最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
裁判傍聴記事件
★知財高裁平成20.7.17平成20(ネ)10009発信者情報開示等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 中平健
裁判官 上田洋幸
--------------------
■事案
原告作成の裁判傍聴記が無断転載され、その記事がヤフー
ブログに掲載されていたことから、ヤフーに対して発信者
情報開示、ブログ記事の削除を求めた事案
原告:サイト運営者
被告:ヤフー
--------------------
■結論
控訴棄却
--------------------
■争点
条文 著作権法2条1項1号、10条2項、プロバイダー責任制限法4条1項
1 裁判傍聴記の著作物性
--------------------
■判決内容
<争点>
1 裁判傍聴記の著作物性
原告がライブドア堀江貴文被告の証券取引法違反被告事
件の第4回公判期日を傍聴しその内容の一部をメモした
うえ傍聴記を作成、それをウェブサイトに掲載していました。
この原告傍聴記を無断転載した者がいたことから、ブログ
の発信者情報開示とブログ記事の削除を求め、その前提
として原告傍聴記の著作物性が争点となりました。
裁判所は、著作物性の判断について、表現が平凡かつあ
りふれたものである場合は記述者の個性が現れていない
ものとして、「創作的に表現されたもの」(2条1項1号)であ
るとすることはできず、また、もっぱら事実を叙述する場合
は、「思想又は感情」を表現したことにならない(10条2項)
との一般論を説示。
そのうえで、原告傍聴記の内容について、
(1)証人が実際に証言した内容を原告が聴取したとおりの記述
(2)要約したものであってもありふれた方法である
(3)大項目や中項目などの付加的表記もごくありふれたもの、短いもの
(4)証言の順序の入替えなどに創意工夫があるとはいえない
結論として、原告傍聴記について著作物性を否定しました。
(7頁以下)
著作権侵害性が否定されたことから、プロバイダー責任
制限法4条1項「自己の権利を侵害された」者に原告が当
たらない(侵害の明白性もない)ことになります。
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■コメント
転載先のブログは、こちらです(別紙ブログ目録)。
Yahoo!ブログ - ライブドア被害者日記
丸山 サトシ氏への検察側による主尋問(2006.9.30 記事1)
ライブドア事件検察側証人尋問 (2006.10.25 記事2)
その記事に原告が無断転載しないようコメントしていま
す(記事1コメント欄参照)。
原告サイト
堀江貴文ライブドア事件裁判傍聴記
参照:Matimulog(2008/07/18)
arret:発信者情報開示請求棄却例
--------------------
原審でも裁判傍聴記の著作物性が否定されていましたが
(裁判所サイト未登載)、控訴審でも否定された結果となっ
ています。
原告は裁判傍聴記を短いセンテンスで箇条書きのメモの
ような体裁でウェブサイトに掲載していました。
過去に記事見出しに著作物性を認めなかった事例として
ヨミウリオンライン事件がありますが、今回の裁判傍聴記
に創作性を認めず、無断転載をしても著作権侵害性とは
ならないとの判断を知財高裁が下したことは、ブログなど
サイト利用、運営の際の転載や引用を考えるうえで先例
として重要です。
ところで、10条2項の規定が著作権による保護の例外規
定であるとして適用範囲を限定的に解釈する立場(内田
晋「日刊情報事件」『著作権判例百選第二版』(1994)
11頁参照)に立った場合、本件のような内容のウェブ記
事が「事実の伝達」にあたるかどうか、判断が微妙なと
ころですが、デッドコピー事案であるにもかかわらず著作
権侵害性を否定していることもあわせ考えると、もしかし
たら来年5月には裁判員制度も始まりますし裁判官の政
策的価値判断として、「裁判での証言内容などの表現は
できるかぎり自由に利用させるべき」との考えが働いた
のかもしれません。
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■参考判例
10条2項「事実の伝達」にかかわる裁判例として以下の
ようなものがあります。
(1)〜(7)のうち(7)だけが著作物性否定の事案です。
(1)民青の告白事件
東京地裁昭和47.10.11判決昭和44(ワ)9353損害賠償等請求事件
(2)日刊情報事件
福岡地裁大牟田支部昭和59.9.28判決昭和58(ヨ)51販売差止仮処分事件
(3)ウォール・ストリート・ジャーナル記事事件
東京地裁平成3.9.24決定平成2(ヨ)2550著作権侵害差止仮処分申請事件
(4)コムライン・デイリー・ニュース事件
東京地裁平成6.2.18判決平成4(ワ)2085著作権民事訴訟
(5)SMAP大研究事件
東京地裁平成10.10.29判決平成7(ワ)19455著作権民事訴訟
(6)ホテルジャンキーズ事件
知財高裁平成14.10.29判決平成14(ネ)2887等著作権侵害差止等請求控訴事件等
東京地裁平成14.4.15判決平成13(ワ)22066著作権侵害差止等請求事件
(7)ヨミウリオンライン事件
知財高裁平成17.10.6判決平成17(ネ)10049著作権侵害差止等請求控訴事件
