27日に開催された著作権情報センター主催月例著作権研究会講演
会は、東京地裁民事40部大竹優子判事による「最近の著作権裁判例
について」でした。

この時期のこの講演は、一年(平成19年11月から20年10月)の著作
権判例を振り返ることになって、毎回とてもたのしみにしている講演会
です。

大竹判事は、2時間という枠の中で、裁判所サイトに公表された40件
のなかの10件の判例について取り上げて事案の概要や争点を分かり
易く解説されておいででした。

■映画関係
 「シェーン映画事件上告審」
 「黒澤映画事件控訴審」
 「チャップリン映画事件控訴審」
 「北朝鮮映画事件」
■ネット関係
 「まねきTV事件」
 「ロクラクII事件」
■翻案権関係
 「パズル事件」
 「祇園祭写真集事件」
■その他
 「土地宝典事件」
 「社保庁・LAN事件」


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地裁と知財高裁で争点での判断が分かれたものとしては、「土地宝典
事件」がありました。
事案処理として侵害主体性の判断まで検討するかどうか(民法719条
2項の幇助で済むなら間接侵害論は検討不要)印象に残った事案でし
たが、それよりもむしろ、不当利得の成否に関する争点が重要との大
竹判事の指摘には考えさせられました。

規範的に侵害主体性が判断される場合の不当利得の「利益」の捉え
方について、民法理論まで遡って整合性を検討する必要がある点は、
今後議論が重ねられそうです。

なお、この点については、大竹判事も紹介されていた本山雅弘先生の
「地図の著作物性と規範的な侵害主体による不当利得の成否ー土地
宝典事件」『L&T』41号(2008)の115頁以下で検討が加えられてい
ます。