裁判所HP 知的財産裁判例集より
「ウイルスソフト回収誓約書」事件
★東京地裁平成19.12.21平成19(ワ)16458損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 宮崎雅子
■事案
合意文書の規定を削除線で削除した行為の解釈を巡って争われた事案
原告:ソフトウエア製造販売会社
被告:ソフトウエア製造販売会社
■結論
請求棄却
■争点
1 回収約束の有無
■判決内容
<経緯>
H17.07 原告が「ウイルスセキュリティZERO」を発売
H18.05.15 原告が「ウイルスセキュリティZERO、ゼロ」で商標出願
H19.02.28 拒絶査定
H19.03.02 被告が「ウイルスキラーZERO(ゼロ)」を発売
H19.03.23 被告保有はがき作成ソフト「筆王」の著作権及び商標権を
原告に売却
H19.03.28 原告が不服審査請求
同日 原告被告代取が会食したうえで本件誓約書を作成
「ウイルスセキュリティZERO」
開発:K7 Computing Private Ltd
著作権・販売:原告
「ウイルスキラーゼロ」
開発:Rising technology Corp(中国/瑞星)
販売:被告
<争点>
1 回収約束の有無
原告被告は被告が発売しているアンチウイルスソフトの名称の一部
を使用しないことに合意し、「誓約書」(被告が差し出す形式)の
体裁で文書を作成していました。
(合意内容)
・被告アンチウイルスソフトについて、ローマ字表記「ZERO」をしない
・「ZERO」を使用した被告商品の回収指示期限を「4月末日」とする
なお、回収義務を定める規定に2本の斜め線で大きな×が付されていて、
2本の斜め線上には、被告代表取締役の署名がありました。
原告は、「ZERO」標章の使用の取り止め(新たな出荷の中止)だけで
なく、「ZERO」が付された製品の回収についても合意が成立していると
主張しました。
この点、原告は、2本の斜め線の上に被告が署名をしたのをとらえて、
『いったん記載した2本の削除線を削除した』(4頁)としています。
しかし、裁判所は、
『ビジネス上の合意の解釈に当たっては,そこで取り決められた事項が大きな経済的影響を有し,さらに,合意事項を明確に書面化しておくことが可能であり,また,取引の実務においても重要事項は書面で明確に規定されていることが多いものであるから,合意内容の裁判上の認定においても,書面の有無及び規定内容が重視される。
(イ) 本件では,回収義務を明示した本件誓約書(甲4)の第2項が2本の斜め線で削除されているから(前提事実(3)イ),本件誓約書からは,回収義務は定められなかったと解釈する方が自然である。
(ウ) 原告は,Aが2本の斜め線上に「A」の署名をしたことをもって,2本の削除線を削除した旨主張するが,そのように解することは到底できない。』
(6頁)
として、原告の主張を一蹴しています。
■コメント
原告の11期有価証券報告書と12期中半期報告書を見ると、
「ウイルスセキュリティZERO」に営業資源を集中させていて、
このソフトが売上はむろん取扱ソフトの平均販売単価を押し上げる
といった貢献をしたヒット商品であることがわかります。
原告は、「コモディティ化戦略」「製品ブランド管理の重視」といった
経営方針のもとで、「ZERO」ブランド保護への焦りでもあったので
しょうか、あるいは、はがき作成ソフト「筆王」を8億円で被告から
購入する側として強い立場に立つと思ったのか、話合いで商品名の
使い方に折り合いを付けようとしたのは良かったのですが、
どうしたわけか、原告の役員らは雑な文書を作ってしまいました。
判決文からは背景事情がよくわかりませんが、民事40部の市川コート
をして争点の判断部分は数行の判示(判決文全体でもわずか7ページ)
ですから、「なんだかなあ」という訴訟です。
■関連サイト
ソースネクスト IR情報 IRファイリング
ソースネクスト・スタイル・セキュリティ
ウイルスキラーゼロ
cf.ソースネクスト対日本IBM事件(ホームページビルダー11訴訟)について
平成19年12月25日付IR情報PDF
