最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
Mobiledoor事件
★東京地裁平成20.2.29平成20(ワ)22987不正競争行為差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官 杉浦正典
裁判官 古庄研
*裁判所サイト公表 09/2/2
--------------------
■事案
携帯電話サイトでの営業表示の周知性獲得の有無が争われた事案
原告:ホスティングサービス、Webサイト企画運営会社
被告:ソフトウェア開発販売会社
--------------------
■結論
請求棄却
--------------------
■争点
条文 不正競争防止法2条1項1号
1 周知性の有無
2 被告による営業表示としての使用の有無
--------------------
■判決内容
<経緯>
H17 原告代表が個人事業としてMobiledoor設立
H18.3.7 原告会社(株)Mobiledoor設立
原告が携帯サイト「消費者金融ナビ」開設
H19.8.9 書籍「携帯アフィリエイト驚愕の実践ノウハウ集」に
原告紹介記事が掲載される
H20.8.14 「消費者金融ナビ」と酷似のサイトを現認
----------------------------------------
<争点>
1 周知性の有無
原告の携帯サイト「消費者金融ナビ」と酷似した体裁をもつサイ
トで「運営会社 Mobiledoor」との表示がされていたことから、
不正競争行為性(営業主体混同惹起行為性 2条1項1号)が問
題となりました。
原告の営業表示であるMobiledoorの周知性について、裁判所は、
以下の点からいまだ需要者である消費者金融を利用する可能性の
ある一般消費者の間で広く認識されているとまで認められないと
判断しています。
(4頁以下)
(1)キーワード検索結果
ソフトバンク携帯でキーワード検索すると、原告サイトが
検索結果の3番目に出てくるが、そのことはMobiledoorの
営業表示の認識性を伺わせるにとどまり、Mobiledoorの
周知性までは認めることができない。
(2)書籍記事での掲載
初版1万部、アマゾンの「ビジネスとIT」分野で41位を獲得
している書籍で紹介されている点について、このことから記
事内容が一般消費者に広く知れ渡っているとまで認めること
はできない。
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2 被告による営業表示としての使用の有無
原告の携帯サイトと酷似した体裁をもつサイトにおいて、「運営会社
Mobiledoor」との表示がされていたことから、「Mobiledoor」の表示
がこの酷似サイトの運営者の営業表示として使用されていたと裁判
所は認定しています。
(6頁以下)
もっとも、ドメインの取得にあたっては、申込者の身元等の確認手続
が取られていないことなどから、酷似サイトで「Mobiledoor」表示を
使用していたのが被告とまではいえないとして、被告の使用主体性
を否定しています。
(7頁以下)
--------------------
■コメント
不正競争防止法2条1項1号(営業主体混同惹起行為)該当性での
周知性の程度については、抽象的には「当該表示に混同を防止する
必要のあるほどの信用形成がすでになされているか否か,また,他者
の冒用を許すことが,取引秩序上の信義衡平に反する程度に達して
いるか否か」(後掲書245頁)という観点から判断されるわけですが、
携帯サイトキーワード検索システムは、2008年に大きく変化しましたし、
検索結果として上位表示されるというだけでは、周知性獲得の判断
には直ちに結びつかないところです。キーワード周りのアクセス数、ト
ラフィックに占める原告サイトの割合なども丁寧に検証する必要もある
ところですが、携帯サイトの統計情報分析の方法はまだまだこれから、
端緒についたばかりなのかもしれません。
ところで、他人がわざわざ被告の名義を使用してドメインを取得して酷
似サイトを立ち上げたとも思えない事案ですが、被告による営業表示の
使用主体性について原告には残念な判断となっています。
なお、酷似サイトでは、タイトル部分のイラストも含めて複製されていた
ので(7頁参照)、著作物性のあるイラストの無断複製、公衆送信であれ
ば著作権侵害を理由とするアプローチもあるいは考えられたところです。
--------------------
■参考文献
小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)(2007)245頁
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■参考サイト
Matimulog(2009/02/02記事)
jugement:不正競争防止法に基づく差止めの棄却例
Mobiledoor事件