東京地裁平成16.3.24判決平成14(ワ)28035著作権侵害差止等請求事件
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そのほか、歴史的事実の叙述について、
(8)井深大葬儀事件
東京高裁平成14.9.19判決平成13(ネ)602書籍発行差止等請求控訴事件
東京地裁平成12.12.26判決平成11(ワ)26366書籍発行差止等請求事件
葬儀という歴史的事実の客観的記述として創作性が否定さ
れた事案です。
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■参考文献
花村征志「時事の雑報及び時事の報道-「日刊情報」事件-」
『著作権判例百選第三版』(2001)10頁以下
著作権判例研究会編「最新著作権関係判例集」1巻83頁以下、
4巻79頁以下、10巻110頁以下
中山信弘「著作権法」(2007)38頁以下
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■追記08.7.24
・企業法務戦士の雑感(2008-07-22記事)
■[企業法務][知財]腑に落ちない結論
・「知」的ユウレイ屋敷(2008年07月21日記事)
[著作権]速報的ブログ記事の著作物性
・阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」(2008年7月21日記事)
強姦の長崎国際テレビ局員、否認したのは会社のため
・今井亮一の交通違反バカ一代!(2008年7月19日 (土)記事)
ブログ記事の無断転載が合法!?
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■追記08/11/2
MORI LOG ACADEMY(森博嗣) 2008年10月29日(水曜日)記事
【社会】 著作権とは
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■追記08/12/12
最高裁第1小法廷(涌井紀夫裁判長)が12月11日、上告不受理決定
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■追記09.2.5
TKCローライブラリー速報判例解説
上野達弘「裁判傍聴記の著作物性(ライブドア裁判傍聴記事件)(知的財産高等裁判所平成20年7月17日判決)」PDF
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■追記09.7.12
泉 克幸「裁判傍聴記の著作物性の判断-ライブドア裁判傍聴記事件-」『知財管理』59巻6号(2009)689頁以下
裁判傍聴記事件
★知財高裁平成20.7.17平成20(ネ)10009発信者情報開示等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 中平健
裁判官 上田洋幸
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■事案
原告作成の裁判傍聴記が無断転載され、その記事がヤフー
ブログに掲載されていたことから、ヤフーに対して発信者
情報開示、ブログ記事の削除を求めた事案
原告:サイト運営者
被告:ヤフー
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、10条2項、プロバイダー責任制限法4条1項
1 裁判傍聴記の著作物性
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■判決内容
<争点>
1 裁判傍聴記の著作物性
原告がライブドア堀江貴文被告の証券取引法違反被告事
件の第4回公判期日を傍聴しその内容の一部をメモした
うえ傍聴記を作成、それをウェブサイトに掲載していました。
この原告傍聴記を無断転載した者がいたことから、ブログ
の発信者情報開示とブログ記事の削除を求め、その前提
として原告傍聴記の著作物性が争点となりました。
裁判所は、著作物性の判断について、表現が平凡かつあ
りふれたものである場合は記述者の個性が現れていない
ものとして、「創作的に表現されたもの」(2条1項1号)であ
るとすることはできず、また、もっぱら事実を叙述する場合
は、「思想又は感情」を表現したことにならない(10条2項)
との一般論を説示。
そのうえで、原告傍聴記の内容について、
(1)証人が実際に証言した内容を原告が聴取したとおりの記述
(2)要約したものであってもありふれた方法である
(3)大項目や中項目などの付加的表記もごくありふれたもの、短いもの
(4)証言の順序の入替えなどに創意工夫があるとはいえない
結論として、原告傍聴記について著作物性を否定しました。
(7頁以下)
著作権侵害性が否定されたことから、プロバイダー責任
制限法4条1項「自己の権利を侵害された」者に原告が当
たらない(侵害の明白性もない)ことになります。
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■コメント
転載先のブログは、こちらです(別紙ブログ目録)。
Yahoo!ブログ - ライブドア被害者日記
丸山 サトシ氏への検察側による主尋問(2006.9.30 記事1)
ライブドア事件検察側証人尋問 (2006.10.25 記事2)
その記事に原告が無断転載しないようコメントしていま
す(記事1コメント欄参照)。
