最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
四国八十八ヶ所霊場会写真事件(控訴審)
★知財高裁平成20.12.24平成20(ネ)10051損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 田中信義
裁判官 石原直樹
裁判官 杜下弘記
*裁判所サイト公表 1/7
--------------------
■事案
原告が撮影した仏像画の写真の写真集を基に四国八十八ヶ所霊場会が
御札を無断で製作、販売したとして不正競争行為性が争われた事案の
控訴審
原告(控訴人) :写真家
被告(被控訴人):四国八十八ヶ所霊場会ら
--------------------
■結論
控訴棄却
--------------------
■争点
条文 改正前不正競争防止法2条1項3号、民法709条
1 不正競争行為性の肯否
2 一般不法行為性の肯否
--------------------
■判決内容
<争点>
1 不正競争行為性の肯否
控訴人(原告)である写真家は、四国八十八ケ所霊場会が所有する仏画を
写真撮影し、その写真の複製物を書籍に掲載し出版しましたが、被控訴人
(被告)である四国八十八ケ所霊場会は、この書籍に掲載された写真の複
製物を更に撮影した写真を使用して、仏画の御影(御札)を制作販売しま
した。こうした被控訴人らの行為に対して控訴人は不正競争行為性と一般
不法行為性を争点としました。
被告の行為の不正競争行為性(商品形態模倣行為 不正競争防止法2条1項
3号)について、書籍掲載の写真(本件写真の複製物)といった書籍の一部分
を捉えての商品性に関して裁判所は、
『同号にいう「商品」とは,競争の目的物たり得るものとして独立して取引の客体とされているものをいい,ある商品を構成する要素の一部であって,それ自体が現に独立して取引の客体とされていないようなものは,ここにいう「商品」には該当しないものと解するのが相当である。』
(25頁)
と説示したうえで、書籍自体は「商品」たり得るものの、書籍に掲載された
本件写真の複製物は書籍から独立し、競争の目的物たり得るものとして取
引の客体として予定されているものではないことは明かであるとして、本件
写真の複製物の2条1項3号所定の「商品」性を否定しています。
(24頁以下)
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2 一般不法行為性の肯否
被告四国八十八ケ所霊場会による書籍掲載の写真の複製物を更に撮影した
写真を使用しての仏画の御影(御札)の制作販売行為の不法行為性(民法
709条)がさらに争点となっています。
この点について、裁判所は、
(1)仏教美術制作家B制作の本尊絵図そのものに接しなくても、本件写真の
複製物に接するだけで直接本尊絵図に接した場合に準ずる宗教的ないし精神
的充足を得られるという点に本件写真の複製物独自の経済的価値があると考
えられるが、被告が本件御影(御札)を制作販売しても本件写真の複製物独
自の経済的価値を何ら損なうものではない。
(2)原告が本件御影(御札)の制作販売を予定したわけでもない。
(3)被告は、本件御影(御札)制作にあたって作業の省力化の利益を得てい
るが、原告も書籍制作にあたって被告の協力を得ている。
こうした諸事情を勘案して不法行為を構成するほどの違法性があるものとは
認められないと判断しています。
(26頁以下)
--------------------
■コメント
控訴審も原審の結論を維持しています。
控訴審では、不正競争防止法2条1項3号の「他人の商品」要件について、
商品の部分の「商品」性評価について、言及している点が参考になります。
なお、「商品」性に言及する過去の判例として、後掲マンホール用足掛具
事件参照。
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■過去のブログ記事
2008年5月2日記事
四国八十八ヶ所霊場会写真事件
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■参考文献
商品の部品と部分について、
小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)(2007)449頁以下参照
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■参考判例
マンホール用足掛具事件
東京地裁平成17.5.24平成15(ワ)17358不正競争防止法違反差止等請求事件PDF
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■追記09.1.22
企業法務戦士の雑感(2009-01-15記事)
■[企業法務][知財]知財高裁の親切心
四国八十八ヶ所霊場会写真事件(控訴審)
★知財高裁平成20.12.24平成20(ネ)10051損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 田中信義
裁判官 石原直樹
裁判官 杜下弘記
*裁判所サイト公表 1/7
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■事案
原告が撮影した仏像画の写真の写真集を基に四国八十八ヶ所霊場会が
御札を無断で製作、販売したとして不正競争行為性が争われた事案の
控訴審
原告(控訴人) :写真家
被告(被控訴人):四国八十八ヶ所霊場会ら
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 改正前不正競争防止法2条1項3号、民法709条
1 不正競争行為性の肯否
2 一般不法行為性の肯否
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■判決内容
<争点>
1 不正競争行為性の肯否
控訴人(原告)である写真家は、四国八十八ケ所霊場会が所有する仏画を
写真撮影し、その写真の複製物を書籍に掲載し出版しましたが、被控訴人
(被告)である四国八十八ケ所霊場会は、この書籍に掲載された写真の複
製物を更に撮影した写真を使用して、仏画の御影(御札)を制作販売しま
した。こうした被控訴人らの行為に対して控訴人は不正競争行為性と一般
不法行為性を争点としました。
被告の行為の不正競争行為性(商品形態模倣行為 不正競争防止法2条1項
3号)について、書籍掲載の写真(本件写真の複製物)といった書籍の一部分
を捉えての商品性に関して裁判所は、
『同号にいう「商品」とは,競争の目的物たり得るものとして独立して取引の客体とされているものをいい,ある商品を構成する要素の一部であって,それ自体が現に独立して取引の客体とされていないようなものは,ここにいう「商品」には該当しないものと解するのが相当である。』
(25頁)
と説示したうえで、書籍自体は「商品」たり得るものの、書籍に掲載された
本件写真の複製物は書籍から独立し、競争の目的物たり得るものとして取
引の客体として予定されているものではないことは明かであるとして、本件
写真の複製物の2条1項3号所定の「商品」性を否定しています。
(24頁以下)
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2 一般不法行為性の肯否
被告四国八十八ケ所霊場会による書籍掲載の写真の複製物を更に撮影した
写真を使用しての仏画の御影(御札)の制作販売行為の不法行為性(民法
709条)がさらに争点となっています。
この点について、裁判所は、
(1)仏教美術制作家B制作の本尊絵図そのものに接しなくても、本件写真の
複製物に接するだけで直接本尊絵図に接した場合に準ずる宗教的ないし精神
的充足を得られるという点に本件写真の複製物独自の経済的価値があると考
えられるが、被告が本件御影(御札)を制作販売しても本件写真の複製物独
自の経済的価値を何ら損なうものではない。
(2)原告が本件御影(御札)の制作販売を予定したわけでもない。
(3)被告は、本件御影(御札)制作にあたって作業の省力化の利益を得てい
るが、原告も書籍制作にあたって被告の協力を得ている。
こうした諸事情を勘案して不法行為を構成するほどの違法性があるものとは
認められないと判断しています。
(26頁以下)
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■コメント
控訴審も原審の結論を維持しています。
控訴審では、不正競争防止法2条1項3号の「他人の商品」要件について、
商品の部分の「商品」性評価について、言及している点が参考になります。
なお、「商品」性に言及する過去の判例として、後掲マンホール用足掛具
事件参照。
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■過去のブログ記事
2008年5月2日記事
四国八十八ヶ所霊場会写真事件
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■参考文献
商品の部品と部分について、
小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)(2007)449頁以下参照
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■参考判例
マンホール用足掛具事件
東京地裁平成17.5.24平成15(ワ)17358不正競争防止法違反差止等請求事件PDF
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■追記09.1.22
企業法務戦士の雑感(2009-01-15記事)
■[企業法務][知財]知財高裁の親切心