最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
ネットワーク研修教材事件(第2事件)
★東京地裁平成20.6.25平成19(ワ)33577販売差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官 坂本三郎
裁判官 國分隆文
--------------------
■事案
CCNPネットワーク技術者認定資格試験の教本の無断複製が
争われた事案
原告:システム、人材開発会社
被告:ナレッジツール事業会社
情報処理ソフト開発会社
--------------------
■結論
請求一部認容
--------------------
■争点
条文 著作権法第15条、21条、19条、113条1項2号
1 原告教本についての職務著作の成否
2 平成18年1月以降における被告教本の作成、販売の事実及び将来におけるそれらのおそれの有無
3 著作権侵害及び著作者人格権侵害についての故意、過失の有無
4 損害の発生の有無及びその額
--------------------
■判決内容
<経緯>
H16.3〜 原告が講義資料をまとめて原告教本として作成、製本
H17.6.20 Aが原告会社を退社
H17.9.7 Aら退職社員が被告アドバンサーブを設立
代表取締役にはAが、監査役には被告ケンソフト代表取締役が就任
H17.9〜12 被告アドバンサーブが被告教本を作成、販売
被告ケンソフトが他者に販売
--------------------
<争点>
1 原告教本についての職務著作の成否
被告らは、原告教本は当時、原告従業員であったAらを
中心とする講義担当者らが講義をしやすくするための
補足資料として、自主的に作成したものをまとめたもの
にすぎず、原告の発意も指示もなかった、として職務著作
(著作権法15条1項)による教本の著作権及び著作者人格
権の原告への帰属はない、あくまで講義担当講師らに著作
権、著作者人格権は帰属している、と反論していました。
(1)「発意」について
しかし、裁判所は、
『「発意」については,法人等の使用者の自発的意思に基づき,従業員に対して個別具体的な命令がされたような場合のみならず,当該雇用関係等から外形的に観察して,法人等の使用者の包括的,間接的な意図の下に創作が行われたと評価できる場合も含まれるものと解すべきである。』
(14頁)
としたうえで、原告教本が、原告のエンジニア教育事
業のための講義の補助資料として作成されているもの
が基本となっていることから、少なくとも原告の包括的、
間接的な意図の下で教本の創作が行われたと評価し、
原告の「発意に基づき」作成されたとしています。
(14頁以下)
--------------------
(2)「職務」について
続けて、原告の職務上作成されたものかどうかの要件に
ついて、裁判所は、
『「職務」についても,同様の観点から,法人等の使用者により個別具体的に命令された内容だけを指すのではなく,当該職務の内容として従業者に対して期待されているものも含まれ,その「職務上」に該当するか否かについては,当該従業者の地位や業務の種類・内容,作成された著作物の種類・内容等の事情を総合考慮して,外形的に判断されるものと解すべきである。』
とした上で、原告教本の基本となる講義資料は、従業員
らが講義において行う説明と一体となるもので講義の内
容と離れて従業員らの興味、関心に従って作成されたも
のではないことから、こうした講義資料をとりまとめて
作成された原告教本は、原告の「職務上作成されたもの」
ということができる、としています。
(15頁以下)
--------------------
(3)15条1項の各要件を充足
結論として、著作権法15条1項の各要件を充足し、原告
教本について職務著作が成立して原告に著作権及び著
作者人格権が帰属すると判断されました。
--------------------
(4)著作権及び著作者人格権侵害の肯定
そして、Aらが退職後設立した被告アドバンサーブに
よって作成された被告教本による原告教本に対する複
製権及び氏名表示権侵害と被告教本を販売した被告ケ
ンソフトの著作権及び著作者人格権侵害のみなし侵害
行為性(著作権法113条1項2号)を肯定しています。
(16頁以下)
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2 平成18年1月以降における被告教本の作成、販売の事実及び将来におけるそれらのおそれの有無
平成17年9月から12月まで被告アドバンサーブが被告
教本を作成、それを被告ケンソフトに販売していたことに
当事者間に争いはありませんが、18年1月以降の被告
教本の製造、販売については、その事実の有無、可能性
について争点となっています。
結論としては、被告教本の製造、販売の事実は認め
られず、またその可能性も認定されていません。
(17頁以下)
