裁判所HP 知的財産裁判例集より
「人材派遣業営業秘密」事件(控訴審)
★大阪高裁平成19.12.20平成19(ネ)733損害賠償請求控訴事件PDF
大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 若林諒
裁判官 小野洋一
裁判官 冨田一彦
★原審
大阪地裁平成19年02月01日平成17(ワ)4418損害賠償請求事件PDF
■事案
会社の顧客情報を再雇用先の会社に開示したとして
営業秘密の開示行為性などが争われた事案の控訴審
原告(控訴人) :人材派遣会社
被告(被控訴人):元従業員ら
再雇用先会社
■結論
原判決一部変更
■争点
条文 不正競争防止法2条1項7号、8号、民法709条
1 本件情報の秘密管理性
2 不法行為性
■判決内容
<争点>
1 本件情報の秘密管理性
原審同様、顧客情報、派遣スタッフ情報の管理の不十分性、秘密保持
誓約書の内容の抽象性などから情報の秘密管理性が否定されています。
(30頁以下)
2 不法行為性
シフト配置漏れ、スタッフの一斉退職などによってシフト配置が混乱し、
原告において派遣先との人材派遣契約打ち切りという損害が生じた
として被告側の不法行為責任を控訴審では一転して認めています。
(34頁以下)
退職した従業員3名については、
『被控訴人ら4名が派遣会社の変更を実現したことについては,自ら故意又は重過失により作り出した平成16年12月のシフト漏れ,一斉に退職したことによる平成17年1月のシフト配置の混乱に乗じたものであり,信義則に反する態様であって,その際,被控訴人ら4名が本件情報から適宜の態様で顧客情報,スタッフ情報の少なくとも一部を得,これを利用して派遣スタッフの勧誘を行い,派遣先に関する営業活動を行ったということができ,これにより,控訴人に登録する派遣スタッフの被控訴人会社への登録がなければ取得し得なかった派遣先を被控訴人会社のものとし得たのであり,控訴人はこれに伴い,同派遣先を失うという損害が生じたということができ,被控訴人3名につき不法行為が成立する。』
転職先会社の責任については、
『そして,被控訴人会社は,平成16年12月1日付けで従前なかった人材派遣部門を設置したところ,同部門に所属する営業社員は被控訴人C,同E及びFのみで,平成17年1月1日,被控訴人Dがこれに加わったのみであり,被控訴人会社は,同人ら4名の認識,決定をそのまま受容し,これをそのまま同社の認識,決定としたものと評価し得るのであって,同人らと共同して上記不法行為に及んだということができる。』
(42頁以下)
と判断しています。
そのうえで、損害回復までの期間を3ヶ月と見越して217万円余り
の逸失利益と弁護士費用50万円を損害額として認定しています。
(43頁以下)
■コメント
原審同様、顧客情報の秘密管理性が否定され不正競争防止法上の
不正競争行為性は否定されています。ざっと見ても情報管理の
「不十分」「不徹底」「杜撰」という趣旨の判断が目につきます。
もっとも、一般不法行為については一転、被告らの営業活動など
一連の行為が信義則に反する態様下でのものであるとして
その責任が肯定されています。
被告らの行為の不法行為性を否定した原審の判断(原審36頁以下)
と比較すると、控訴審では被告らがフォロー業務を行ったことも
重視されず、退職前後の派遣シフト配置の混乱状況が重く受け止
められた結果となっています。
■過去のブログ記事
2007年02月12日記事
「人材派遣業営業秘密」事件
「人材派遣業営業秘密」事件(控訴審)
★大阪高裁平成19.12.20平成19(ネ)733損害賠償請求控訴事件PDF
大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 若林諒
裁判官 小野洋一
裁判官 冨田一彦
★原審
大阪地裁平成19年02月01日平成17(ワ)4418損害賠償請求事件PDF
■事案
会社の顧客情報を再雇用先の会社に開示したとして
営業秘密の開示行為性などが争われた事案の控訴審
原告(控訴人) :人材派遣会社
被告(被控訴人):元従業員ら
再雇用先会社
■結論
原判決一部変更
■争点
条文 不正競争防止法2条1項7号、8号、民法709条
1 本件情報の秘密管理性
2 不法行為性
■判決内容
<争点>
1 本件情報の秘密管理性
原審同様、顧客情報、派遣スタッフ情報の管理の不十分性、秘密保持
誓約書の内容の抽象性などから情報の秘密管理性が否定されています。
(30頁以下)
2 不法行為性
シフト配置漏れ、スタッフの一斉退職などによってシフト配置が混乱し、
原告において派遣先との人材派遣契約打ち切りという損害が生じた
として被告側の不法行為責任を控訴審では一転して認めています。
(34頁以下)
退職した従業員3名については、
『被控訴人ら4名が派遣会社の変更を実現したことについては,自ら故意又は重過失により作り出した平成16年12月のシフト漏れ,一斉に退職したことによる平成17年1月のシフト配置の混乱に乗じたものであり,信義則に反する態様であって,その際,被控訴人ら4名が本件情報から適宜の態様で顧客情報,スタッフ情報の少なくとも一部を得,これを利用して派遣スタッフの勧誘を行い,派遣先に関する営業活動を行ったということができ,これにより,控訴人に登録する派遣スタッフの被控訴人会社への登録がなければ取得し得なかった派遣先を被控訴人会社のものとし得たのであり,控訴人はこれに伴い,同派遣先を失うという損害が生じたということができ,被控訴人3名につき不法行為が成立する。』
転職先会社の責任については、
『そして,被控訴人会社は,平成16年12月1日付けで従前なかった人材派遣部門を設置したところ,同部門に所属する営業社員は被控訴人C,同E及びFのみで,平成17年1月1日,被控訴人Dがこれに加わったのみであり,被控訴人会社は,同人ら4名の認識,決定をそのまま受容し,これをそのまま同社の認識,決定としたものと評価し得るのであって,同人らと共同して上記不法行為に及んだということができる。』
(42頁以下)
と判断しています。
そのうえで、損害回復までの期間を3ヶ月と見越して217万円余り
の逸失利益と弁護士費用50万円を損害額として認定しています。
(43頁以下)
■コメント
原審同様、顧客情報の秘密管理性が否定され不正競争防止法上の
不正競争行為性は否定されています。ざっと見ても情報管理の
「不十分」「不徹底」「杜撰」という趣旨の判断が目につきます。
もっとも、一般不法行為については一転、被告らの営業活動など
一連の行為が信義則に反する態様下でのものであるとして
その責任が肯定されています。
被告らの行為の不法行為性を否定した原審の判断(原審36頁以下)
と比較すると、控訴審では被告らがフォロー業務を行ったことも
重視されず、退職前後の派遣シフト配置の混乱状況が重く受け止
められた結果となっています。
■過去のブログ記事
2007年02月12日記事
「人材派遣業営業秘密」事件