最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

足袋カバー包装デザイン事件

東京地裁平成21.2.27平成20(ワ)12092損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官      大竹優子
裁判官      中村恭

*裁判所サイト公表 09/3/19

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■事案

足袋カバーの包装デザインについて不正競争防止法上の
商品等表示性が争われた事案

原告:足袋、靴下製造販売会社
被告:繊維製品販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号

1 原告包装の商品等表示性
2 原告包装と被告包装との類似性

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■判決内容

<争点>

1 原告包装の商品等表示性

原告包装は、被告商品が販売された平成19年当時、約8年の
使用実績があること、原告商品の販売数量が年間1〜2万足で
あって、おおむね全国にわたって販売されていました。

もっとも、

1.大きな販売数量ではない
2.原告が宣伝広告していたのは、自社のホームページ上だけ
3.取扱業者らがネットで取扱い始めて1〜2年と短期間

こうしたことから、裁判所は、平成11年頃においても、その後
被告が販売をした平成19年6月から同年10月にかけて、また
口頭弁論終結時においても、原告包装は、原告商品を表示す
るものとして需要者に広く認識されていたものと認めることは
できないと判断しています(13頁以下)。

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2 原告包装と被告包装との類似性

原告包装と被告包装との類似性について、

1.表面下側が緑色であり、緑色の色調もほとんど同じ
2.表面下側の緑地にピンク色の花があしらわれ、ピン
 ク色の色調もほとんど同じ

という類似性がありましたが、そのほかの類似点については、
極めてありふれた構成方法、表現手法であったり、独創性、
新規性のない部分であったりして出所識別機能を有し得る部
分ではないとして、結論としては、

被告包装は,表面下側の「緑地の上にピンク色の花」の点で,原告包装に類似するが,表面中央部に記載された商品名及びロゴマークを含め,離隔的に,かつ全体的に観察すれば,被告担当者が原告包装を参考にして被告包装を作成したことを併せ考慮したとしても,原告包装に類似するとは認められない。

として、裁判所は原告包装と被告包装の類似性も否定してい
ます(15頁以下)。

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■コメント

原告被告ともに戦前からの歴史のある足袋製造メーカー
でしたが、足袋の汚れを防ぐため足袋の上から着付ける
足袋カバー商品の包装パッケージデザインの類否につい
て紛争となっています。

原被告パッケージデザイン(「優美足袋」と「美装足袋」)
の正確なところは分からないのですが、原告サイトを見
ると原告パッケージは、ピンクのデンファレ(蘭)をあしら
ったものだったかもしれません。

原告社員が退職後、ライバル会社である被告会社に就職
し、原告と取引関係のあった会社に営業活動を行ってい
たこと(9頁参照)などが、あるいは今回の民事訴訟の発
端かもしれません。

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■参考サイト

原告製品
優美足袋カバー

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■参考文献

小松一雄編『不正競業訴訟の実務』(2005)174頁以下

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