原告サイト
堀江貴文ライブドア事件裁判傍聴記
参照:Matimulog(2008/07/18)
arret:発信者情報開示請求棄却例
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原審でも裁判傍聴記の著作物性が否定されていましたが
(裁判所サイト未登載)、控訴審でも否定された結果となっ
ています。
原告は裁判傍聴記を短いセンテンスで箇条書きのメモの
ような体裁でウェブサイトに掲載していました。
過去に記事見出しに著作物性を認めなかった事例として
ヨミウリオンライン事件がありますが、今回の裁判傍聴記
に創作性を認めず、無断転載をしても著作権侵害性とは
ならないとの判断を知財高裁が下したことは、ブログなど
サイト利用、運営の際の転載や引用を考えるうえで先例
として重要です。
ところで、10条2項の規定が著作権による保護の例外規
定であるとして適用範囲を限定的に解釈する立場(内田
晋「日刊情報事件」『著作権判例百選第二版』(1994)
11頁参照)に立った場合、本件のような内容のウェブ記
事が「事実の伝達」にあたるかどうか、判断が微妙なと
ころですが、デッドコピー事案であるにもかかわらず著作
権侵害性を否定していることもあわせ考えると、もしかし
たら来年5月には裁判員制度も始まりますし裁判官の政
策的価値判断として、「裁判での証言内容などの表現は
できるかぎり自由に利用させるべき」との考えが働いた
のかもしれません。
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■参考判例
10条2項「事実の伝達」にかかわる裁判例として以下の
ようなものがあります。
(1)〜(7)のうち(7)だけが著作物性否定の事案です。
(1)民青の告白事件
東京地裁昭和47.10.11判決昭和44(ワ)9353損害賠償等請求事件
(2)日刊情報事件
福岡地裁大牟田支部昭和59.9.28判決昭和58(ヨ)51販売差止仮処分事件
(3)ウォール・ストリート・ジャーナル記事事件
東京地裁平成3.9.24決定平成2(ヨ)2550著作権侵害差止仮処分申請事件
(4)コムライン・デイリー・ニュース事件
東京地裁平成6.2.18判決平成4(ワ)2085著作権民事訴訟
(5)SMAP大研究事件
東京地裁平成10.10.29判決平成7(ワ)19455著作権民事訴訟
(6)ホテルジャンキーズ事件
知財高裁平成14.10.29判決平成14(ネ)2887等著作権侵害差止等請求控訴事件等
東京地裁平成14.4.15判決平成13(ワ)22066著作権侵害差止等請求事件
(7)ヨミウリオンライン事件
知財高裁平成17.10.6判決平成17(ネ)10049著作権侵害差止等請求控訴事件
東京地裁平成16.3.24判決平成14(ワ)28035著作権侵害差止等請求事件
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そのほか、歴史的事実の叙述について、
(8)井深大葬儀事件
東京高裁平成14.9.19判決平成13(ネ)602書籍発行差止等請求控訴事件
東京地裁平成12.12.26判決平成11(ワ)26366書籍発行差止等請求事件
葬儀という歴史的事実の客観的記述として創作性が否定さ
れた事案です。
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■参考文献
花村征志「時事の雑報及び時事の報道-「日刊情報」事件-」
『著作権判例百選第三版』(2001)10頁以下
著作権判例研究会編「最新著作権関係判例集」1巻83頁以下、
4巻79頁以下、10巻110頁以下
中山信弘「著作権法」(2007)38頁以下
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■追記08.7.24
・企業法務戦士の雑感(2008-07-22記事)
■[企業法務][知財]腑に落ちない結論
・「知」的ユウレイ屋敷(2008年07月21日記事)
[著作権]速報的ブログ記事の著作物性
・阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」(2008年7月21日記事)
強姦の長崎国際テレビ局員、否認したのは会社のため
・今井亮一の交通違反バカ一代!(2008年7月19日 (土)記事)
ブログ記事の無断転載が合法!?
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■追記08/11/2
MORI LOG ACADEMY(森博嗣) 2008年10月29日(水曜日)記事
【社会】 著作権とは
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■追記08/12/12
最高裁第1小法廷(涌井紀夫裁判長)が12月11日、上告不受理決定
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■追記09.2.5
TKCローライブラリー速報判例解説
上野達弘「裁判傍聴記の著作物性(ライブドア裁判傍聴記事件)(知的財産高等裁判所平成20年7月17日判決
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■追記09.7.12
泉 克幸「裁判傍聴記の著作物性の判断-ライブドア裁判傍聴記事件-」『知財管理』59巻6号(2009)689頁以下