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3 著作権侵害及び著作者人格権侵害についての故意、過失の有無
被告らは、原告教本がAらを中心とする講義担当講師ら
の著作物と信じていたとして著作権侵害及び著作者人
格権侵害についての故意、過失がない旨の反論をして
いましたが、裁判所は、被告らの故意を認定しています。
(18頁以下)
被告ケンソフトについては、被告ケンソフトが平成16年4月
から平成17年8月の間に原告主催のセミナーで原告教本
を使用していたことから、原告への著作権及び著作者
人格権の帰属についての認識が推認されています。
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4 損害の発生の有無及びその額
(1)著作権侵害による損害
製造販売された被告教本が30セット、原告教本1セットあたり
の利益額が3万4463円であったことから103万円余が損害額
として認定されています(著作権法114条1項本文)。
(19頁以下)
(2)著作者人格権侵害による損害
被告アドバンサーブについては30万円、被告ケンソフトに
ついては20万円が非財産的損害として認定されています。
(20頁)
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■コメント
退職従業員による研修教材流用事案の第2事件です。
第1事件(東京地裁平成20.4.18平成18(ワ)26738損害賠償
等請求事件)はCCNA(Cisco Certified Network Associate)
資格教本を巡っての著作権紛争でしたが、今回は、CCNA
よりも難度の高い上級資格CCNP(Cisco Certified Network
Professional)の教本が対象となりました。
なお、平成18年8月3日に和解が成立した東京地裁平成18
(ワ)2012を加えれば原告京西クリエイトと被告アドバン
サーブとの間の訴訟は本件で3件目のものとなります。
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■過去のブログ記事
2008年4月28日記事(第1事件)
ネットワーク研修教材事件
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ネットワーク研修教材事件(第2事件)
★東京地裁平成20.6.25平成19(ワ)33577販売差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官 坂本三郎
裁判官 國分隆文
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■事案
CCNPネットワーク技術者認定資格試験の教本の無断複製が
争われた事案
原告:システム、人材開発会社
被告:ナレッジツール事業会社
情報処理ソフト開発会社
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法第15条、21条、19条、113条1項2号
1 原告教本についての職務著作の成否
2 平成18年1月以降における被告教本の作成、販売の事実及び将来におけるそれらのおそれの有無
3 著作権侵害及び著作者人格権侵害についての故意、過失の有無
4 損害の発生の有無及びその額
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■判決内容
<経緯>
H16.3〜 原告が講義資料をまとめて原告教本として作成、製本
H17.6.20 Aが原告会社を退社
H17.9.7 Aら退職社員が被告アドバンサーブを設立
代表取締役にはAが、監査役には被告ケンソフト代表取締役が就任
H17.9〜12 被告アドバンサーブが被告教本を作成、販売
被告ケンソフトが他者に販売
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<争点>
1 原告教本についての職務著作の成否
被告らは、原告教本は当時、原告従業員であったAらを
中心とする講義担当者らが講義をしやすくするための
補足資料として、自主的に作成したものをまとめたもの
にすぎず、原告の発意も指示もなかった、として職務著作
(著作権法15条1項)による教本の著作権及び著作者人格
権の原告への帰属はない、あくまで講義担当講師らに著作
権、著作者人格権は帰属している、と反論していました。
(1)「発意」について
しかし、裁判所は、
『「発意」については,法人等の使用者の自発的意思に基づき,従業員に対して個別具体的な命令がされたような場合のみならず,当該雇用関係等から外形的に観察して,法人等の使用者の包括的,間接的な意図の下に創作が行われたと評価できる場合も含まれるものと解すべきである。』
(14頁)
としたうえで、原告教本が、原告のエンジニア教育事
業のための講義の補助資料として作成されているもの
が基本となっていることから、少なくとも原告の包括的、
