないとして商品形態模倣行為性が否定されています。
----------------------------------------
2 形態の作出性
なお、原告は、類似商品を原告商品の販売後に海外から輸入して日本国内の市場に置く行為が、不正競争防止法2条5項の「同一の形態の商品を作り出すこと」に該当すると主張しました。
しかし、「作り出すこと」の語義から乖離すること、また不正競争防止法2条1項3号が模倣行為と輸入等の行為とを分けて規定したうえで模倣行為自体を不正競争とはせず、模倣した商品を譲渡等する行為のみを不正競争とすることとしている条文構造からも原告の主張を容れていません(10頁以下)。
--------------------
■コメント
(原告商品)
中国製品について、現地カタログに掲載された既存商品と被告が輸入した商品との同一性の認定がポイントとなりましたが、原告はカタログの不真正性やこれらの商品が異なることを立証できませんでした。
「模倣する」とは、不正競争防止法2条5項で「他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すこと」と定義されています。ここから、「模倣」の有無は、「依拠」と「実質的同一性」によって判断されることが分かりますが、今回の事案ではそもそも「他人の商品にアクセスすること」(後掲逐条解説38頁以下)という依拠性が否定された事案となったわけです。
--------------------
■参考文献
通産省知財政策室編『逐条解説不正競争防止法』(1994)37頁以下
小野昌延編『新注解不正競争防止法新版上巻』(2007)455頁以下
--------------------
■追記09/6/10
名古屋の商標亭(09/6/9記事)
よくある相談でがっくり
名古屋の商標亭(09/6/10記事)
マイボトルなマグボトル
--------------------
■追記09/6/30
「知」的ユウレイ屋敷(09.6.30記事)
[不正競争]不正競争防止法2条1項3項の摸倣の意味
ステンレス製真空マグボトル形態模倣事件
★大阪地裁平成21.6.4平成20(ワ)15970損害賠償請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官 達野ゆき
裁判官 北岡裕章
*裁判所サイト公表 09/6/5
--------------------
■事案
ステンレス製真空マグボトルの形態の類否、依拠性が争われた事案
原告:魔法瓶製造販売会社
被告:金属類加工修理販売会社
--------------------
■結論
請求棄却
--------------------
■争点
条文 不正競争防止法2条1項3号、2条5項
1 形態の依拠性
2 形態の作出性
--------------------
■判決内容
<経緯>
H15.8 中国の会社が「GZD-C021」を製造販売
H18.11 原告が「サハラマグ」のデザイン作成を開始
H19.9 原告が「サハラマグ」の販売を開始
H20.4 被告が「サバンナミニマグボトル」の販売を開始
----------------------------------------
<争点>
1 形態の依拠性
ステンレス製真空マグボトルの形態について、原告商品と被告商品の類否(不正競争防止法2条1項3号 商品形態模倣行為性)が争われました。
ところで、被告は、中国で製造販売された商品を輸入していました。被告が中国から輸入した商品(被告商品)は、原告が販売を開始した以前から中国国内で製造販売されている商品だったかどうか、そもそも被告商品が原告商品に依拠(2条5項)して模倣されたものなのかどうかが争われました(7頁以下)。
この点について、被告商品の輸入元である中国の製造販売会社のカタログに掲載された商品と被告商品の形態がほぼ一致し、商品の型番号の同じものを被告が輸入していたことから、被告が輸入した商品は中国の会社が平成15年8月作成のカタログに掲載された商品と同一であると裁判所は判断。
結論として、時系列的にみて被告商品が原告商品の形態に依拠して作出されたものではないとして商品形態模倣行為性が否定されています。
----------------------------------------
2 形態の作出性
なお、原告は、類似商品を原告商品の販売後に海外から輸入して日本国内の市場に置く行為が、不正競争防止法2条5項の「同一の形態の商品を作り出すこと」に該当すると主張しました。
しかし、「作り出すこと」の語義から乖離すること、また不正競争防止法2条1項3号が模倣行為と輸入等の行為とを分けて規定したうえで模倣行為自体を不正競争とはせず、模倣した商品を譲渡等する行為のみを不正競争とすることとしている条文構造からも原告の主張を容れていません(10頁以下)。
--------------------
■コメント
(原告商品)
中国製品について、現地カタログに掲載された既存商品と被告が輸入した商品との同一性の認定がポイントとなりましたが、原告はカタログの不真正性やこれらの商品が異なることを立証できませんでした。
「模倣する」とは、不正競争防止法2条5項で「他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すこと」と定義されています。ここから、「模倣」の有無は、「依拠」と「実質的同一性」によって判断されることが分かりますが、今回の事案ではそもそも「他人の商品にアクセスすること」(後掲逐条解説38頁以下)という依拠性が否定された事案となったわけです。
--------------------
■参考文献
通産省知財政策室編『逐条解説不正競争防止法』(1994)37頁以下
小野昌延編『新注解不正競争防止法新版上巻』(2007)455頁以下
--------------------
■追記09/6/10
名古屋の商標亭(09/6/9記事)
よくある相談でがっくり
名古屋の商標亭(09/6/10記事)
マイボトルなマグボトル
--------------------
■追記09/6/30
「知」的ユウレイ屋敷(09.6.30記事)
[不正競争]不正競争防止法2条1項3項の摸倣の意味