訴訟の経過に関するお知らせ
「ウイルスソフト回収誓約書」事件
★東京地裁平成19.12.21平成19(ワ)16458損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 宮崎雅子
■事案
合意文書の規定を削除線で削除した行為の解釈を巡って争われた事案
原告:ソフトウエア製造販売会社
被告:ソフトウエア製造販売会社
■結論
請求棄却
■争点
1 回収約束の有無
■判決内容
<経緯>
H17.07 原告が「ウイルスセキュリティZERO」を発売
H18.05.15 原告が「ウイルスセキュリティZERO、ゼロ」で商標出願
H19.02.28 拒絶査定
H19.03.02 被告が「ウイルスキラーZERO(ゼロ)」を発売
H19.03.23 被告保有はがき作成ソフト「筆王」の著作権及び商標権を
原告に売却
H19.03.28 原告が不服審査請求
同日 原告被告代取が会食したうえで本件誓約書を作成
「ウイルスセキュリティZERO」
開発:K7 Computing Private Ltd
著作権・販売:原告
「ウイルスキラーゼロ」
開発:Rising technology Corp(中国/瑞星)
販売:被告
<争点>
1 回収約束の有無
原告被告は被告が発売しているアンチウイルスソフトの名称の一部
を使用しないことに合意し、「誓約書」(被告が差し出す形式)の
体裁で文書を作成していました。
(合意内容)
・被告アンチウイルスソフトについて、ローマ字表記「ZERO」をしない
・「ZERO」を使用した被告商品の回収指示期限を「4月末日」とする
なお、回収義務を定める規定に2本の斜め線で大きな×が付されていて、
2本の斜め線上には、被告代表取締役の署名がありました。
原告は、「ZERO」標章の使用の取り止め(新たな出荷の中止)だけで
なく、「ZERO」が付された製品の回収についても合意が成立していると
主張しました。
この点、原告は、2本の斜め線の上に被告が署名をしたのをとらえて、
『いったん記載した2本の削除線を削除した』(4頁)としています。
しかし、裁判所は、
『ビジネス上の合意の解釈に当たっては,そこで取り決められた事項が大きな経済的影響を有し,さらに,合意事項を明確に書面化しておくことが可能であり,また,取引の実務においても重要事項は書面で明確に規定されていることが多いものであるから,合意内容の裁判上の認定においても,書面の有無及び規定内容が重視される。
(イ) 本件では,回収義務を明示した本件誓約書(甲4)の第2項が2本の斜め線で削除されているから(前提事実(3)イ),本件誓約書からは,回収義務は定められなかったと解釈する方が自然である。
(ウ) 原告は,Aが2本の斜め線上に「A」の署名をしたことをもって,2本の削除線を削除した旨主張するが,そのように解することは到底できない。』
(6頁)
として、原告の主張を一蹴しています。
■コメント
原告の11期有価証券報告書と12期中半期報告書を見ると、
「ウイルスセキュリティZERO」に営業資源を集中させていて、
このソフトが売上はむろん取扱ソフトの平均販売単価を押し上げる
といった貢献をしたヒット商品であることがわかります。
原告は、「コモディティ化戦略」「製品ブランド管理の重視」といった
経営方針のもとで、「ZERO」ブランド保護への焦りでもあったので
しょうか、あるいは、はがき作成ソフト「筆王」を8億円で被告から
購入する側として強い立場に立つと思ったのか、話合いで商品名の
使い方に折り合いを付けようとしたのは良かったのですが、
どうしたわけか、原告の役員らは雑な文書を作ってしまいました。
判決文からは背景事情がよくわかりませんが、民事40部の市川コート
をして争点の判断部分は数行の判示(判決文全体でもわずか7ページ)
ですから、「なんだかなあ」という訴訟です。
■関連サイト
ソースネクスト IR情報 IRファイリング
ソースネクスト・スタイル・セキュリティ
ウイルスキラーゼロ
cf.ソースネクスト対日本IBM事件(ホームページビルダー11訴訟)について
平成19年12月25日付IR情報PDF
訴訟の経過に関するお知らせ