間接的な意図の下で教本の創作が行われたと評価し、
原告の「発意に基づき」作成されたとしています。
(14頁以下)
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(2)「職務」について
続けて、原告の職務上作成されたものかどうかの要件に
ついて、裁判所は、
『「職務」についても,同様の観点から,法人等の使用者により個別具体的に命令された内容だけを指すのではなく,当該職務の内容として従業者に対して期待されているものも含まれ,その「職務上」に該当するか否かについては,当該従業者の地位や業務の種類・内容,作成された著作物の種類・内容等の事情を総合考慮して,外形的に判断されるものと解すべきである。』
とした上で、原告教本の基本となる講義資料は、従業員
らが講義において行う説明と一体となるもので講義の内
容と離れて従業員らの興味、関心に従って作成されたも
のではないことから、こうした講義資料をとりまとめて
作成された原告教本は、原告の「職務上作成されたもの」
ということができる、としています。
(15頁以下)
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(3)15条1項の各要件を充足
結論として、著作権法15条1項の各要件を充足し、原告
教本について職務著作が成立して原告に著作権及び著
作者人格権が帰属すると判断されました。
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(4)著作権及び著作者人格権侵害の肯定
そして、Aらが退職後設立した被告アドバンサーブに
よって作成された被告教本による原告教本に対する複
製権及び氏名表示権侵害と被告教本を販売した被告ケ
ンソフトの著作権及び著作者人格権侵害のみなし侵害
行為性(著作権法113条1項2号)を肯定しています。
(16頁以下)
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2 平成18年1月以降における被告教本の作成、販売の事実及び将来におけるそれらのおそれの有無
平成17年9月から12月まで被告アドバンサーブが被告
教本を作成、それを被告ケンソフトに販売していたことに
当事者間に争いはありませんが、18年1月以降の被告
教本の製造、販売については、その事実の有無、可能性
について争点となっています。
結論としては、被告教本の製造、販売の事実は認め
られず、またその可能性も認定されていません。
(17頁以下)
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3 著作権侵害及び著作者人格権侵害についての故意、過失の有無
被告らは、原告教本がAらを中心とする講義担当講師ら
の著作物と信じていたとして著作権侵害及び著作者人
格権侵害についての故意、過失がない旨の反論をして
いましたが、裁判所は、被告らの故意を認定しています。
(18頁以下)
被告ケンソフトについては、被告ケンソフトが平成16年4月
から平成17年8月の間に原告主催のセミナーで原告教本
を使用していたことから、原告への著作権及び著作者
人格権の帰属についての認識が推認されています。
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4 損害の発生の有無及びその額
(1)著作権侵害による損害
製造販売された被告教本が30セット、原告教本1セットあたり
の利益額が3万4463円であったことから103万円余が損害額
として認定されています(著作権法114条1項本文)。
(19頁以下)
(2)著作者人格権侵害による損害
被告アドバンサーブについては30万円、被告ケンソフトに
ついては20万円が非財産的損害として認定されています。
(20頁)
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■コメント
退職従業員による研修教材流用事案の第2事件です。
第1事件(東京地裁平成20.4.18平成18(ワ)26738損害賠償
等請求事件)はCCNA(Cisco Certified Network Associate)
資格教本を巡っての著作権紛争でしたが、今回は、CCNA
よりも難度の高い上級資格CCNP(Cisco Certified Network
Professional)の教本が対象となりました。
なお、平成18年8月3日に和解が成立した東京地裁平成18
(ワ)2012を加えれば原告京西クリエイトと被告アドバン
サーブとの間の訴訟は本件で3件目のものとなります。
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■過去のブログ記事
2008年4月28日記事(第1事件)
ネットワーク研修教材事件
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