裁判所HP 知的財産裁判例集より

「家庭用マッサージ治療器形態模倣」事件

東京地裁平成19.12.26平成18(ワ)27454不正競争行為差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官     大竹優子
裁判官     宮崎雅子


■事案

類似する形態の家庭用マッサージ治療器(針付きバイブレーター)を
巡って不正競争行為性が争われた事案

原告:医療機器製造販売会社
被告:医療機器販売会社ら


■結論

請求一部認容


■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号、5条1項但書

1 商品等表示性
2 類似性
3 混同のおそれ
4 差止めの可否
5 故意過失
6 損害論


■判決内容

<争点>


1 商品等表示性

原告製品の本体の形態の特徴について、構成態様を検討の上、周知性も
あったと認定。ありふれた形態であるとの被告の主張も退けて結論的に
商品等表示性を肯定しています。
(29頁以下)


2 類似性

原告製品の本体と被告製品の本体を対比した上、類似性を肯定しています。
(33頁以下)


3 混同のおそれ

製品本体の類似性とともに混同を増大させる要因として製品を黒アタッシュ
ケースに格納する方法(パッケージ)や販売方法、販売場所(体験会開催)の
同一性がありました。
製品が20万円以上する高額商品であり、消費者はよく吟味するであろうことが
混同を減少させる要因として勘案されていますが、結論としては混同を生じる
おそれがあると判断されています。
(35頁以下)


4 差止めの可否

被告らに対する被告製品の製造、販売、販売のための展示の差止め、部品の
廃棄などが認められています。
(39頁以下)


5 故意過失

被告らに原告の営業上の利益の侵害につき、故意または重過失が認められて
います。
(40頁以下)


6 損害論

被告らの新たな販売網拡大(訪問販売など)による被告製品の販売という点を
とらえて、被告らが販売した数量のうち、7割については、
「被侵害者が販売することができないとする事情」(5条1項但書)にあたるとして、
損害額から控除しています。
(43頁以下)

5条1項但書の「事情」について、小野昌延編「新注解不正競争防止法新版
(下)(2007)936頁以下参照。


■コメント

被告らは、被告製品の開発・製造にあたって中国のメーカーに部品設計を
委託しましたが、その際、原告製品を交付し中国メーカーはデジタイジング
による複写または電鋳による転写を行い、被告製品製造用の金型を作成して
いました。

被告製品本体の形態は原告製品本体の形態のコピーであったわけですが、
製品部分品や金型の廃棄などはともかくとして、損害論では損害額が低く
抑えられてしまっています。




■参考サイト

シンアツシン 専門店 『シンアツシン・ショップ』

楽らく針