★東京地裁平成20.2.29平成20(ワ)22987不正競争行為差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官 杉浦正典
裁判官 古庄研
*裁判所サイト公表 09/2/2
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■事案
携帯電話サイトでの営業表示の周知性獲得の有無が争われた事案
原告:ホスティングサービス、Webサイト企画運営会社
被告:ソフトウェア開発販売会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 不正競争防止法2条1項1号
1 周知性の有無
2 被告による営業表示としての使用の有無
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■判決内容
<経緯>
H17 原告代表が個人事業としてMobiledoor設立
H18.3.7 原告会社(株)Mobiledoor設立
原告が携帯サイト「消費者金融ナビ」開設
H19.8.9 書籍「携帯アフィリエイト驚愕の実践ノウハウ集」に
原告紹介記事が掲載される
H20.8.14 「消費者金融ナビ」と酷似のサイトを現認
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<争点>
1 周知性の有無
原告の携帯サイト「消費者金融ナビ」と酷似した体裁をもつサイ
トで「運営会社 Mobiledoor」との表示がされていたことから、
不正競争行為性(営業主体混同惹起行為性 2条1項1号)が問
題となりました。
原告の営業表示であるMobiledoorの周知性について、裁判所は、
以下の点からいまだ需要者である消費者金融を利用する可能性の
ある一般消費者の間で広く認識されているとまで認められないと
判断しています。
(4頁以下)
(1)キーワード検索結果
ソフトバンク携帯でキーワード検索すると、原告サイトが
検索結果の3番目に出てくるが、そのことはMobiledoorの
営業表示の認識性を伺わせるにとどまり、Mobiledoorの
周知性までは認めることができない。
(2)書籍記事での掲載
初版1万部、アマゾンの「ビジネスとIT」分野で41位を獲得
している書籍で紹介されている点について、このことから記
事内容が一般消費者に広く知れ渡っているとまで認めること
はできない。
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2 被告による営業表示としての使用の有無
原告の携帯サイトと酷似した体裁をもつサイトにおいて、「運営会社
Mobiledoor」との表示がされていたことから、「Mobiledoor」の表示
がこの酷似サイトの運営者の営業表示として使用されていたと裁判
所は認定しています。
(6頁以下)
もっとも、ドメインの取得にあたっては、申込者の身元等の確認手続
が取られていないことなどから、酷似サイトで「Mobiledoor」表示を
使用していたのが被告とまではいえないとして、被告の使用主体性
を否定しています。
(7頁以下)
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■コメント
不正競争防止法2条1項1号(営業主体混同惹起行為)該当性での
周知性の程度については、抽象的には「当該表示に混同を防止する
必要のあるほどの信用形成がすでになされているか否か,また,他者
の冒用を許すことが,取引秩序上の信義衡平に反する程度に達して
いるか否か」(後掲書245頁)という観点から判断されるわけですが、
携帯サイトキーワード検索システムは、2008年に大きく変化しましたし、
検索結果として上位表示されるというだけでは、周知性獲得の判断
には直ちに結びつかないところです。キーワード周りのアクセス数、ト
ラフィックに占める原告サイトの割合なども丁寧に検証する必要もある
ところですが、携帯サイトの統計情報分析の方法はまだまだこれから、
端緒についたばかりなのかもしれません。
ところで、他人がわざわざ被告の名義を使用してドメインを取得して酷
似サイトを立ち上げたとも思えない事案ですが、被告による営業表示の
使用主体性について原告には残念な判断となっています。
なお、酷似サイトでは、タイトル部分のイラストも含めて複製されていた
ので(7頁参照)、著作物性のあるイラストの無断複製、公衆送信であれ
ば著作権侵害を理由とするアプローチもあるいは考えられたところです。
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■参考文献
小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)(2007)245頁
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■参考サイト
Matimulog(2009/02/02記事)
jugement:不正競争防止法に基づく差止めの棄却例